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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
サブジェクト・レクイエム《上》
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悪意ある悪戯 1

 飛空艇で起きて一連の出来事を記憶の隅に追いやり、飛空艇から降りる際に重要人物が先に降りるから後回しにされたぐらいで特にトラブルが起きなかった。

 レクターは顔面を強打した一連の記憶がないらしく、何故か自分が階段近くで眠っていたとした記憶していないらしい。

 俺としてはどっちでもいい話なのでこの際面倒がない方が良いが、しかし重要人物というのは間違いなくあの聖女だろう。

 俺は重要人物ではないのでどうでもいいが、と思って飛空艇を一般人と共に降りていると降りたところで多くの記者人に囲まれるという事態が発生した。


 頭の上に『?』のマークを三つぐらい抱えながら俺は自分の置かれている事態がまるで理解できず、それ以上に何故自分に目をつけるのかが謎だった。


「ソラ君! 今回武術大会に参加するという事ですが! 誰と参加なさるのでしょうか!?」

「師弟関係も明確にしていらっしゃいませんし、噂ではお父上であるアベル・ウルベクト大将が師匠では? と噂されていますが?」


 一気に来る質問に俺が答えかねていると、奥の方から俺の名を叫ぶ一人の若い武術大会スタッフが声を掛けてくれた。

 その奥から更に複数のスタッフが現れ、俺の通り道を作ってくれる。


「せめて師弟関係に関してコメントをお願いします!」


 何か言った方が良いのだろうかと思い、立ち去る際に俺は「師匠はいますよ」とだけコメントしておいた。

 こっちの方が面倒が起きそうな気もするが、勝手な事をコメントするわけにもいかない。

 何より師匠が嫌がるかもしれないし。

 あの人昔弟子を無くして以来俺以外で弟子を造らなかった。

 それにあの人は俺が弟子だとは明言していない上、父さんは俺と師匠が訓練していると機嫌が悪くなるから明言を避けるし、サクトさんは個人的な事は絶対に言わない人だし。

 そういう状況で他言無用な感じがルール化されている。

 と言っても父さんとサクトさんは大っぴらにしているのだが、師匠はその辺は明確にしない。


「申し訳ありません! もう少し早く迎えに向かうはずなのですが……」


 俺はいいえと言いながら元来た道を振り返る。

 ジュリ達と一旦逸れてしまったし、エアロードやシャドウバイヤも向こう側なので本当に久しぶりに一人になったという感覚が生まれた。

 空港前に群がる記者陣。

 先ほど俺が言ってしまったコメントがもう既に周知の事実になっているという不思議、どうやって知識を共有したのだろう?


「開会式に間に合わなくなりますので質問はおやめください!」


 スタッフが俺を半場強引に俺を車の中へと放り込み、車の運転手が俺が乗り込んだことを確認すると一気にアクセルを踏み込んで車を発進させる。

 シートベルトを着けているわけでもなく、俺はおでこを思いっ切り前方の座席に強打した。

 小さな呻き声を揚げながらおでこを痛がり、前方の運転手が「申し訳ありません」と謝ってくるのを俺は「良いですよ」と言いながらシートベルトをしっかり閉め、車の窓から街中を眺める。

 少し寂しく感じるほどのビルしかない街並み、ゴーストタウンの方がまだましなのではと思っていたが、よく見るとスポーツ大会のスタッフが何か作業をしている姿が見えた。


「あれはスポーツ大会実行委員会の人で、四日後開催のスポーツ大会の準備と最終点検をしているんです。この辺はマラソンのコースに選ばれていますから」

「今しているんです? 少し遅すぎませんか?」

「まあ、それ以外はほとんど終わっていますから」


 まあ、武術大会自体は別会場で本格的に行われるらしいし、スポーツ大会中はこの場所も屋台やら人でごった返すのかもしれない。

 体の力一旦抜き、車の座席の柔らかさに身を任せていると車の外に大きな無数の職種に見える鉄の支柱と、その先にある大きな円盤型の建築物。


「あれが武術大会の舞台になります。舞台はAR技術を使い本物そっくりに作られる予定で、現在はリハーサルが行われています。武器も専用の物が使われ、プレイヤーはHPと言われるバーを持っており、ダメージを受ける度に減っていきます。全損した場合失格となります」

「ダメージは武器でなくては判定されないんですか?」

「いいえ。ARで出来ている物であればダメージ認定は受けますが、実際の武器の持ち込み及び仕様は禁止されています。魔導機も今回はARに機能することはハッキリしていますので安心してください。勿論竜の欠片も魔導機レベルの力であればしようが認められています」


 なら安心できるだろう。

 しかし、あの試合会場はちょっとした揺れで崩れそうに見えるのだが大丈夫なのだろうか?

 支障が暴れ回った暁には一瞬で壊れそうだけど?


「試合会場は最新の合成金属が使われています。地震でも壊れる心配はありませんよ」


 まるで心を読んだような的確な言葉に絶句する。


「武器は今日の開会式が終了次第選んだいただきます。開会式まであと少しですのでもう少々お待ちください」


 開会式の会場が道路の向こう側に見えてきた。

 ドーム状の建物がはっきりと見えてくる。


 資料では天井が開いているアリーナタイプだったように記憶しているが、ここからだとドーム型に見えなくもない。

 開会式の会場が近づいていくと多くの人がドンドン風景の中に現れていくようになる。


「この辺は商店街やショッピングモールなども多いのですよ。一週間は人が増えますので、特に新しく建設されたものも多いと聞きます」

「この辺にも研究所があるんですか?」

「いいえ。基本研究所は地下区画にも存在していて、この辺は全て実験区画になります」


 これだけの施設が全て実験区画という驚きの真実。

 そう言えば飛空艇から見たときに不思議に思ったが、この街の下に沢山の窓が見えた気がしたが、あれは研究所だったのか。


「近づいてきましたよ」


 開会式の会場前の出入り口で一旦車が停まり、俺は運転手にお礼を言って俺は会場の中へと入っていった。

 中は俺以外の参加者が数名ほど待機しているようで、俺はスタッフに案内されるままに会場の奥へと足を運んでいった。

 アリーナの中心は太陽の光を名一杯受けている人工芝、座席は観客で結構埋まっており、会場の中心近くには武術大会参加者が既に集まっている。

 ほとんどはペアで動き回っているというか、俺以外居ない様なイメージでちょっと寂しい。


「これより開会式を開始したします。選手一同は会場中央に集まってください!」


 女性アナウンサーの良く聞き取れる声で選手を集め始めるが、俺の右肩を意図的にぶつかってくる目つきの悪い男性が観客にも聞こえるような大声を上げる。


「おやおや!? ペアで動いていない選手がいますよぉ!? これは失格ではありませんかぁ!?」


 選手の中から「質が悪い」という声がハッキリと聞えてきた。

 明らかに俺の事を知った上で威嚇をしているように思えるが、少なくとも帝国人には見えないので多分大陸の外にある国出身者だろう。

 向こうの国々は結構粗暴な武人が多いと聞く。


「ご心配なく。ちゃんとペアはいますから………それよりご自分心配をしては? 予選敗退何てすればカッコ悪いでしょ?」


 俺は俺なりに挑発で返し、釣り目の男は明らかに怒りを覚えているようにも思える。


「ここに居ないなんておかしいでしょ!? 誰が貴方に相方がいると証明できるんですかぁ!?」

「ここのスタッフにはきちんと説明済みですが?その頭に入っているのは脳みそではなく紙屑ですか?」


 このままでは喧嘩になりそうな状況、男の後ろでは同じく目つきの悪い女性がからもうとしてくる。

 しかし、それを白衣を着た老人が制止した。


「これより開会式を開始する。そこに類人猿ペアは大人しく集まりなさい」

「ちょっとちょっとぉ! ペアが…」

「そこにいる選手であれば相方不在は既に聞いておるし、何よりお前さん達のような一選手が勝手に発言していい訳が無かろう。失格になりたくなければ大人しく会場に集まるがいい」


 男は俺に睨みを向けながら会場の中心に集まっていく。


 ここに武術大会が始まろうとしていた。


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