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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《上》
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最後のチャンスを自分に 8

 ガーランドは大通りを挟んでソラとは反対側に降り、目の前には目つきの悪い派手な茶髪をしているアメリカ陸軍の服を着た男がいた。

 ケビンが告げていた特徴と一致すると考え、目の前にいる男こそが手段を選ばない男という事になるのだろうが、この男はガーランドに対して殺気を放っている。

 何か意識することがあるのか、それとも単純に脅威だからこそ殺気を放っているのかがよく分からなかった。

 両手にはアメリカ軍がよく使うタイプのハンドガンを装備しているが、左手の方は少しばかりデザインが違い薄っぺらいデザインをしている。


 建物を挟んだ向こう側ではガーランドを狙ってライフルを構えている人間がおり、先ほどガーランドが見た限りではゴーグルを装備した男性だったと記憶していた。

 目の前にいる男が何故自分を対戦相手に選んだのかがまるで理解できないが、少なくとも男は間違いなく自分が狙いだとはっきりと分かった。


 ガーランドは語ろうとはしない。

 何故なら目の前にいる男の目が語ろうとはしていなかったからだ。

 大剣を真上へと振り上げてから体重移動と同時に前方方向に向かって振り下ろすのだが、大剣が遠距離斬撃攻撃として男へと向かって突っ込んでいく。

 男は自分の足元に左手に装備した平べったい銃を打ち付けると、キインという変わった音がガーランドの耳もとへと届き、男は上空へと浮かび上がって行った。

 ある一定の距離まで上昇するといったん上昇が止みガーランドに左手の銃を向けて引き金を引く、すると電撃を纏った銃弾がガーランドに向かって襲い掛かってくる。

 ガーランドはバックステップで回避しようとするが、大通りに出ればライフル弾が襲い掛かってくると思い出し横に大きく移動する。

 浮かんでいる男は左手の銃で今度は左隣の建物の壁に移動し、右手の銃の銃口をガーランドの移動上へと向けて引き金を引く。


 今度は銃の先端から冷気が生み出され、魔方陣のように幾何学模様が浮かんだ円形の陣が有られると大気中の空気を凍らせた氷の弾丸がガーランド目掛けて襲い掛かってくる。

 大剣を振り回して氷の弾丸を全て叩き落とすのだが、その隙にとガーランドを左右に挟んでいる建物壁に弾丸を打ち付ける。

 すると、銃弾が当たった所から電流のような攻撃がガーランド目掛けて繰り出され、あっという間にガーランドの周囲に雷撃が彼を囲む。


「重撃……飛永舞脚!」


 四方八方からやってくる攻撃を全て移動だけで回避し、一気に男へと近づいていく。

 男は流石に焦ったが、素早く思考を切り替え左の銃で高めの塔の外壁へと飛ぶ。

 ガーランドもそのまま建物の屋根伝って塔の方へと移動するが、その渦中ライフル弾がガーランドを捕らえた。

 心臓と頭を狙って攻撃がやってくるのだが、ガーランドはそんなものはまるで気にも留めない移動で完全無視。


「無視するか? 良いだろう。バラッガ! 銃弾をレールガンに切り替えることを許可する!」

「しかし! ノックス! あれは……!」

「構わん! この男にアメリカの意地を見せてやれ!」


 バラッガと呼ばれた男はノックスと呼ばれた男に言われるがまま、スナイパーライフルのカードリッジを大型の物へと変更する。

 バラッガが使っているスナイパーライフルは最近アメリカ陸軍が企業に言って作らせた新型の対物ライフル【メメントモリ】で、超小型レールガンを内蔵し、銃弾一体型の特殊カードリッジを装填する事でレールガンを使う事が出来る。

 対物ライフルはその反動の恐ろしさが脅威だったが、それを魔導機を一体化させることで克服した新型対物ライフル。


 バラッガは狙撃の名手と言われており、勲章が与えられたことがあるほどの狙撃に絶対の自信を持つが、それでもレールガン搭載型の対物ライフル何て扱ったことがない。


 自信がないという気持ちを打ち消したバラッガ、引き金に乗せる指には無駄な力は籠っておらず、息を吐き出し全身の皮膚が周囲の風を感じ取る。

 スコープレンズを風の動きに合わせてコントロールするが、レールガンの速度がイマイチ理解できなかったバラッガは一発目の弾丸を外してしまった。


 ガーランドの遥か全貌の建物外壁をぶち壊し、十階建てのレンガ造りの建物を上半分を吹っ飛ばす威力に流石のガーランドでも顔が青ざめてしまう。

 対物ライフルという名前自体ガーランドは最近になって聞き、その威力を言葉で聞いたつもりだがこれは想定外だった。


 皇光歴の世界はあまり遠距離武器が発展しておらず、魔動機との相性もあり近距離武器ばかりが発展してきた。

 ここ数十年発展したが基本は大型ばかり。

 ここまで人個人が扱える対物ライフルは皇光歴の世界では初めてだった。


「あの威力はマズイ………反射したいところだが早すぎてタイミングを合わせられる気がせんな」


 ノックスは右のハンドガンで電撃弾をガーランドの射線上へと向けて合計五発撃ち出し、ガーランドは対物ライフルの攻撃に神経を削ぎながら頭の中で悩んでいた。

 どっちを先に討つべきなのかという問題で、ソラの状態を考えれば出来ることなら火星に入りたい。


 目の前にいるこのチームを無視すればこの大会の優勝はありえない。


 思考を巡らせている間に、ある動きが起きたことにまだ誰も気が付かなかった。


 ここで決断しないとガーランドは少しばかり焦るが、そんな時だった。ソラの戦場で水が降り始めたのを誰もが確認していた。


「ソラ………お前は勝とうとしているんだな」


 ガーランドはバラッガに背を向けるぐらいならノックスという男に背を向けた方が良いと思い、バラッガの方へと顔を向ける。

 ライフルの銃口がガーランドを捉えており、ノックスはそんなガーランドに容赦なく引き金を引くが、ガーランドは電撃弾の攻撃を決して回避しようとはしない。

 バラッガはガーランドの体を吹き飛ばすような攻撃を叩き込むつもりで引き金を引こうとする。

 メメントモリから射出される弾丸は一瞬という速度で近づいていき、ガーランドはその弾丸を驚異的な動体視力と神がかった反射神経でスレスレで回避するが。

 当たっていないはずなのに近くを通過しただけでHPケージが二割も削ってしまうが、ノックスの電撃弾を大剣で受け止める。


「竜撃雷の型避雷針」


 大剣に纏められた電撃を今度は斬撃という形に変えてバラッガへと放出する。

 スコープ越しに見えてきた斬撃にバラッガは咄嗟に逃げてしまうがHPが四割も吹っ飛ばされるが、対物ライフル程度で終ったと思ったのはある意味ラッキーだったとバラッガは思ってその場から離脱する。


 ガーランドは一旦バラッガを無視してノックスの方へと向き、再び走り出すがノックスは銃を捨て胸からナイフを取り出す。

 ナイフは見えない刃が伸びて襲い来るガーランドに向かって降りかかるが、ガーランドはそれを横への移動で回避し、見えない刃は建物の屋根を切り裂く。

 ガーランドは横移動をしながらも大剣を横なぎに振るが、それをノックスは体中に電流を流して高速でしゃがむ形で回避。


「その技………やはりケビンが使っていた魔導機か」

「銃撃のアックス……君の実力を知りたいな。あんな弱い人間に構う暇があるのなら君はもっと非情になるべきだ」

「お前と私とでは価値基準が違う。私にとっては軍人とは人助けをする事が第一に過ぎない。だから私はソラを弟子に取った………それに」


 ガーランドは至近距離でノックスを睨みつけ、久しぶりに怒りを表面化させる。


「あの子は弱くない。あの子への侮辱は私への侮辱だ。ソラは………私の誇りだ」


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