大学攻防戦 4
奈美達は水上オペラを出ていく中、興奮しっぱなしの奈美とメイちゃんの二人、その二人を引き連れながら他のメンバーもどこか鳴りやまぬ興奮を何とか抑えていた。
「ガイノスの人って訛りって無いの?海都オーフェンスの人達って特に訛りがあるようには聞き取れないけど?」
「う~んどうかしらね。聞いたこと無いけど」
エリーは腕を組みながら少しだけ考え込むが、こういう時はどうしてもジュリが一番得意だったりするので、エリーはどうしてもそういう知識に弱かったりする。
捻っても答えなど出るわけが無く、後ろでレイハイムは興味なさそうに本を開いている。
「でも、どうして?」
メイちゃんが本気の疑問顔を作りながら奈美に尋ね返す。
「え?お兄ちゃん五歳ぐらいまで広島弁バリバリだったから!こっちの人も訛りってあるのかなって」
「奈美ちゃんはどうだったの?」
エリーから問いに奈美は「私はそうでもないかな!」と返すのだが、ソラからのテレパシーで「嘘をつくな」と言われたような気がした面々。
この中で万理だけが微笑む。
「嘘は駄目よ。私と初めて会った時奈美ちゃん若干訛っていたでしょ?」
「ちょっと!奈美お姉ちゃん!言わないでよ!」
「奈美ちゃんが嘘を吐くからでしょ。海君だって知っているんだから」
「しょうがないじゃん!お兄ちゃんが教えてくれなかったんだもん」
「?先輩言っていなかったけ?俺と万理お姉ちゃんはそれでも訛って無かったけど、先輩が教えていたと思うけど?」
海から追及についに目を逸らし始める奈美、そんな時海辺の方から大きな爆発音とそれに続くように黒っぽい煙がモクモクと立ち上がっていく。
エリーとレイハイムがぼそりと呟いた。
「「なんか………あそこにソラがいるような気がする」」
他の面々が「確かに……」と呟くとその煙をよそに更に大きな爆発起きていく。
不安な面持ちで連続で起きていく爆発を前に全員の心は不安で押しつぶされそうだった。
倉庫エリアの下階へと降りていき、物陰に隠れながら廊下を徘徊している者達のタイミング計っているケビンさんの後ろ、俺は先ほどから歩いてきた道をずっと見ていた。
「どうしましたか?先ほどからずっと後ろを確認しながら歩いていますが」
「つけられてる。今確信した」
問題はどうやってつけている相手をこちらに引きずり出すか………、俺はもう一度ケビンさんの方を見ながらつけている相手にバレないように耳打ちする。
「俺が倉庫の個室に巡回している兵を集めます。その間にジェノバ博士を救出してください……」
「ですが……どうやって巡回している兵を集めるのですか?見た所下手に暴れ回ったらむしろ怪しまれると思いますが?」
「俺に案があります。俺を信じてこのままエアロードの案内のまま進んで下さい。エアロードは空気や風の流れからこのフロアのおおよその人の配置が分かるはずです。ここは俺に任せてください」
ケビンさんは少しだけ考え込む。
「本当に大丈夫ですか?」
「潜入や調査では素人ですけど、戦闘ではその辺の人間に負けるつもりはありませんよ」
「………分かりました。ここはお任せします。ジェノバ博士を救出したらエアロードさんをあなたの元に向かわせます」
「了解です。俺はこのまま俺の方法で暴れ回ります」
俺はそう言いながら来た道を一旦戻っていく、あの曲がり角に必ずいるという確信が取れたのは、俺もエアロードと同じ力が多少は使えるからだ。
その為ある程度俺達と距離を取りながら歩いている事に気が付くのにどうしても時間が掛かってしまった。
俺は曲がり角を反対方向に曲がり、適当な場所で兵から隠れる為に個室の中へと入っていく、俺はそのままバレないように個室の物陰に身を潜ませる。
俺はそのまま排気口の出入り口を開けて身を潜らせて別の部屋へと移動して行く。
倉庫フロアの個室は換気の為に部屋と部屋に小さな排気口が備え付けられていることが多い、その排気口を通って別の部屋へと移動し、ドアを一旦開ける音だけを小さく鳴らし、俺はそのまま室内の物陰で隠れながら排気口の方にジッと視線を向ける。
排気口の出入り口の柵が勝手に開き、中から白銀の髪の女性(ケビンさんと違い長めの髪)の女性が現れる。
実際身動きの仕方がケビンさんなんかとまるで違う。
あれは兵士というよりは、忍者のような体の動かし方。
「やっぱり……ばれていましたか」
柵の奥から身を出し、足音も立てないように着地する女性。
「こちらメメ。バレました」
耳に付けている通信機越しに誰かに現状を簡潔に告げたのち、冷血な視線を俺の方に向けてくる。
「アンタ……外相の秘書の女性だよな?やっぱり、最初っから怪しいと思っていたんだ」
「へぇ………今後の為にも参考にしたいわね」
「別に………外相と一緒に見ている俺への視線、一件俺の方を見て青ざめているのかと思ったけど、アンタの目はいたって冷静そのものだった」
「なるほど、芝居には少し自信があったのですが。まさか、そんな所から見抜かれるとは、今後は目つきにも気を付けなくてはいけませんね」
そういいながら彼女は右手で自分の頭に手を伸ばし、白銀の髪という名のウィッグを外し、中から茶に近い金髪が姿を現す。
「しかし、こうなるとあなたは私を逃がしてくれないという事で良いのですか?」
「ああ、アンタと少しだけ暴れさせてもらう」
俺は緑星剣を右手握りしめ、左手に持っている魔導銃の銃口を真直ぐメメという名前の女性へと向ける。
俺が銃の引き金を引こうとした瞬間、メメという名の女性の腕が真直ぐ俺の方に向いた瞬間俺の神経が何かアラートを鳴らしている気がした。
咄嗟に身をかがませ俺の頭上を何かが通り過ぎた。
「あなたがそこまで望むのなら私が手伝ってあげましょう。正直あのクソ外相の相手ばかりで苛立っていたのです」
俺の後ろのドア一帯が粉々に破壊され、重りが付いた鎖が真直ぐ伸びている。
「奇妙な武器を使うんだな?あんた忍者か何かか?」
「忍者という言葉に聞き覚えが無いですが……私は特殊な訓練を受けています。変装、暗殺等、私には幼い頃よりそういう訓練を受けてきました………」
やっぱり忍者じゃねぇかよ!
クソ、海洋同盟ってそんなおかしな国なのか!?
その辺の一般兵とかより実力は高いとみるべきなのか……、だとするならここで手加減する理由は無い。
俺は魔導銃の引き金を引き、銃口から風で構成された弾丸をまずは二発彼女の胴体と右足に向けるが、彼女はその攻撃をギリギリまで引き付けて体を捻って回避。
その身の動かし方は忍者やくノ一と言ってもいいだろう。
俺は目掛けてクナイと言ってもいい武器を俺の頭めがけて投げつけてくる。
「やっぱり忍者じゃないか!」
俺は不満を口に出して叫びながらクナイを緑星剣で弾くのだが、俺の視界のど真ん中にあるクナイに小型のプラスチック爆弾が付いている。
爆弾付きのクナイの攻撃を星屑の鎧で防ぎ、何とか態勢を整え直しそのまま剣を握りしめ直して一気に距離を詰める。
メメという名の女性は腰から閃光手榴弾を取り出し、俺と彼女の間に放り投げるが、その程度は俺にはある程度想像できた。
俺は魔導銃で風の弾丸で閃光手榴弾を廊下まで弾き飛ばし、そのまま再び距離を詰め、閃光手榴弾の閃光と同時に俺の緑星剣と彼女の小太刀がぶつかり合う。
「成程……戦闘能力では既に学生レベルを超えているようですね。あなたの戦闘能力を見誤っていました。今度は少しだけ本気を出させてもらいます」
「こっちもあんたが忍者だと分かった以上、警戒心を高めて挑ませてもらうよ」