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ダークサイド 4

 閣下と呼ばれた男はフォードが使っていた社長室に忍び込んでいた。

 社長室の椅子に座り込みパソコンを起動させたのち一枚のディスクをパソコンに入れてしまう。

 するとパソコンのパスワードがあっという間に突破し、あっという間に様々な情報が目の前に現れた。

 欲しい情報をパソコンで検索していると最初に『瞬間移動の法則』という項目があり、それを胸ポケットから記録媒体を差し込みデータをコピーしていく。

 そしてもう一つの情報を探していると目の前にそのデータが現れた時間と、社長室のドアが開いたのはほぼ同時だった。


「え? どなたですか?」


 男は社長室に現れた秘書のような女性を一瞥し、パソコンを操作しながらあるデータを記録媒体に入れていく。

 秘書の女性は明らかな不法侵入者である男を通報しようとし、社長室から出てエレベーターのある右側を向いた瞬間に社長室にいたはずの男が目の前にいた。

 驚きと恐怖で身動きが取れなくなり、その場でまるで金縛りにでもあったように立ち尽くす。


「見られたからには黙って返すわけにもいかないし、かといってあんたみたいな美人を殺すのも勿体無いとおもうのだ。どうだろう? 殺されるか、それとも私の下で体を弄られるか」


 女性としてはその両方を拒否したいところだったが、身体が動かない上に恐怖で体の芯までが竦んでいる。

 息が荒くなっていき、動悸が思考能力を麻痺させるだけではなく全身に嫌な汗が流れていくのが分かると、男は大きなため息を吐き出した。


「こういうのは困るんだよなぁ。はっきりして欲しいものだ。即決即断。社会人とやらは常識ではないのか? ああ、駄目だな。ここ百年西暦世界で過ごしていたからどうしてもこういう考え方が染みついている」


 自分の頭を叩いて反省している素振りを見せるが、実際男がどれだけ反省しているのかというとまるで反省はしていなかった。

 彼女のこの状況を含めて男は完全に楽しんでいる。


「どうだろう?死にたくは無いよなぁ? そうだよなぁ……せっかく生きたんだ。もっと生きてみたくはないか? 怖いか? 恐怖で恐ろしいか? それはお前が弱者だからだ」


 男は女性に抱きつき耳元で囁きかけていくと、女の表情がドンドン無表情に近づいていく。


 恐怖で思考が麻痺し、囁きかけられる言葉が「正しいのでは?」と考えてしまい、次第に考えを男へと預けていく。


「死ぬ行為はお前が弱者だからだ。お前は弱い。弱いのなら強者に考えを預ければいい。例えば?」

「あ、あなたのような?」

「そうだ。俺のような人間にな。お前も不死になりたくはないか? 永遠を欲しいと思わないか?」

「ほ、欲しい! 私もあなたと同じく永遠でありたい!」


 男はあと一歩だなと思いさらに深く語り掛ける。


「そうだろう? だがその為にはお前は全てを私に委ねなければならない。お前の全てを差し出す事でようやく永遠が手に入る。教えてくれお前の全てを」


 女性は全てを差し出す事を決めてしまった。

 女性は自分に思い人がいる事を教えると、男は「その思い人を殺せ」と命じてくる。

 そのまま自らは社長室へと戻っていき、他にも使えそうな情報を探っていると女が去ってから三十分体中を返り血で真っ赤に染まった女を見た。


「良いじゃないか。お前に永遠を上げよう」


 一人闇に堕ちていく。

 二か月以上が経過し九月中旬、ガイノス帝国の南の端に位置する『ボボの森』の前にボウガンとカールは訪れていた。



 ボウガンは内心やる気が起きる事は無かったが、命令されたのでは仕方がない。

 目立つ仕事なら断るつもりだったが、今回は魔物がはびこる場所に二人で行けという任務なので渋々了承した。


「でさ? 魔界について知りたいんだけど?」


 カールに尋ねるが先ほどから怒りのボルテージを上昇中なのかまるで話を聞いていなかった。

 その内「何か言いましたか?」位のレベルで目だけをボウガンに向け、ボウガンは先ほどと同じ問いを尋ねた。

 実際カールが苛立っている理由が分からないわけじゃないボウガン。


 先ほど命令していた閣下と呼ばれる男の脇には知らない女がおり、明らかにイチャイチャしていたのだから。

 知らない間に妾を造ったのだと思えばボウガンは何とも思わなかったが、閣下と呼ばれている男を敬愛し溺愛しているといってもいいカールからすれば知らない女を連れられた正妻の気持ちだった。


「魔界とは竜結晶の存在で周囲の植物や生き物が変質してしまった場所=常識。そういう場所は各国軍が掃討作戦に乗り出す=定期的」

「はぁん………要するに凶暴な生き物の巣窟って考えればいいわけだ。俺、こっちの世界に疎いから良く分からん」


 とことん馬鹿にしたような素振りを見せ、ボウガンは一回一回その素振りに苛立つ。

 どこまで行っても相性が悪い二人、しかし能力や役割の相性は非常にいい。


「竜結晶というのがあるとどうして凶暴になるんだ?」

「竜結晶はそのまま放置すると周囲の植物に影響を与え続け、異常な成長や『魔』の力を宿した木の実や草の葉を生やす=危険な植物。これを食べた草食動物を肉食動物が凶暴になる=メカニズム。竜結晶は長期間放置すると魔結晶と呼ばれる存在に変質し、周囲の物質に『魔』の属性を付与する=ついていけている?」

「? だったら魔導機はどうなる?」

「魔導機はそういう影響が出ないように魔結晶と魔導機に加工を施す=重要」

「そういう金属でもあるのかね? まあいいや。で? 俺達は何をすればいいんだ?」


 カールは金髪を後ろに束ねながら馬鹿を見る目をしながらも仕方がなさそうに答えた。


「この先にある魔結晶を見て来いとのこと=任務。なんでもここ最近この魔結晶に近づいて奴がいるという話を聞いた」

「最近ねぇ……それってどれぐらい最近?」

「十年ほど前」

「一般的な人間の感覚では十年は最近じゃねぇと思うぞ」

「不死=私達。普通の人間じゃないから=常識」


 そう言いながらカールはまるで意にも返さないまま歩き出すが、それをボウガンの声が再び遮った。


「でもよ……それだったら俺要らなくないか? お前だけで十分じゃね?」


 カールは冷めきった目をしながら振り返る。


「私一人で行けばこの森が吹っ飛ぶ=軍が現れる」

「だったら前はどうやって入ったんだ? 俺達任務だとお前が入っていなくちゃいけないよな?少なくとも十年以上前に」


 そういう話になる。

 カールは顔を真っ赤に染め上げるだけで何も答えない。


「ああいわなくていい。どうせボスと一緒に行ったんだろ? この痴女め」


 カールは怒りの表情でボウガンの頭めがけて手刀を伸ばすが、ボウガンはそれを辛うじて回避する。


「おまえ苛立ったら取り敢えず攻撃しようとすんな!」

「だったら苛立つことを言うべきではない=ボウガン」

「俺は想ったこと言っただけだぜ。ボスの事をまるで夫みたいに見ているけどよ! あの女たらしの何がいいのか分からないね! 抱いている女に飽きたら次の女に衣替えをする! よくもまああんな奴が好きになるね! ああ! 操られてんだっけか!?」

「殺す=ボウガン。あの人を侮辱することは誰でも許さない=絶対」

「どうせ今抱いている女だってその内捨てるだけだぜ!」

「………」


 カールは何か言いたげにしている姿を見て興奮していたボウガンは疑問顔をする。


「閣下はあの女で何かをしようとしている=理解不能。どうもこれから控えている大きな作戦に対して使うつもりらしい=重要」

「俺たち以上か?」

「それはありえない=当然。でも、その次に重要な駒=彼女達」

「………達?なんだそりゃ」


 カールは「知らない=閣下の考え」とだけ言うと森の中へと入っていく。


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