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東京決戦 2

 王島聡はスカイツリー前までたどり着き、一台の車から降りると目の前まで連れられてきた現在の内閣総理大臣事『里島 永志』を見下すような目を向ける。

 黒髪をきっちり整え、顔立ちはファンドそっくりであるが、ガッチリした体格であるファンドと比べると少し細め。

 王島聡からすれば自分の中学がおかしな方向へと向かった元凶であり、同時に当時の総理大臣を引きずり落とし成り上がった男。


 三年前この里島は当時の内閣総理大臣『直衛 敏行』を引きずり落としたくて、革新派のファンドと手を組んで引き男した事件。

 同時に、十五年前にオカルトサークルを使ってテロを引き起こした犯人。


「十五年前お前がオカルトサークルを使って事件を引き起こしたのは何故だ?」


 言い渋る里島の額にハンドガンの銃口を当て脅しつけると、下唇を強く噛み血を流しながら呟くような声を絞り出す。


「あの時、私が革新派と繋がろうとしていることを警察関係者に知られそうになった。その男がある集落出身だと分かった。そこを襲撃するのにあのオカルトサークルは非常に有効だったからだ」

「袴着空の父親だな? それだけじゃないだろう?」

「……呪詛の鐘の効果をよく知る機会にもなるし、元々上に成り上がると決めていた私からすれば当時の内閣に参入するためには良い口実が必要だった。一部地方で起こした問題に私が事後処理でうまく立ち回れば一気に内閣参入に手掛かりになる」

「だからお前は呪詛の鐘を使って内閣総理大臣のそばまで近づいたわけだ」


 里島を連れてスカイツリーの上まで登っていく中、王島聡はただひたすら無心だった。

 正直に言えばこの男に殺意のような感覚が湧いてくるわけでもなく、強いて言うならこの男が哀れだと思っただけ。

 野心が強く、それ以上に心が幼く感じる。


(目を見れば分かる。この男はこの状況でも罪悪感を抱いているし、その上で野心に心が負けているのは確かだ。愚かだな。悪い事をしたと思うならもっと地道に積み重ねればよかったのにな。まあいいさ。どのみち死ぬか、捕まるしかないんだ)


 展望室までやってきたところで里島は怯えたように尋ねる。


「な、なにが目的だ!? 私の真実を暴露するつもりか!?」

「そんな事をして何の役に立つ? お前の事なんか正直どうでもいいんだよ。十五年前の事件も、三年前の事件も僕からすればさほど重要でも無いしな。でも、袴着空にとっては違うんじゃないか? お前はここでたとえ逃げ延びれたと仮定しよう。僕が負けたらお前はどうなる?」

「ど、どうなる? お前が負けたら……!? 私は袴着とかいうガキに殺される?」

「言っておくけど。お前ごと気が策を練って助かるほど簡単な相手じゃないぞ。お前は僕に従っていればいいんだ」


 その表情はきっとどの小説や漫画に登場するラスボスより悪そうな微笑みだった。

 里島にはもう引き返す道があるわけがなく、しかし、大人しく従うには心が引き留めようとしている。

 王島聡が油断しているかもしれないという気持ちが行動にうつさせた。

 後ろから飛び掛かってハンドガンを奪おうとするが、それ以上の速度で王島聡は里島の後ろに回り込んだ。


「その程度の速度で何とかなると? どうやら少々痛みつけた方がよさそうだな」


 王島聡は里島の顔面を中心に何度も殴りつけ、止めに鳩尾にケリを叩き込む。

 里島は何度も何度も「ごめんなさい!」と謝り続け、里島を引きずりながら展望室から外へと出ていく。

 突風が里島と王島聡を襲い掛かり、里島は悲鳴を上げているが王島聡はさほど気にした様子もなく引きずって端の方まで連れていく。


「見ろ。燃えていくこの街の姿を……お前が君臨したこの街が、東京が燃えがっていく」


 放心状態の里島の耳もとに呟くような声で絞り出す。


「お前はどっちを選ぶ? このままここで僕に殺されるか、それとも僕に従うか?」

「……………何をすればいい?」



 俺がジュリと食堂車で大人しくしていると窓から太陽が昇ってこようとしている瞬間を見守っていた。

 しかし、そんな雰囲気やムードを吹っ飛ばしかねないほどの警報音が列車中に響き分かった。


「後方より軍用ヘリが近づきつつあり!」


 警報音と共に聞こえてくる声に俺とジュリは同時に立ち上がる。

 寝室車両からも士官学生などが部屋から出てくる音が聞こえてくる上、前方車両から軍人がドンドン現れていく。


「バレたのかな? エアロードやシャドウバイヤが隠していたのに……」

「隠蔽がどれだけ得意でも粘っていればそのうちバレるさ。接近されれば景色に歪みが見えてくる。恐らく列車の通行ルートは完全にバレているんだ。問題の進入路を絞れば捜索は可能だろう。東京に近づいているって分かっているんだし」

「そういう事なら東京周辺にヘリを飛ばしていたっていう事だよね?」

「その程度のレベルなら自衛隊を操作できる王島聡なら簡単にできるさ。最も使えるヘリに限りがあるだろうからな。侵入する方法を絞ったんだな」


 飛行機か列車だと絞ったんだろうけれど、この程度なら誰でも絞れそうだ。

 車は侵入するのに時間が掛かるし、一気に近づくなら飛行機か列車に絞るしかないだろうし、この場合軍用ヘリは列車捜索に当てられたという事だ。


「ソラ! 私と共に後方に行くぞ! レクターは前方に向かいアベルと合流!」


 ガーランドが食堂車に入ってくるので俺はジュリに一瞥してから後を追う。


「数は? 武装は? どの程度散開しているわけ?」

「数は後方三に前方ニだ。武装はガトリングにミサイルとシンプル。密集しないように散開しながら散っているような状況だ」

「ウルズナイトは使わないの?」

「アレは固定砲台に使用するには装甲が薄い、戦車は単純な火力不足だ。私達が直接戦った方が速い。お前は私と来い」

「行くのは良いけど。父さんとレクターを一緒に組ませて大丈夫?」

「流石に戦闘中にふざけるとは………多分思わん……多分」


 ちょっとずつ自身が無くなっていくガーランド、あの人はこの状況でもふざける事が出来るのか。

 ある意味レクターとお似合いだが。


「俺やだよあの二人がふざけた結果俺達に忙しさのお鉢が回ってくるのは」

「お前こそ大概酷いな。少しは親友を信頼したらどうだ?」

「だったら父さんを信頼できる?」

「……………いざとなったら」


 物凄い間があったような気がするが、まあいいやという気持ちで後方車両の外へと繋がる両開きのドアを俺とガーランドで開くと視界に突然軍用ヘリが現れた。

 先読みされたかという思考より、俺とガーランドが思いついたのは攻撃だった。


 俺とガーランドが思いっきり軍用ヘリに飛びつき、俺はコックピット一帯に強烈な一撃を叩き込み、ガーランドはプロペラの部分を真っ二つに切り裂く。

 ヘリは黒煙を上げながら墜落していき、俺とガーランドは列車の屋根に飛び映る。


「ねえ……数は三じゃなかった? 今確認したら後方に数五はいるよ」

「どうやら増援が集まってきているようだな。相当数がこの辺りに散っているとみるべきだ。ソラは私ととにかくこの軍用ヘリを落とす。いいな?」

「良いけど。俺遠距離攻撃手段なんて刺殺の束位しか存在しないんだけど」

「直接乗り移ってプロペラと胴体の間を斬ればいい。問題は奴らの攻撃で列車が脱線する事態だけは避けたい」

「それはそうだけど。そんな簡単に行かないでしょ? って言っている間に群がってきているし」


 やるだけやるしかない。

 俺は星屑の鎧を呼び出し全身に纏わせ、同時に鎧の形状を黒に変更し、四つの剣を召喚する。


「これで行くだけだ! 剣よ舞え!」

「私が列車を守るからお前はヘリを落としていけ! なるべく早めに決着をつけるんだ。増援がどれだけ現れるか分からん。もうじき東京に辿り着く時間だ」


 もうそう時間は残っていなかった。

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