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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《上》
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師弟への挑戦状 2

 ガーランドは目を丸くさせており、その後ろではサクトやソラの母親が楽しそうに笑っていて、アベルは更に楽しくなさそうにお酒をがぶ飲みしている。

 サクトさんは近くにポットからお湯をコップにいれながら微笑み、コップに入れたお湯に紅茶葉を入れる。


「良いんじゃない? これがあの子の答えでしょ? アックス・ガーランドの弟子として戦うというという。ていうか、バルグスの話やジャルの話……私知らなかったわよ」


 ガーランドは俯きながらまるで罪を白状するように語り始めた。


「もう何年も前の話だったか、向こうの大陸で希少な鉱石が発見されたという話を聞き、それが軍事転用可能の鉱石だと軍上層部は判断していた。その際に共和国が鉱石独占を狙って動いていると聞き、私が送り込まれることになった」


 あの時のガーランドは潜入調査という手前、こっそりと向こうの大陸に乗り込んだ。


「それでどういう因縁だったのかしら?」

「あのジャルという男は知らん。しかし、私が侵入した時にはもう鉱山が爆発した後だった。その前後に怪しい物流の流れを発見した。その先に居たのがバルグスだった。手に入れた大量の鉱石を共和国に密輸しようとしていた所を私は発見し、その場で交戦状態になった。あれは強い男だった」


 見えないのにまるで見えているかのようにふるまい、身体の感覚が研ぎ澄まされているかのように鋭く、鋭利な刃物を思わせるようなその戦いぶりを思い出した。


「場所は埠頭だったか? 複数のコンテナが邪魔をしていてな。素早い動きで翻弄されるわ。銃機能とトンファー機能を上手く活用してきて厄介だった。しかし、それでも私には勝てなかったがな。最後は全身血だらけの状態で海に身投げした。てっきり死んだものだと思っていたが」

「生きていた。共和国所属だったのなら呪術の使用はあったはずよね?」

「ああ、それも相まって強かった。恐らく今でも後遺症があるだろうに……」


 サクトとガーランドの会話を傍から聞いていた海は『呪術』という言葉に反応していた。


 負の一面は特に呪術を使った者の心を後ろに引っ張ろうとする。

 使ったことのある海にはよく分かる話だった。

 呪術は心の隙間や負い目、怒りや悲しみに入り込んで利用する。


「海君?」

「大丈夫。もう……」


 海の暗い表情にいち早く反応した奈美、海は笑顔で奈美を心配させまいと返す。


「一度克服すれば大丈夫だが、ああいう呪術は長年使用していると後遺症が現れる。あいつが共和国の兵士だったなら間違いなく長年の服用で感情が負の一面に引っ張られるだろう。さて………ソラはどう戦うのかな?」



 ぱっと見はトンファーに見えるだが、それにしてはやけに大きなトンファー。

 周囲は見通しが良すぎると言ってもいいほどに何もなく、ぱっと見は体育館の倍はありそうな広さがあり、そのど真ん中を抑えられているのは事実。

 トンファーの先を俺の方へと向け、その先に穴が開いていると認識したところでその穴が赤く光ったように思えた瞬間には俺はしゃがみ込んでいた。


 俺の後方で大きな爆発音が響き渡り、咄嗟に振り返るとそこには大きなクレーターが出来ていた。


「爆破弾と言ってな。外の大陸では集団戦において真価を発揮しると言われている武器だ。私は長年向こうの大陸で過ごしてきたからね。こういう武器が得意なんだよ」


 俺は走り出しバルグスは俺の目掛けて爆発弾を容赦なく打ち込んでくるが、俺はそれは確実に回避しながら回り込む形で近づいていく。

 爆発が厄介だ。

 そこそこの距離を攻撃でき、その余波を少しでも喰らえばかなりのケージを消耗するのは確実。

 しかし、あれだけの攻撃範囲なら近づけば使えないだろう。


「ほう……範囲内に入れば爆発弾を使えないと判断したのだろうが……弾がこれだけだとどうして決めつける。弾丸変更」


 バルグスは手元でトンファーを弄り始め、出てくる弾丸が爆発から雷撃に変化した。

 驚きのあまり足が止まりそうになる。

 複数の種類の弾丸を内蔵しているトンファーとか、それはもはやトンファーでは無いだろう。


「これも回避するのかね? 面白い」

「竜撃風の型風見鶏!」


 風の斬撃を横なぎに飛ばし、バルグスはそれを体勢を低く無駄なく回避すると、一気に俺の方へと近づいてくる。

 早いと認識した瞬間には距離がゼロ距離まで縮んでおり、俺はトンファーからくる攻撃を緑星剣で受け止めた。

 迫りくる衝撃だけでケージが減ってしまいそうだ。


「私のガントンファーはこんなものじゃないぞ」


 トンファーが発光したその時、俺は急いでその場から逃げ出すための行動へと変更していた。



 ソラを包み込むほどの発光現象はガーランドでも知らない攻撃手段だった。

 ソラのゲージが数ドットほど減少したが、どうやら直撃は免れたようだなとガーランド達は一旦落ち着く。


「あれ何? あんな攻撃できる武器なの?」

「前の時よりトンファーが大型になっているな。どうやら内蔵武器が変更されているみたいだ。少なくとも殺気の熱エネルギーの衝撃波や雷撃弾は存在しなかった」


 ガーランドと戦ったのちに自ら改良したのか、誰かに頼んだのだろうとガーランドは推測した。


「熱エネルギーってあなたが潰した鉱石?」


 サクトから問いかけにガーランドは「恐らくな」とだけしか答えられない。


「残りを持ち出していたらしい。全く抜け目のない男だ。最初の爆発弾も前の時と比べて強力になっているし、もしかしたらその辺のデータを武器に入力したのかもな。やはり組み合わせと言い、内部に顔が効くようだ」

「間違いないわね。組み合わせは意図的だし、武器は明らかに意図的に細工されているし間違いないわね」

「どのような手段だったのか。バルグスは第二次予選に進出できるはずだからな。第二次予選でも細工されたらたまらんぞ」


 ガーランドがウンザリしたような表情をしており、サクトはスマフォを取り出してどこかに電話をかけ始める。

 スクリーンに映されているソラはメインストリートまで出てきており、トラックの物陰に隠れた状態で様子をうかがっている。


「AR武器に細工を施す事は禁止事項に……?」

「入らないわ。そこまで詳細に禁止事項に組まれているわけじゃないから」


 サクトは小さく「電話に出ないわね」と呟きながらガーランドの質問に答える。


「じゃあ、間違いなく第二次予選に進出するな。この様子なら相方が勝てるように細工をすると思うが……」

「するでしょうね。で? ソラ君は大丈夫なの?」


 サクトはスクリーンほ方へと緯線を映し、ソラが隠れているトラックに光の斬撃を何度もぶつけている姿が見える。


「さっきの………焔の型だったかしら? あれを使えばいいじゃないの?」

「竜撃は環境を利用して扱う流派だ。あれは草原の草を燃やした状態で風を利用して完成しているからな。今は使用することも出来ないだろう」


 竜撃の弱点は環境に作用されやすいという点で、どんな環境でも百パーセントで戦える代わりに、使える技が絞られるという弱点がある。


「師匠が『竜撃は完成された型』だって言っていたけど。こうしてみるとそうは思えないわね」

「まだ発展途上の型だからな。しかし、完成度が高いのは事実だぞ。環境に左右されやすいが、その分あらゆる環境で戦えるのはメリットだ」

「まあね。極み………私達の代で拝めるとは思わなかったわ。初代が編み出した一撃の型が見つけた一つの到達点。まあ、見せてもらいましょうか………竜撃の…撃の極みがたどり着いた戦いというものをね…」


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