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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《下》
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サブジェクト 0

 俺ことソラ・ウルベクトと師匠であるアックス・ガーランドが武術大会に参加し激闘を制して優勝した一連の武勇伝にもならない戦いは、最後に無と呼ばれる恐ろしい存在の介入によって滅茶苦茶にされてしまった。

 まさかジャック・アールグレイと共闘する羽目になるとは思わなかったが、それでも結果から見れば死者を出すことなく大会を終えることができ、その上クレイシス財団からレインちゃんを取り戻す事が出来たのは結果オーライだ。

 しかし、その一方で聖女アンヌとこの研究都市にまつわる問題が今だ手つかずである事を想えば、俺は少しばかり頭が痛くなる思いで、翌日から控えているスポーツ大会中に俺が直接動く必要があるだろう。

 ギルフォードやケビンがどう動くつもりなのかは分からないが、明日になれば話し合う機会を得る必要があるが、今だけはそのことを忘れて夜をジュリと共に過ごしたい。

 鬱陶しかった父さんは母さんとの夜デートをするという事で一気に機嫌を取り戻し、俺と奈美はその隙にそれぞれのパートナーと共に夜の研究都市へと繰り出す。

 因みにレクターは竜達と父さんと師匠からもらったお金でバイキング形式のお店で食べてくると言っていたので、呼び出しを受けないためにスマフォからの連絡を斬っていく。


 問題が起きた時きっと師匠が受けてくれるだろうと思い素早く冬服の制服に着替え、俺とジュリは武術大会が終わったばかりの研究都市の夜へとくりだそうと準備をしている最中、俺は不意にスマフォを落としてしまった。

 ホテルの床はカーペットが敷かれているので壊れずに済んだが、ポケットの中に入れていくときは少し気を付けておいた方が良いかもしれない。

 なんて思っていると俺は小さなテーブルの上に置かれているリボンで包装されているプレゼントに目が付いた。

 師匠から渡された優勝記念に予め買っておいた物、俺はリボンをほどき中を確認すると、中から高級そうな外装が出てくる。


「これ……結構高いんじゃ」


 真面目に引きながら俺はこれが高級アクセサリーとかだったらどうしようと考えて開けることを躊躇う。

 何せ俺は着飾るという事が非常に苦手で、普段からアクセサリー事態を装着しない。

 だからと言って人が贈ってもらった贈り物を売り飛ばすなんて事は出来ないし、と考えて小箱を開けると中には軍が使うタイプの頑丈そうな腕時計が出てきた。

 それでも高そうなデザインをしているが、こういうアイテムなら俺でも使いこなせると思いそのまま腕につけてしまう。


「頑丈そうだし……戦闘の際にも使いこなせそうだな」


 そうしているとスマフォ画面にジュリの名前が映され、電話に出るとジュリの綺麗な声が聞えてきた。

 スマフォを片耳に持ちながら俺は財布をポケットの中に入れながらホテルの部屋を出ていく、廊下を歩いていると清掃員と一瞬すれ違う。

 清掃服なのはともかく顔がマスクとサングラスで隠しているのがどうしても気になってしまったが、ただの清掃員だろうと思って俺は気にしないことにした。

 エレベーターの下行のボタンを押し、俺は下行きエレベーターを待っていると俺は腕時計で時間を確認してエレベーターに乗って下の階に降りていく。

 ホテルのロビーを通り過ぎ、ホテルから出ていくと大通りは多くの人で賑わいを見せており、冬が近づいているせいか多少寒く感じた。


「何か別に着込むんだったかな……まあこれ以上寒くなる事無いだろ……多分」


 俺は思考を切り替えて街中に繰り出していく。

 パレードに出店なども大会中に比べるとかなりの数が出店しており、見るだけでもかなり楽しく、中には西暦世界では中々見ない様な出店も存在する。

 逆に金魚すくいのような出店は存在しないのか、全く見受けられない。


「こういう時は奈美があちらこちらを見て回って俺が苦労していたっけ? 今頃海が苦労しているんだろうな」


 なんて呟きながらジュリとの待ち合わせ場所まで歩いていると、反対側に奈美に振り回されている海の姿を見た。

 奈美はどこから持ってきたのか浴衣姿で両手に食べ物を持ち、頭にはお面を被っているという夏祭りにでも見かける姿をしている。

 あの歳でまるで成長しない奴だな。


 俺が目的の場所までたどり着いたころ、ジュリは第一会場広場の時計下で黄昏ていた。


「待たせた。着換えたに手間取ってな。師匠から頼まれていた仕事は済んだのか?」


 ジュリは何か頼まれごとをしていたそうで、俺が着替えてくると言っていた時師匠と共に連れていかれた。

 ジュリは薄茶色の髪をなびかせ、俺と同じ士官学院の制服を着ている姿ごと俺の方を向く。


「うん。と言っても大したことはしていないけど。それでねサブジェクト・レクイエムについて少し分かったの」

「そうか……食事をしながら聞かせてくれ」


 俺達は予約しておいた高級レストランへと急ぎ、自分の席に座ってジュリと共に適当な料理に手を出しながら一息ついたところで俺はジュリと師匠たちで調べた『サブジェクト・レクイエムについて』という話を聞くことにした。


「要するにね。このサブジェクト・レクイエムていうのはやっぱり計画名だったことが発覚したの。それが十年前にこの街で実際に起こっていた研究。でもね。この研究なんだけど、どうも戦闘を使った研究だったらしくて」

「戦闘を使った研究ってなんだ?」

「分かんない。非情な戦闘だったみたいだね。それもあってかガーランドさんの表情はあまり良くなかったよ。あの戦闘痕もその為なんじゃないかって」

「殺し合いをする戦闘か……それに聖女アンヌが関わっていると?」

「うん。聖女アンヌの力なんだけど……竜の力に似ているってエアロードが言っていたから多分癒竜の欠片を使ったんだと思うって」


 そんな事を言われたような気がするが、俺はよく真面目に聞いていなかった。


「そもそも癒竜ってどんな竜?」

「えっと………癒しの力持った竜なんだけど。でも興奮したり怒ったりすると途端に逆の力を使うんだって」


 逆というと想像してみるが、癒しの逆何て破壊ぐらいしか思い出せない。


「その通りなの……全てを破壊する破壊の化身に変わるんだって。それでね……禍根の聖女の名前。おかしいと思わない? どうして災いのような意味のある禍根と救う人っていう意味のある聖女が一緒の名前に組まれているのか。それも……癒竜の力の欠片を持っていると想像すれば」

「そうか……興奮したり怒ったりしていると次第に破壊の化身の力を振るう。でも、破壊の化身である間の記憶は無いらしいの。だから本人にもどうして自分が『禍根の聖女』と呼ばれているのかわかないと思うの」

「その辺も聞いてみるしか無いな。直接本人に。でも……人間が竜の力を持つってそんな事出来るのか?」


 俺の場合はそういう異能だし、竜から与えられる魔導と呼ばれる力は竜の力の一部を再現することが出来るし、竜と契約すれば竜の力を振るう事ができる。

 しかし、この場合癒竜は既に存在しない竜だったはず。


「竜が完全に亡くなった場合、契約はどうなるんだ?」

「えっと………消えるはずだよ。でも……癒竜は遥か昔に死んでいるからそれは無いよ。可能性があるとしたらまだ知らない竜か……竜結晶を体に取り込んだか」

「待て待て! 竜結晶を体内に取り込むって魔物になるんじゃ」


 魔物……竜結晶が放つ粒子の環境下で生きてきた生き物はその性質変貌してしまい、魔物と呼ばれている生き物に変化してしまう。

 

「人が魔物に変わるとそのまま姿になるわけじゃない。そうだろ? 俺達はそれを知っているだろ?」

「うん………でも」


 それ以外に想像も出来なかった。


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