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ガイノス帝国 5

 ガイノス帝国首都ルーガリア東区画新市街地、ガイノス帝国軍本部から五キロ外れにある少年院行きの子供だけを預けられた特殊な留置所がある。

 大通りからは大きく離れ、人通りが少ない場所に作られたこの施設にテラは運び込まれ、拘束具と特殊な薬剤によって身動きを封じられている。

 親はその日のうちにやって来たが、正気を失った獣のような姿になった息子に唖然としてしまった。


 呪術によって正常な判断が出来ず、その上軍医は呪術を使ったのはここ最近の話ではないとはっきり診断した。

 その理由は両親の言葉からはっきりし、去年の夏頃に師弟制度を活用した際にその性格上に師に逆らい続けて破門され、秋以降から他の生徒との間に差を感じていた。

 それは月を一つ越すごとに焦りに変わっていき、その結果彼はいつからか呪術の薬品に手を出した。

 しかし、親でも正確な時期は分からず。

 分かっているのは彼が粗暴な態度を本格的に酷くさせていったのは去年の十一月以降、進級試験対策で周囲が忙しくしていた時だったそうだ。


 取り巻きを引き連れるようになったのも、破壊魔なんていわれるようになったのもそれ以降の事である。

 それこそレクターやソラが異常な問題児だと有名だったが、その分二人はあらゆる問題を解決してきたことでも有名だった。

 そういう意味ではテラがそんな問題児二名と比べられるようになる。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、そういう意味ではテラにはソラを憎む理由はあった。


 サクトは長く黒い髪を後ろに束ねながら目の前の書類に目を通していた。

 軍の情報部が調べ上げたテラに関しる資料には肝心の項目が記述されていない。


『呪術の薬剤がどこからやってきて、どういうルートでテラの元までたどり着いたのか?』


「奇妙な話ね。軍の情報部ならその程度調べていてもおかしくないはずだけど。ねえ、誰か知らない?」


 サクトが自分の部下に声を掛けるとサクトの部下達は皆がガヤガヤと話し始め、一人の若い士官が立ち上がった。


「これは噂何ですが、最近薬剤関連の仕入れルートに奇妙な穴があると聞いたことがあります。どうも、正規ルートの中に紛れているんじゃないかと」

「そう……それこそ情報部がはっきり調べておくべきことでしょうに。実際学生の中に被害が出始めている。このままいけば取り返しのつかないことになるわよ。戦争が終わったばかりだというのに………、今度の二日後にはパレードが控えているのよ。問題が起きてからでは遅すぎる」

「ですよね。私達で調べておきましょうか?」

「そうね……ガーランド君は人命救助には詳しくても情報収集は苦手だし、アベル君の所は戦闘のプロフェッショナル。私達が担当しておいた方が良いでしょうね。任せてもいいかしら?最悪情報部の妨害があると考えておいた方が良いわね」


 全員の目の色が変わった。


「軍内部に裏切り者がいると?」

「そう考えるのが普通じゃない? この程度軍が把握していないとは思わないし、情報部が本気で動かせない相手なのよ? それと、旧貴族にも話を通しておいてくれるかしら? 士官学校を含めて明日は全校休校を政府に通達、明日一日は各学校は薬剤の検査に入りましょう」

「そうですね。こっちは私の部隊で動きます」


 黒髪の若い士官が立ち上がりサクトからの指示のあった通りに動くべく一旦部屋から出ていった。

 金髪の士官はサクトから命令書を受け取る。


「じゃああなたの部隊はさっきも言った情報収集をお願いね。他の部隊の内一つに最高議長に連絡を取ってくれる?」

「分かりました。そちらの方はどう伝えておけばいいですか?」

「『軍内部に動きアリ、皇帝陛下に危険を通達』と伝えて。最悪の場合に備えておく必要がありそうだし」


 サクトは出ていく若い士官に笑顔で見送った後、素早く表情を引き締め手元にある書類にもう一度不備が無いかどうかを確認する。

 軍の中で何かおかしなことが起きている。

 嫌な予感が現実にならないようにサクトには祈る事しかできなかった。



 父さんとの訓練が終わりお風呂に入った後自分の部屋に戻ると学校からの連絡が俺の目に留まった。

 そこには明日休校することになったという旨が書かれており、原因などは全く書かれていなかったが、俺にはその理由にテラが関わっていそうな気がすると思っていた。

 何せあれだけの暴れ具合だ。

 それに何らかの薬剤を使っていた痕跡もあったし、明日は自宅待機でもしていた方が良いのだろうか?


 ベットに腰掛けてふと天井を仰いでいると俺の携帯のホーム画面からメッセージ送受信用のアプリを開き、連絡先からジュリを選んでメッセージを入力しようとしたところで固まった。

 何で俺はジュリに連絡を取ろうとしているんだ?

 家に来てもらうとか?

 それとも出かけるとか?

 彼氏彼女でもないのに?

 ありえないだろ。


 そう思って止めようとも思ったが、やることが無いのも真実でこのままだと無意味に一日を過ごしそうだ。

 明日のあの騒ぎだし、いくら提示帰宅土日休みを絶対とする父さんと言えど出勤は絶対にするはずだし(というより世の中を若干なめているきらいがある)、レクターが何を言いだすのか分からないので先にそっちを誘うか。

 なんか気恥ずかしいし。


 そう思いレクターに連絡を飛ばしてみたが、レクターは明日一日両親から店番を任されているらしく身動きが取れないらしい。

 なら仕方がない。

 今日会えなかったレイハイムやエリーは家の事情で同じく身動きが取れず、後輩の知り合いも軒並み身動きが取れないでいた。


 なんか少しだけ寂しい思いをして少しだけ黄昏ていると俺の携帯にジュリからメッセージが入った。


『明日暇になったんだけど、もしよかったら明日一緒に出掛けない?』


 思いがけない形でのジュリから連絡に少しだけ戸惑いながら俺は少しだけ思案する。


 ここで断る事は簡単だ。

 しかし、せっかくジュリからの誘いを断る事は俺自身心苦しい物があるのだが、今日の襲撃がある分簡単に出かける気にならない。

 そんな話をすればそれこそジュリにいらない気を持たせることになるだろう。

 同時にジュリを巻き込みたくないというのも本心で、だがしかしそんなこと言えばまたいらない気を回す事になる。


 悩んでいると再びジュリから連絡がきた。

 内心「時間を掛け過ぎたか?」と思い素早く画面を確認する。


『もしかして予定があった? あるならいいの。また両親が家に居ないって聞いたからならソラ君と一緒にって思っただけだから』


 一人の女の子を家に独りぼっちにして、孤独に家で過ごす気になるわけがなく、一段師としてむしろジュリと一緒に行動できる上、ジュリ自身は俺との行動を他の楽しみにしているのかと思うと俺はドキドキする。

 俺はジュリが一人だと寂しいという建前を手に入れ、それを口実にジュリとのお出かけを決定することにした。


 素早くメッセージを打ち込み、ジュリに出かける旨を伝えると嬉しそうなメッセージが帰って来た。

 俺は明日行う疑似デートに心をウキウキさせていると再びメッセージが俺の元までやってきた。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「超能力か!? 人のスケジュールを五秒で読むな! ていうかどうやって読み切ったよ!」


 あまりにも突然やってきたレクターから超能力じみたメッセージに律儀に突っ込む俺だった。


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