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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《上》
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悪意ある悪戯 4

 地下研究所から出てくるだけでも結構疲れてしまい、その後ガイノス政府が管理している場所まで一旦移動し、椅子にグルグル巻きにされている父さんにドン引きしつつ、書類仕事をしている師匠に一連の動作というか、事件を説明したのち、一連のメンドクサイと言ってもいいやり取りを繰り広げた。

 そして……何故だろう。

 俺はジュリ達と合流した後、大師匠と言うべき人と街中を歩き回る事になった。

 その際逃げようとするレクターを大師匠は杖一つで捕まえるのだから大した人だと感心してしまった。

 この四人で行動する事になったのが、大師匠はさらに海に会いたいといい始める。

 その後まるで千里眼のようにものの十分で奈美と海を発見した時は驚きを通り越して呆れた。


 隣でレクターが「この剥げジジイ誰?」なとど失礼な事を言うので、俺は小声で「ガーランドの師匠」とこっそち教えてやる。

 ちなみに海は面識があるらしく、あっさりと受け入れていた。

 レクターは大師匠から右耳を引っ張られており、どうやら先ほどの呟きが聞えていたらしい。


「さて……レクターお前がサクトの真の後継者じゃな。性格はアベルそのものじゃが……」


 レクターが耳を引っ張られながらも文句を言っており、俺は内心否定しきれないものを感じていた。

 いっその事父さんに指示すればいいのにと思ったが、あれで意外と知識も回る方だし、父さんの教え方では理解できなかったらしい。


「それで……海じゃな。お前がアベルの真の後継者じゃな。性格はサクトに似たらしいの。しかし……お前達は師匠を交代した方が良いんじゃないのか?」


 レクターが耳を引っ張られながらも文句を言っており、海は少し迷惑そうにしている。

 最後に俺の方へとジッと見つめており、近づいていく中俺の顔を覗き込む。


「お前がアックスが見つけ出した真の後継者か………フン。昔のアベルのような見た目をしておるが、性格はまるで昔のアックスじゃな。やれやれよりによって自分そっくりな後継者を見付けてくるとはな。今日はお前さん達に『撃』に関して教えておくことがある」


 近くのベンチに座る際も決してレクターの耳から手を離さない。


「そもそも『撃』とは不死なる者を一撃で葬る事を絶対としており、創設者は二人………『アルナ・ウルベクト』と『ジェイド』と呼ばれている男が創設者だと聞いておる」

「なんでそんな事を俺に話すんですか?」

「………ある予言師から予言を貰った。的中率で言えばかなり高いといえるじゃろうな。ソラは何れ『災い』と争う事になる。その時、お前は『撃』の持つ本当の意味と、その生い立ちを知るとな」

「そんな予言当たるんですか?」

「当たると言われておるよ。まあ、あの予言師すらも『災い』が何なのかは分からんらしいがな。それでも……もう始まっておるらしいぞ」


 もう……始まっておるという言葉に俺は何故か『ボウガン』を思い出してしまった。



 ボウガンは最も高い建物の上で寝っ転がっており、適当な鼻歌を歌いながら時間を気にしている。

 すると機械で出来たマスクに真っ白の手袋、皮の靴と真っ黒なスーツを上下の細身の男が隣に音もなく現れた。

 エレベーターも無い、階段も無い建物の屋上は突風が吹き荒れており、普通の人間なら吹っ飛ばされてしまうことだろう。

 しかし、実際はこの二人はまるで吹っ飛ばされずにおり、機械のマスクをつけた男は寝っ転がっているボウガンに話しかけた。


「ボウガン。彼女はどうした?」

「知るかよ。お前が知らないなら知らねぇよ。見届け役にそんな事を期待すんな」

「ではカールはどうした?」

「うちのボスが最近新しい愛人を造ったらご立腹でな。腹を立ててボスの所で癒してもらうんだといっていたが?」


 ボウガンはとことんどうでもいいと思ったが、これは仕事だと割り切ってしまう。


「で? メメントモリさんはちゃんと仕事内容を理解していらっしゃるんですかね?」


 ボウガンの嫌味に似た言葉にメメントモリはフンと声を発する。


「お前と一緒にするな。機械である私が忘れると思うか?」

「そういえばお前は機械でしたね………来たぞ」


 ツインテールの派手な髪色の少女、ゴスロリな衣装を身に纏っているが、本人はどことなくウンザリしているようにも見える。


「はぁ………お・ま・た・せ」

「「遅い。遅刻だぞ」」

「仕方ないでしょ………アイドル業って大変なのよ。プータローにはわかんないでしょうけどね」



 横ピースを決めながら殺気を放つ少女、彼女はボウガンを踏みつけようとするが、ボウガンはそれを寝っ転がりながらも回避する。

 少女は明らかに聞こえるような音量で舌打ちをした。


「しっかし………このアイドル『キューティクル』ちゃんを前に興奮しない奴がいるとはねぇ」

「はいはい興奮していますよ。キューティクルちゃん(笑)さんはすごいなぁ(棒)」

「棒読みで言うとキューティクルちゃん(笑)さんに失礼だろww」

「アンタ達ねぇ………」


 キューティクルちゃんと名乗る少女は額に苛立ちを記すほどの血管を浮かびあげ、ボウガンとメメントモリは笑っている。


「機械が笑顔を見せるわけぇ?」

「はは! 面白い事を言う化け物だな。人間のふりをしている化け物が人間を語るのかね?」

「喧嘩すんなよ。俺からすればお前らどっちもどっちだからな」

「「お前にだけは言われたくない」」


 同音異義語で突っこまれるとボウガンはもう一度鼻で笑うだけ。

 そんな時カールがOL風の衣装を身に纏いながら現れ、どことなく機嫌がいいと三人は判断できた。


「作戦開始=私達。作戦開始の合図=ボウガンの役目」

「何か良い事あったのか?」


 ボウガンからの問いかけにカールは「鬱陶しい女が改造された=爽快」と過去最大級の笑顔を見せる。


「ふぅん……あの目障りな人間。消えたんだぁ………」

「はは。しかし、謎だな。閣下は何故あのような人間を集める? 私達だけで十分では?」「兵士だろ? それか何かに使う生贄。そんなところだろうよ」

「それより作戦開始=ボウガンの仕事」


 ボウガンは「やれやれ」と言いながら立ち上がり、研究都市を見回し建物の先端で今にも落ちそうな所に立ち尽くす。


「これより………不死の軍団の最終計画の第二実験を開始する。メメントモリとキューティクルちゃん(笑)はちゃんと仕事をしろよ」

「貴様殺すぞ………!」


 キューティクルだけは殺意をボウガンに向けながら手提げ鞄の中から細い針を百個ほど投げつけボウガンはそれを全て背中で受け切る。


「お前はいつになったら私の事を愛くるしい声で『キューティクルちゃん』って呼んでくれるわけ?」

「………キューティクルちゃん(笑)」

「最後の(笑)を取り除け! あと馬鹿にすんな! お前達と違って人間社会に溶け込む為に訓練をしているんだぞ!」

「「「ナンデ人間社会に溶け込まなくちゃいけないんだ?」」」

「アンタ達ね……!」


 メメントモリは背中の針を抜くボウガンに近づていき片手を差し出す。


「で? 俺達は何をすればいい? 指令書を受け取っているはずだな?」

「持っていない。言葉伝えろというのがボスの意向だ」


 キューティクルはこれでもかというほどの不愉快な表情を作り出す。

 メメントモリはマスク越しで分かり難いが、カールでさえも不愉快な顔をする。


「まあ、お前達と違ってボスから頭を弄られていないからな。変な意味で信頼は受けているさ。で、指令だが。この街の水面下で起きている実験に協力、詳細を知る事だ。メメントモリは内部研究員になりすまし、キューティクルはアイドルとして潜り込めだそうだ」

「はぁ? そんなんで良い訳? このキューティクルちゃんの役割としてちょっと弱いというかぁ……どうせならこの街を吹っ飛ばせぐらいの仕事があるのかと思ったぁ!」

「キューティクルに同意したくないが、しかし地味な仕事だとは言いたいな。前回の第一実験とはまるで違うな」

「前回は少々荒っぽい作業が必要だったが、今回は既に実験の下地は出来ているからな。それにこの実験が上手くいけば十二月には大暴れ出来るぞ」


 メメントモリとキューティクルは「本当に?」と尋ねると、ボウガンは最大の悪意のある表情で「勿論だ」と答えた。

 カールだけは興味なさそうに本を読んでいる。


 ここに悪意ある者達が動き始めた。


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