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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《上》
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宣戦布告 4

 夜の九時前になって大会選手の中でも本選出場者にルール変更と本選時のステージが伝えられ、同時に各選手は自分のチームの開始位置が教えられた。

 ルールの変更は大会開始中に外部との連絡の一切を禁止し、バレたり指摘されたりした場合は強制的にアウト。

 それと細かいルールが変更されたが、師匠がこれだけは気を付けておけと言われたルール変更は、『大会中に大会規定に準じていない武器や打撃攻撃を禁止する』であって、これは俺達はどんな状況でも直接殴る事が出来ないという意味である。

 予選中何度か俺が仕掛けたことでもあるが、あれが大会中では禁止されるという事だ。

 厄介だとは思うが仕方がない。


 大会ステージは今までの複合型であり、詳細を語れば北は山脈で出来上がっており、南中央は大きな都市部が、そこから東には田園地帯が広がり、西には遊園地痕のような場所が見えているが、東南は海岸地帯が広がっているのに対し、それが中央に行くと森が広が理始め、西に行くと乾いた大地が広がっているのが見えた。

 俺達の開始場所は東の田園地帯の更に端、ステージの東端であり北に行けば山脈が南の方に行けば海岸線が控えている。

 いいのか悪いのかが俺にはどうも分かり難いが、都市部に行けば俺や師匠にとってはかなり楽になるのではと考えたが、師匠曰く当分は北の山脈が舞台になる可能性が高い。

 なので先に北の山脈へと向かって北中央から都市部に入る手順で行きたいと言われた。


 作戦会議が終了したのが夜の十一時だったが、そこから寝付こうと思ったが中々出来ないでいた。

 結局ベットの上で眠くなるのを待っていると部屋のドアの向こう側から人の気配を感じ取ってしまい、そっと体を起こしながら地面に足をつける。

 気配を探るようにじっと意識を向けると向こう側にいる人間が誰なのかよく分かった。

 こんな時間帯にウロウロしているのはてっきりレクター辺りなのかと思ったが、レクターがドア越しに気配がバレバレであるはずがない。

 もう一人なら奈美になるが、奈美は基本早寝早起きをモットーにしているのでこの時間にはもう寝ているはずだ。

 そう思って俺はドアの向こう側でウロウロしているのか、こんな時間帯に尋ねることに躊躇いがあるのか向こう側にいるはずの人間を室内に招き入れる為ドアに手を伸ばす。

 相手もドアに手を伸ばしたのだろうが、俺の方が先に手を伸ばし部屋のドアを開くと、ドアの向こう側にいる彼女事ジュリが俺の方へと身体を預ける。


「こんな時間帯でウロウロしていたら風邪を引いてしまうぞ」

「ご、御免ね。どうしても寝付けないから……その…」


 何かを伝えたいとモゾモゾしているが、俺には彼女が何を言いたいのかがよく分かってしまう。

 今日ぐらいならいいだろうと思い俺はジュリに語り掛けた。


「今日は一緒に寝るか?」


 勿論彼女との間は十分に空けるつもりだし、お互いに手を出さないように心掛けるつもりだが、それでもお互いに照れくささがあったのはジュリが寝付くのには少し時間が掛かってしまった。

 俺はやはり寝付くことが出来ず、少しだけ窓ガラスから夜空を眺めながらジュリを優しく撫でる。

 綺麗な薄茶色の髪、ピンク色のパジャマとその胸の谷間が見えて少々困る格好……というか異様にエロく感じるのに、服装とかに問題が無いのが困りものだ。


 彼女が何故俺の元までやって来たのかは少しだけ分かる話で、彼女は今回の大会の水面下で起きている事件に不安を抱いているのだろう。

 この大会中に俺が何度も感じた探られているような感覚、ジュリは全く理解できていないはずだが、それでもエアロート達竜ですらはっきりと理解しているのだから間違いなく何か裏がある。

 ジュリは俺の事を心配してくれているのだろうし、だからこそ俺の側に少しでも居たいと感じてくれた。


 素直に嬉しく思う。

 ジュリにとって他の誰よりも俺が一番大事に思ってくれているという事なのだから。


 この大会には間違いなく裏があり、その裏にババリューは確実に勘づいている。

 何が真実で何が嘘なのか、この大会を無事に終えたいという気持ち自体は決して嘘だとは思えないから、大会そのものが目的ではなくその先に目的があるのだろう。

 あくまでも大会は目的への道筋に存在しているものにすぎないのだろうと確信した。


 この街の研究者たちが何を狙っているのか、そしてそこにジャック・アールグレイは関わっているのかがどうしても気になってしまった。

 次第に眠くなっていく自分の意識に素直になりながら俺はゆっくりと眠りにつく。



 ソラが夕食を食べている最中の事、各国の重鎮が揃って参加している会食の場にケビンは少しだけ不機嫌そうに参加していた。

 大統領は綺麗な整ったスーツを着て会食会場へと足を延ばしているのだが、その隣にいる綺麗な黄緑色のドレスを着ている綺麗なヘアーアクセサリーを身につけている。

 とくに白銀の髪をなびかせる瞬間に部屋の明かりが反射して余計に綺麗に見せる。

 それが余計に周囲が彼女へと興味を抱かせるきっかけになっていた。


 ケビンはこういう会食があまり好きではなかった。


 元々エージェントとして訓練を受け、一般兵と同じ用に訓練に参加してきたケビンにはこういう敷居が高い場所は好きではない。

 というより下手に肩ひじを張りながら営業スマイルを浮かべ、心にもない事を平気で口にする。

 それが好きになれない要因になっているが、何よりこの綺麗な顔立ちと白銀の髪が余計に彼女の美人ぶりに拍車をかけている。

 しかも下手に化粧をしなくても綺麗なので余計にケビンを見る目が多い。

 何より嫌だったのは今回の大会参加に際して、アドバイザーとして参加しているある企業の社長というべき男、『ジャック・アールグレイ』がどうしても好きにはなれない。


 歯が浮くようなセリフを吐き散らしながら、それを嘘の笑顔のコーティングで受け答えしている姿は彼の内面の一部を知っている身からすれば最も嫌う面だった。


 しかし、大統領は最低限の形で彼を信頼しており、彼が当選した背景には間違いなく彼の尽力があった。

 それも、全てはアメリカ国内に会社を設立させることが目的だったはずだ。


 ケビンが会食会場に足を踏み出すと、隣の部屋ではちょっとしたダンス会場が用意されていたが、彼女は内心「いつの時代ですか?」とツッコミたい気持ちを必死で押さえた。

 近くにいたイギリスの大臣や魔導大国に本社を置く会社の社長などから話しかけられ、それを何とかやり過ごし、少し落ち着いた段階で彼女は窓際まで避難していた。


「どうして私が…」


 明日の本選が控えている身でありながらも、こんなに肩ひじ張るような事をする羽目になるとは思わなかったケビン。

 正直に言えば今日はもう休みたいとすら思っていたが、明日は午後からの開始になるという事で多少時間にゆとりができた所に狙いすましたかのような会食の話。


「お嬢さんは踊られないので?」


 ジャック・アールグレイが営業スマイル全開で語り掛けてくることをケビンは嫌そうな表情で鼻を鳴らして黙った返答を返す。


「よろしければご一緒に」

「あなたと踊りたくないです」


 踊りたくないという意見を述べるが、周囲は二人が何を話しているのかが分からないのかコソコソと話し込んでいる。


「私と君がお似合いだと思われているのかな?」

「死んでも御免です」

「世間体があるとは思わないかね? 大統領が認める兵士にして、あの光竜が認めた契約者である君と、闇竜が見つけた契約者である私。きっとみんなはこう思う。あの二人……付き合っているのかしら? とな」


 ケビンは顔を真っ赤にしながらジャック・アールグレイの右頬を張り飛ばそうと思ったが、あと少しの所で左腕を少し強めに掴まれ、そのまま少し持ち上げられる形になってしまう。

 結果眼前にジャック・アールグレイの姿が嫌でも見えてしまう。


「あなたと踊って少しでも周囲の人達の期待に答えろと? それであなたはどう特をするんですか?」

「さてな……どうですご一緒に」


 ケビンは内心「この状況でまだ」と感じてしまった。

 何が真実の言葉で何が嘘の言葉なのかそれを感じさせないジャック・アールグレイの手法に乱され続けるケビンだった。


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