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真実 8

 俺が振り下ろした緑星剣の攻撃を意図的にずらす堆虎の攻撃が俺の目の前にやってきた。

 突風が吹き荒れて俺の体を吹っ飛ばそうとするが、俺は足で踏ん張りながら堆虎からの攻撃をジャンプで回避する。

 しかし、堆虎はそこまでを織り込み済みの用で、まるで刀のような軌道で俺の体目掛けて横なぎに攻撃がやってきた。

 空中では身動きが出来ないと思ったのだろうが、俺は剣を強く握りしめ何もない所で『捻り斬り』を繰り出す。


 ガイノス流剣術自己流回避術『捻り回避』を繰り出して攻撃を回避し、そのまま剣を堆虎の頭上目掛けて振り落とすのだが、堆虎はその攻撃を俺を蹴っ飛ばす事で回避した。

 俺の体が真後ろにあるコンクリートの壁に叩き込まれ、痛みで悶える暇もなく堆虎は俺に向かって容赦なく剣を振り下ろす。

 俺はそれを足払いで攻撃を回避しつつ、一旦距離を取って様子を見る。


 突進斬撃技を繰り出そうと両足に力を籠めるが、堆虎は剣でコンクリートの床破壊しつつ視界を塞いでくる。

 うまい切り返しだが、この技を一体誰が教えたのかが少し気になる所だ。

 あの男が教えたのだろうか?


 そんな事を考えている間に堆虎の姿が煙越しに映るが、先に攻撃を仕掛けてきたのは堆虎だった。

 体勢を低くしているように見え、俺の視界に微かに写っていた堆虎の姿が煙から現れると俺の喉元目掛けて水平斬りを繰り出す。


 その攻撃法はまるで昔の侍が繰り出すような抜刀術だが、それこそ堆虎には不釣り合いな一撃に見える。

 俺は緑星剣で攻撃を受け止め、衝撃が俺の両手に痺れを与えた。

 俺の体を通り過ぎて後ろ後方で一旦止まった堆虎の方を振り返ると、俺はそのまま床を蹴って堆虎に近づきながら剣を横なぎに一閃を決める。


 狙うは堆虎の首、今の状態だと片手では威力不足なので両手で握りしめながら距離を詰めて移動時の衝撃を剣に乗せながら思いっきり横に剣を振る。

 完全に後ろからの攻撃に対して堆虎は後ろ目掛けて回し蹴りを繰り出し、俺の腹にまで響き渡る様な衝撃と吐き気が同時に襲い掛かってきた。

 俺は吐き気に耐える為に思いっ切り下唇を噛み締め、体が空中にある段階で俺は剣を片手に素早く二回クロスに振る。


 堆虎は俺からの攻撃を辛うじて受け止め、そのまま空中で体を捻りながら堆虎の側頭部目掛けて思いっきり回し蹴りをお見舞いした。


 しかし着地の事をまるで考えていなかった俺はその場で転がり、堆虎もすっ飛んでいきゆっくりと頭を振りながら起き上がろうとする。


 駄目だ………堆虎があいてんだと思うとどうしても手を抜きそうになる。

 これじゃダメなんだ。


 何も証明できていないじゃないか………。


 堆虎の方をじっと見つめて起き上がろうとする堆虎にあわせて俺も起き上がる。


「しっかりしろ! 今頃になって手を抜くな!」


 自分に言い聞かせる。

 そう言わないと俺はどうしてもどこかで手を抜きそうになっている自分を抑えられない。

 守ると誓ったはずだし、それを証明するという想いでこの戦いに挑んでいるはずなのに、こうしている間も涙を堪えないと戦えなくなりそうになっている自分がいた。


 堆虎が俺に向かって思いっ切り剣を振って近づいてくるのを俺は後ろにバックして回避しようとする。

 これじゃダメなんだと後ろに引く足を踏みとどまり前へと突っ込んでいき、剣を振って攻撃するのだが、堆虎はあえて攻撃を回避しようとしない。

 分かっているんだ。

 俺が躊躇しているという事に、完全に気が付いている。


 攻撃の軌道が完全に逸れてしまい、無防備になってしまうと俺の首元目掛けて禍々しい剣が襲い掛かってくる。

 やばいという思考と同時に俺の体からエメラルドグリーンの騎士人形が飛び出してきた。


 堆虎からの攻撃を全身で受け止めた騎士人形は堆虎を吹き飛ばす。


 竜の顎での攻撃の際に俺はラウンズを飲み込んでいたようで、自動で俺の危機に対して動いたようだ。

 俺としては完全に予想だにしていない行動で動けずにいる。

 騎士人形が俺の方をチラッと見てくるのが見えた。


『しっかりしろ』


 そう言われているような気がする。


『躊躇をするな。もう助からないんだ。俺達も、堆虎も助からない。殺してやることが、魂の救済になるんだ。それともお前はこのまま最愛の人を殺すという罪を堆虎に背負わせるつもりか?』


 隆介の声に聞こえてしまうが、でも確かにその通りでもある。

 俺は堆虎に更なる罪を重ねさせることだった。


「ラウンズ!」


 俺は今出せる騎士人形を最大まで呼び出し、堆虎に襲い掛かるが、堆虎は俺を上回る数で召喚して対抗してくる。

 二十三の騎士人形を召喚して対抗してくるが、俺としてはここで負けるわけにはいかない。

 竜の欠片をいくら模倣しようが、本物には勝てない。

 目の前で俺を守ろうとしている騎士人形はなんとなくだが隆介のような気がする。

 いや、隆介だと思うことにした。


「隆介! 他の騎士人形を俺に近づけさせないでくれ! 堆虎自身は俺が何とかする!」


 隆介の魂の欠片を有する騎士人形は黙って頷き、俺は隆介が攻撃を弾いたタイミングで食らい付く。

 憎しみを晴らすためにも、これ以上罪を重ねさせないためにもここで殺す。


 俺は三連撃斬撃技を繰り出さし、堆虎は攻撃を剣でのみ綺麗に弾いてみせるが、俺は最後の一撃で堆虎の剣を真上へと打ち上げ、そのままタックルして堆虎の体勢を大きく崩す。


 恨んでいるのだろうか?

 俺は躊躇してしまう気持ちに鞭を打ち、剣を両手で深く握りしめて思いっきり突っ込んだ。

 最後の力で剣の刺殺攻撃を回避しようとする。

 距離が足りない。

 剣が落ちてくる速度の方が速い。


 そう思っていた時背中を誰かが押した。


 俺の体に更なる速度が生まれ、俺は思いっきり剣を堆虎に突き刺した。



 ソラ君は涙を流すだろうか?

 泣くのだろうか?


 腹に突き刺さった剣の痛みなんて気にならないくらいに私の意識は憎しみや殺意から解放され、まるで浄化されたかのように思考が綺麗に透き通っていく。

 ソラ君の体に全身を預け、少しずつ死にゆく自らの体から力が抜けていくのが分かり、同時に私の魂の欠片と言ってもいい何かがソラ君の中へと吸収されていく。


「泣かないでね? 立ち止まらないでね。私はいつでもここにいるから」

「て、堆虎………ごめん」


 涙を流したような声が聞こえてきた。

 ああ、そうだよね…そういう優しい人だもんね。

 そう言う所が一番好きだったよ。


「どれだけの人がこれからの道の中で死んでも、ソラ君は決して諦めずただ前に進んで欲しいの。痛みを受けるような道でも………どれだけ誇りが汚されてもその気持ちだけは失わないでね。間違っていないから、その道を選んだソラ君の想いがあればこの二つの世界は………多くの人が救われる。その先で…………ソラ君の願いはきっと叶うよ」

「卑怯だよ………」


 私はそっとソラ君から離れていき、ソラ君は私に手を伸ばそうとする。


 本当に優しいね。


 ソラ君……………()()()だったよ。


 初めてあなたと会ったその時からあなたの優しさに私は惹かれた。

 寂しそうにしていて、どんなことだって出来そうなのに、窮屈そうに生きている君がどうしようもなく愛おしく感じたの。


 私の気持ち………届いたのかな?

 私の初恋の人。

 私が最初に恋をして……最後に恋をした人に殺されて死ねる。

 ソラ君はきっとそう思わないと思うけど、私はこんな事でも幸せだと感じるの。


 伝わると……………いいな。


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