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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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大学攻防戦 5

 白髪の七十過ぎの白衣を着た老人であるジェノバ博士、ジェノバ博士は椅子に固定されており、嘆息を漏らし自分の見張り用にと残しているビビりな男性を見つめる。

 ジェノバ博士は男性に「おい」と尋ねるのだが、男性は極度の緊張で全く耳に入っていない。ジェノバ博士は更に大きな声で「おい!」と声を張る。


「な、なんだ!?」

「喉が渇いたぞ。お前は老人をいたわる精神が無いのか?」

「が、我慢しろ!お前が必要な情報が分かったら殺すんだぞ?」

「それはそれで構わんぞ。この歳で人質になってまで長生きしたいとは思わんしな。それより今喉が渇いているんだ。さっさと水を持ってきてくれ」


 ジェノバ博士は分かっている。

 この男性に人を殺す勇気何て存在しないという事に、多少無理を言ってもこの男は日寄って必ず言う通りにするという事に。

 殺す勇気何てやってこない男性は仕方なさそうに、近くの段ボールの中からミネラルウォーターを探し出す為一旦視界から外してしまう。


 男性はミネラルウォーターを段ボールから取り出し、老人の方に持っていく過程で男の意識が急に暗闇の中に落ちていった。


「やれやれやっと救助隊がやって来たのかと思ったが、まさか可憐な女性一人とはな」

「アメリカ合衆国のエージェントのケビンと申します。もう一人ソラ・ウルベクトさんと一緒に救助に参りました」

「ソラ………ウルベクト?もしや星屑の英雄がわざわざ救助に来ておるのか?」

「はい。現在敵部隊を一点に引き付けている最中です」


 実際廊下から大きな破裂音が聞えてくる。

 ジェノバ博士は腰を叩きながらドアを勝手に開けて外に出ていく。


「待ってください!まだその辺を巡回しているかもしれませんよ!」

「儂が救助されたと分かればあ奴らとて無意味に負ってを差し向けようとは思わん。あ奴らはあくまでも雇われた傭兵にすぎん」

「はぁ………」


 ドアを開けると同時に廊下の空気が流れてくるのと同じく大きな音が聞こえてくる。


「やれやれ倉庫を吹っ飛ばすつもりで戦っておるのか?」

「フン。私達竜の力が使える人間がその辺の人間のように落ち着いて戦えるわけが無いだろう」


 エアロードの偉そうな声にジェノバ博士の眉がかすかに反応した。

 目だけをエアロードの方に向けるが、エアロードは大きなあくびをしながら興味なさそうにしている。


「噂の英雄とやらがどんな奴か見てみるか。烈火の英雄よりまともだとよいがな」


 ジェノバ博士は特に隠れる様子もなく、堂々と廊下を歩いていくのだが誰も廊下を巡回していない理由をケビンはこの後過ぎ気付く事になった。


 大きな戦闘音を響かせているど真ん中では、傷だらけの状態で膝をついているメメという女性と、対面で立ち尽くし見下すような状態で立っているソラ。


「ま、まさか……これだけ戦闘能力が高いとは思いませんでした」

「分かったろ?暗殺術をいくら極めようが、単純な戦闘能力が高くなければ俺に勝つなんて出来ない」


 ソラは緑星剣を強く握りしめ、メメに向かって剣を振り回す。

 メメは一瞬だけジェノバ博士を目視すると煙玉を床に叩きつける。


「待て!逃がすと思うか!? お前には知っていることを話してもらう」


 ソラは逃げるメメを追いかける為に煙の中へと走っていく、ジェノバ博士は「やれやれ、辛抱の足らん若者じゃな」と言いながらゆっくりと歩いていく。

 ケビンはジェノバ博士を守りながら来た道を戻っていく。


 ソラは走りながらメメを追いかけていき階段を昇って、一階に戻るとそのまま廊下を入り去って大きな空間に出た。

 空間の中にはコンテナが山のように積まれていて、その中を走る音だけが聞えてくるのだが、音が反響しているのか詳細な場所が分からなかった。

 ソラは高い所から探し出そうと壁を駆け上っていき、電灯に捕まりながら見下ろしていると一人の人影が港口の出入り口へ向かって進んで行く。


「待て!」


 ソラは一番高いコンテナの上に着地すると、コンテナの1つを魔導銃の風の弾丸の空気の破裂を利用してコンテナを対象目掛けて落としていく。

 そのままコンテナを緑星剣で切り刻み、対象の影目掛けて緑星剣を突き刺そうと勢いよく突っ込んでいくが、対象はソラの目前でその影が水面に落ちていった。


「港?そうか………ここは荷物を乗り入れさせる為の場所か。でも……彼女は水辺に?」


 そう思ったソラは水辺に意識を集中させるが、奥をいくら探してもメメは見つからなかった。

 大きな爆発と揺れが倉庫エリア全体を揺らし、その揺れや爆発音は倉庫の屋根を崩しジェノバ博士とケビンを下敷きにしようとしていた。

 ソラは跳躍し崩れ落ちつ屋根を切り刻みながら声を張り上げる。


「エアロード!ブレス!」

「分かっている!エアロブレス!」


 エアロードは息を吸い込みソラが切り刻んだ屋根を吐き出したブレスで吹き飛ばす。


 安全を確信したソラは吹き飛んだ屋根から外に出ていくと、大学の東の方から火の手が昇っていくのが見えた。



「大学生や教職員は直ぐに逃げてください!押さないで!」


 ジュリの案内の反対で爆発と火災の連鎖は多くの人に恐怖を与え、恐れて逃げ惑う人の波でごった返している。

 大学構内では未だに銃撃や魔導による戦闘音が外まで響き渡っていく。


「奥まで逃げてください!押さないで!駆けないでください!橋を渡って反対側まで!」


 ガイノス帝国軍の兵士たちが大学内まで駆け出していく姿を多くの人が不安な面持ちで見守っている最中、ソラの緑色の鎧姿が空を掛けていた。

 ソラは大学構内に突っ込んでいき、アサルトライフルを構えて暴れ回っている防弾ジョッキ姿の男性に向かって魔導銃の弾丸を飛ばす。


「何なんだ?この地獄絵図は!クソ………何が目的だ?東方面が徹底的に暴れ回っている」


 ソラは一旦地面に着地し先ほどまでいたジェノバ博士の研究所へと向かって走っていくと、そこではレクターが出入り口を死守していた。


「レクター!これは何事だ!?」

「分かんない!どうやって侵入されたのかも分かんないの!爆発と同時に侵入されたみたいで………数は軽く三十は超えると思う。下手をすると五十は超えるかも」

「そんな数が………進入路も分からないのか!?」

「分かんないよ!ガイノス軍が必死で抵抗しているけど、避難誘導なんかに人員を咲かなくちゃいけないとかで中々抑えられないんだって!」


 ソラは近くの兵士を緑星剣で切り伏せる。

 レクターと一緒になって研究所を防衛していると、倉庫エリアから戻ってきたジェノバ博士をハンドガンで守りながらケビンがすぐそばまで姿を現す。


「全く………バルバルを外の養殖場に逃がしているのか?」

「ジェノバ博士!ご無事でしたか?今バルバルたちを養殖場に移動させている最中なのですが………」

「なら早くせい。こやつらが守っている間に逃がして儂らも逃げるぞ……」


 ソラ達の後ろで大学生達がバルバルの避難行動を迅速に行っており、ジェノバ博士はその間に自らの部屋の中に入り込む。


「やれやれ反政府勢力どもめ、全く………やはり『あの島』の情報が欲しいのだろうな」


 そう言いながらジェノバ博士は『ドラファルト島に関する地質(ちしつ)調査(ちょうさ)書類(しょるい)』と書かれた書類を脇に抱えながら研究部屋から出ていく。


「ドラファルト島……か。呪われた島など、手を出さずにおればよかっただろうに。全く、自業自得じゃろに。全く………さてこれをどうするべきか」


 ジェノバ博士は小さくため息を吐き出し、燃え盛る大学をそっと見つめる。


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