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南区攻防戦 7

 突然現れたヘリに対して俺が下した素早い判断はジュリを抱えてその場から素早く離脱だったが、デリアさんとレクターはその場で軍用ヘリへと挑んでいく。

 一般的な帝国国民の感性と一緒にされてしまうとかなり不本意なので訂正しておくと、あの二人が戦闘狂じみた所がある為、目の前に戦う対象が居れば迷わず挑むところがある。

 なので俺が守っているジュリの少しだけ怯えたような態度でもまだ少しおかしいだろう。

 普通の一般的な態度として目の前に軍用ヘリが現れれば迷わず逃げるを選ぶところである。


「ちょっと! 軍用ヘリ相手に近距離武器で挑むつもり!?」

「何とかなるわよ」「どうとでもなるでしょ」

「こ、この戦闘狂!!」

「「戦闘狂ですが何か?」」


 狂っている二人が揃っているので途轍もなく面倒なうえ、こういう状況では率先して戦いたがる所があるこの二人と対照的に冷静的に戦おうとする俺とジュリが衝突するしかない。

 というより所かまわず敵に戦いを挑まないで欲しいし、ジュリがいるのだから少しぐらい戦う場所を考えて欲しいという不満が存在する。

 しかし、言った所でその不満が叶うわけでもなく、止めた所で止まらないのでもう勝手にしてほしいという気持ちで隠れていることにした。


 列車の陰に隠れて攻撃がこっちに来ないようにと願いながら待っていると案の定ミサイルがこっちの方にまで飛んでくるので、俺は列車を足場にしてミサイルをはじき返す。


「言った事か! ジュリが居るんだぞ! 軍用ヘリ何て遠距離武装しか積んでない様な兵器相手に近距離武器しかない人間がどうするんだ?」


 俺は怒り混じりに言葉を発するのだが、その全てをきっちり無視する二人。

 怒りを行動で示し、俺は『刺殺の束』による攻撃を軍用ヘリのプロペラの部分に当て、墜落させる。

 二人は「何をする!?」と俺の方を見るが、俺はそれを上回る様な怒りを見せる。


「ジュリが居るって言っただろ! 戦う場所を考えろ! 大体軍用ヘリに対して近接戦闘しかできない様なメンツが揃っているんだぞ!?」


 魔動機による直接攻撃は残念ながら威力不足で、生身の人間を相手にするのならともかく、機械を相手にする場合はかなり不利になる。

 下手に魔導機で攻撃をすればいい的になってしまう。

 というのも魔導機を術を使う際に身動きが取り難くなるといデメリットが存在し、それ故に魔導機を武器の中心としてとらえて戦う人間は後方支援に徹する場合が多い。

 それ故にこういう逃げ場の少ない場所での戦闘ではなるべく避難させてからというのがセオリーであり、この二人の事だから俺が守るからいいやという考えなのだろう。


「でも、なんか呆気なかったわね。つまらないわ」

「ですね。もっと歯ごたえのある相手なら良かったのに。新型という割に今までの軍用ヘリとまるで違いが無かったです」

「そうね。壁を歩いて昇るとかそういう機能があればいいのに」

「恐ろしい事を言わないでください! 本当に登りだした……ら………」


 俺が絶句してしまった原因は新市街地の壁を昇ってくる先ほどの軍用ヘリだった。

 なんというか、四本の脚が生えてよじ登る姿は機械の昆虫に見えてしまう。

 レクターとデリアさんは「やればできるじゃないか」見ないな顔をして神妙にうなずいており、俺は心の中で「感心している場合じゃないだろ」とツッコミたい気持ちだった。


 軍用ヘリは左右の翼に装備された機関銃を乱射し始め、俺はジュリを抱えたままその場から移動して行く。

 ジュリは魔動機を使って周囲の列車の残骸を使って機関銃へと攻撃し、俺はジュリに攻撃が当たらないように走り回る。

 列車が少しずつ下へと落ちていき、俺は二人に「急いで倒せ!」と怒号を飛ばすと二人はまるで「仕方がない」と言わんばかりの態度で軍用ヘリにとどめの一撃を入れ始めた。


 倒せるのなら早めにしてほしかった。


「そういえばさっき何か言っていませんでした?」

「ええ、革新派が帝都内でクーデターを引き起こそうとしていて、保守派と主戦派がそれを口実に帝都の政治権限を奪取しようとしているらしいの」


 今のデリアさんの話から俺は今帝都で起きているおおよその軍部の争いの内容が見えてきた。

 ジュリも同じようにおおよその内容が把握できたのだろう。


「元々軍のトップは革新派だったけど、政治権限は中立派が持っていたから。保守派と主戦派はそれを奪取する機会をうかがっていた。もしここでクーデターの被害が大きくなれば中立派は権威を落とす事になるし、革新派を捕まえれば軍部を掌握することもできる」

「ジュリちゃんの言う通り。その証拠に最近外の軍工場を革新派と保守派と主戦派が動かしていたという話があった。これは魔導協会が実際に調べた確実な話よ」

「だったらあの兵器は?」

「この状況で私達を襲ったのだから恐らく革新派が作った兵器ね。それはソラ君もおおよその検討は付けていたでしょ?」


 まあ、この状況で俺達を襲うメリットを持っているのは今クーデターを起こそうとしている革新派以外にあり得ない。


「なら中立派と主戦派が作った兵器って何? それってすごい平気なの?」

「ある意味レクター君が一番好みそうな兵器よ。人型機動兵器だって聞いたわ。要するにロボット」


 レクターの両目に宝石でも詰められているのではと思わせるほど目を輝かせているが、俺としてはため息でも吐き出したい気持ちで一杯だった。


「そこまでして政治権限が欲しいのかな?」


 俺が呟いた言葉にジュリは俯くだけ、レクターも頷こうとはしない当たり本当の意味で理解しているわけではないようだ。

 しかし、デリアさんは何かを理解しているような顔をしている。


「ソラ君たち学生にはまだ分からないわよね。この国の政治権限を手に入れるという事はこの皇光歴の世界の政治権限を手に入れるも同然なのよ。要するに世界を手に入れたといわれてもおかしいことは無いわ。今は中立派が政治権限を握っている」

「要するに父さん達ってわけだ」

「そうよ。その上で厄介なのはアベルさん達はあなたを通じて今では魔導協会何かと強いパイプを握っている。簡単に落とせない牙城に内輪もめで落ちそうになっている。もし、中立派よりうまく解決できれば政治権限を奪取できるというわけ」

「アベルさん達を落として上に成り上がるチャンスになるから保守派と主戦派はあえて情報をリークしないように情報を封鎖し、革新派がこのパレードのチャンスをうかがっていたんだね。今日のパレードで襲えば防衛隊に組まれている中立派の失態には十分。だけど……」

「そうね。ジュリちゃんの予想通りで、皇帝陛下の襲撃はソラ君たちのお陰で失敗だし、皇帝陛下の発言で国民の意識はむしろ中立派への期待へと変わった。だから革新派はともかく、保守派と主戦派は今勝手に身動きが出来ない。多分だけど東の近郊都市で軍の進軍を止めている状況でしょうね。その間にアクア・レイン要塞から中立派の戦力がこっちにやってきているから。多分私と同時期にやってきたあの人も今頃動き出している頃じゃないかしら?」


 面倒な事態になっていると思うし、そもそも誰が来ているのだろうか?」


「ジェル・マイン大将よ。かなり高齢なんだけど今でも最前線で戦いたがる変わり者で有名でね。結構な策士で有名で、共和国との戦争では何度も共和国兵を殲滅したと噂よ。士官学生時代はアベルさん達の教官についていて、三人に戦術を教えた人よ」

「師って事?」

「この場合師では無いわね。それに師匠だったら別にいるもの。多分分かると思うわ。それより………フフ。ジュリちゃんすっかり胸が大きくなったわね。美味しそうじゃない?」

「涎拭け。目元を元に戻せ。あと興奮するな」

「良いじゃない。やっぱり帝都はいいわね。美女揃いだし、より取り見取りよ」


 この街の女の人全員を抱きそうな勢いだが、こんな人でも仕事に対するしたんすだけは尊敬できる。


 しかし、俺としてはこのままの状況で終るわけにもいかない。


「取り敢えずここから近い士官学校に行きませんか? あそこなら情報が揃っていると思うし」


 デリアさんはジュリの方をじっと見ながらおいしそうな顔をしている。

 あれは完全に不審者の顔だと思った。


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