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南区攻防戦 6

 俺達がエレベーターを降りると、駅のホームでは多くの乗客と駅員たちが慌てており、俺は急いで駅員へと話しかけた。


「何があったんですか?」

「そ、それが見知らぬ武装集団がいきなり電車を占領して………あ! 君達!?」

「駅員さんは其処にいてください!」


 俺は叫びながら東区行の列車の中へと入っていき、左右を確認している間に後ろのドアががいきなり閉まってしまう。

 レクターが先に乗り込んで、ジュリがギリギリで乗り込むと俺達は左右から剣や槍を持った武装集団が近づいてくる。

 遠距離武器を持っていないだけましだと思うべきなのか、核こまれていることを不幸に思うべきなのか。

 ジュリを物陰に隠し、俺は前方へと向きレクターは後方の方を向く。


「ジュリは其処から魔導機で援護。レクターは後部車両の敵を、俺は前方車両的に集中」


 ジュリは携帯型の魔導機をポケットから取り出し、俺は緑星剣を召喚してから前方へと駆けていく。

 剣を振り下ろす男の攻撃を右に回避しつつそのまま両腕を切り落とす。

 同時にジュリが左右に分かれている敵に対して空気を圧縮した弾丸を十発ほど連続で撃つことで牽制し、俺は弾丸が当たらないという確信のままひたすら前へと突っ込んでいく。

 敵としては俺に対処する為に前に出ていきたいが、前に出れば弾丸の餌食になるし、後ろに逃げれば俺の餌食になると動けずにいた。

 容赦することなく俺は剣を振り下ろし、また一人を倒してからそのままさらに前方車両へと急いで走り出す。


「レクター。後ろの敵の数は?」

「十………多分」

「確実な数は?」

「多くて数えられません」


 俺は「ならいい」と前の方に集中することにした。

 数が少ないならこっちの手伝いを頼もうと思っただけだし、見た感じかなりの数が前の方にも集中している。

 ジュリの魔導機もこの状況では『風属性』しか扱えないだろうし、こうも狭いと一度に相手にできる数にも限りがある。

 しかし、この場合狭いというのはこちらにもメリットがあり、囲まれる要因が存在しないので相手にしやすい。


 相手と戦い始めて十分で一通り鎮圧し、取り敢えず前方車両の運転席で電車を止めようと移動し始めた所で俺は奇妙な『ビビビ』という音を聞いた。

 音のする外の方へと視界を向けると、人の頭ほどの大きさの機械が列車と並行して移動しており、円盤のような形の胴体の下には今になって見慣れた機関銃が付いているような気がした。

 俺は急いでジュリを押し倒し攻撃から身を守るとジュリの小さな悲鳴とほぼ同時、窓ガラスが割れ機械が室内に入ってくる音が聞こえてきた。

 音の数から考えて恐らく五機。


 俺はジュリを庇いながら急いで態勢を整え、剣で目の前の一機に突き刺す。

 そのまま更に後方を飛んでいるもう一機目掛けて投げつけると、もう一機も煙を上げて墜落していく。


「後一機!」

「分かってる!」


 俺はもう一機の居場所を探すと、俺の近くの座席から俺の頭に向けて照準を向けており、俺は剣で攻撃を受け止めようと思ったが、最後の一機は煙を上げて倒れた。


「今のは………ジュリか?」

「機械だから『雷属性』の攻撃に弱いんじゃないかなって思ったの。中から電流をショートさせれば一発だったよ」

「流石だな。魔導機の扱いならジュリが一番か………それより、さっきの奴らの中にもいなかったな?」

「うん。でも、運転席までまだまだあるはずだし、少なくとも運転席周辺に敵がいるって事にならない?」

「だな。ジュリ………前方と後方の索敵は出来るか?」


 ジュリが目を瞑って携帯式魔導機を操作し始め、一分ほどが経過したところでゆっくりと目を開けた。


「後方には人影無し。前方に二人ほど人影有」

「ならやっぱり前だな。それはそうと………さっきの機械は何だったんだ?」

「たぶんだけどドローン。無人機じゃないかな? 操作されている雰囲気も無かったし」

「なら問題はあれを誰が飛ばしたかじゃない? 明らかに外から飛んできたよ」


 レクターの言う通りで外からやってきたうえ、中から外に出たの中最低限そういう音が聞こえたはずだ。

 それすらなかったという事はあれは外からやってきたという事になる。

 ジュリは何かに気が付いたのか、壊れた機械から何かのパーツを取り出した。


「これって……カメラ?」


 という事は誰かがこの戦闘を見ていたという事になる。

 しかし、気にしすぎても仕方のない事で、俺は二人に「前に行こう」と促す。


 警戒を最大限まで高めた状態でゆっくりと前へと急ぎ、一番前の車両の丁度ど真ん中に二人は堂々と立っていた。


「ここまで追いかけてくるとはな。よっぽど殺されたいらしい」


 黒い鎧は勝手な事を言っているが、俺達は気にしないことにし武器を構えなおしていると俺はとレクターは電車の遥か前方に見慣れた人を見た気がした。

 というか、その瞬間には脳裏で「やばい!」という言葉が何度もアラートのように響き渡り、俺はジュリをお姫様抱っこで担ぎ、レクターはそれ以上の速度で電車から飛び出す。

 俺は鎧を召喚しジュリを守りながら電車から飛び降りた。


 その後、列車は『ドゴン!!』という大きな音と共に爆発音と一緒に脱線し、そのまま列車は旧市街地の方へと落ちていく。

 俺は抱きしめたジュリに対して「大丈夫か?」と尋ねると、ジュリは微笑みながら「大丈夫」と返してくれる。

 俺が念の為にと全身を調べていると問題の人物がハルバードを肩に乗せながら優雅に歩いてくる。


「いい加減にしてください! 俺達が電車に乗っているって分かってやったでしょ? デリアさん!」

「良いじゃない。あの程度の列車。それに………あらあら。いつの間に仲良くなったのかしらぁ?」

「ち、違!」

「またこの世の女に男ができたかぁ」

「あなたも女ですよね? 俺の記憶が違わなければ」


 デリアと呼ばれている赤い派手な髪をしている女性は、へそ出しのTシャツと革ジャンにショートパンツのようなジーンズパンツを着ており、この寒い帝都で明らかに異常な服装である。

 四月の帝都と言っても北に大きく寄っている帝都は四月でも十分寒い。

 なのにこの人は明らかに季節外れの服装をしている。


「何なんですか? その寒そうな服は」

「良いじゃない。どうせ動いていたら熱くなるじゃない。それに、女を抱くときはこういう服の方が脱ぎやすくていいのよ。あら? どうしてジュリちゃんは怯えているのかしら? よっぽどソラ君が怖かったのね」


 こっちおいでと言わんばかりに両腕を広げ、ジュリには負けるが豊満なバストをこれでもかと見せつけてくるデリア。

 そんな谷間を見せつけられて興奮するレクターと、対照的に覚えて俺の背中に隠れるジュリ。


「あなたが初めて会った時に性的な嫌がらせをするから怯えているんです!」

「あら失礼な。悪戯って言って頂戴」

「パンツを脱がして裸にしてでもする悪戯がありますか!? あれ男なら一発通報ですよ!」

「あらなら私は女だからセーフじゃない?」

「聞いたことありますよ。あなたを出禁にしている街もあるって」

「女の十人や二十人が私に抱かれたぐらいで」


 数の桁がおかしいというツッコミをしたいが、この人そういうツッコミは無駄な行為だと三年前に学んでいる。

 湖畔の町でであったこの人は昔から何も変わらない。

 こういう性格をしているが戦いに関しては優秀な方で、砂賊仕込みの武術は父さん達が認めている部分でもある。


 性格以外は。


 なんてくだらない言い合いをしている間にヘリコプターのプロペラ音が新市街地の方から聞こえてきた。

 全員の視界に今まで見たことの無い大きな軍用ヘリが現れた。

 縦の大きさこそ軍用ヘリと同じサイズだが、横幅は通常のヘリコプターの倍以上はあるという巨体が現れた。


「これね………革新派が極秘裏に開発していたっていう新型兵器は」


 今この人はなんていったんだ?


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