意地と遺児 3
意地と遺児の三話目になります。
海に落ちた男の体を引き上げようとガイノス軍が船で散策をしていたが、しかし男の体が発見されることは無かった。
俺達としては狙われる理由に心当たりが全くない、そのようにガイノス軍に伝えて俺達はその場を去ろうとしたのだが、その時点で俺はジュリ達を放り出していたと気が付いて元のアクセサリーショップへの道を逆走していった。
あの男が何者なのか、そもそもなぜ『俺』を狙ったのか、そもそも本当に俺が狙いだったのか?
そんな疑問をよそにアクセサリーショップまで引き返す傍ら、途中で見知らぬ一人の女性とぶつかってしまった。
「ごめんなさい」
「いいえ。こちらこそ」
そんな義務的なやり取りを繰り広げながら俺は彼女から漂う甘い香りが鼻孔を刺激する。
今まで嗅いだことが無いような匂いなのに、どことなく危うげな匂いがした。
一旦前を向き、もう一度振り返るとその女性は既にそこにいなかった。
その代りに一輪の花束が落ちており、俺はそれをそっと拾うのだがそれからは先ほどとは違う決して不愉快ではない微かな甘い匂い、そして一つのメッセージカードが添えられていた。
『星々を背負う者へ、同じ星々を背負う者達から。追伸:あの男はまだ生きている』
意味深な言葉がつづられているが、一番知りたい情報は最後に書かれていた。
やはりあの男は生きているという事が分かった以上ある程度の警戒心を高める必要性がある。
「それ何?どうしたの?」
「どうやら俺へのメッセージらしいぜ。先ほどの男が生きているってな」
俺としては最初の言葉が気になる。
『星々を背負う者』というのは俺の事だろうが、もう一つの『星々を背負う者達』については心当たりが一つだけある。
「アメリカ………」
アメリカ合衆国のエージェントと言った所だろうが………忍者みたいな動き方をするな。
一瞬で俺の視界から消えてしまったという事か………いや、近くにまだいる。
「レクター……ジュリ達と合流してくれないか?俺はさっきの女性と会ってくる」
「密会?」
「殺すぞ。そうじゃない。あの女性の所在も気になるし、それに……このメッセージカード、多分俺に追いついて来いという隠れたメッセージに見える」
「考えすぎじゃない?」
「それを確かめてくるだけだ。深追いはしないさ。無理、無駄だと分かったら直ぐに引く」
そう言って俺は人混みの中へと入っていく、あそこから直ぐに消えるためには人混みにまぎれる方が楽だ。
しかし、あてどなく歩くとは思えない、俺を誘っているのならきっとわかりやすい場所に進むはず。
この海都は水路と陸路が複雑に広がっている。
この商店街だけでも陸路の分かれ道が三つに分かれており、一つは大学方面で二つ目が水上オペラの方向に、最後の1つは高級住宅地の方へと繋がっている。
俺達は高級住宅地方面に一旦引き返していたので、彼女の進路上最後の1つは無い。
なら候補は水上オペラと大学方面という事になる。
「俺達の進路目的が大学方向なんだが………俺と接触するのが目的なら進路は完全に別だろう。あそこは特に話し合いをするような場所ではない上、大学など重要な施設が多く、人に隠れて話をするには少々不得手だ。目的が俺と話をしたいという事なら多分進路はこの先の水上オペラだろう」
俺は水上オペラへの道をひたすら進んで行き、大きなアーチ状の橋を渡っていき目の前に見えてきた。
縦は高層ビル三十階ほどの高さ、横幅は東京ドームのざっと倍ほど存在している。
出入り口はそのまま四か所、東西南北に分かれており、俺は目の前にある出入り口から中に入っていくと、そのまま受付の女性から本日のチケットを購入しようとする。
「もしかしてソラ・ウルベクト様ですか?」
「はい……そうですが?」
「先ほどある女性からあなたの分のチケットを購入されており、VIP席を用意していらっしゃいます。よろしければご案内いたしますが?」
「お願いします」
俺は女性の案内のまま、一番上のVIP席がある場所へと案内された。
綺麗で大きな水球が目の前にあるで水族館のように置かれており、その中を多くの魚や色とりどりのサンゴなどが鮮やかさを演出している。
VIP席のあるこの狭い空間、この空間には席が全部で四つか用意されていないが、その席には誰も座っていない代わり、一番前の手すりに両手を添えて綺麗な水球を見つめている一人の女性。
後ろ姿から分かる事、白銀のような綺麗な髪は肩に着くかつかないかぐらいの長さを維持しており、黒のミニスカートのスーツを着た一人の女性。
「綺麗。こんな大きな水槽で演技をみることが出来たら………」
「あなたの故郷ではこんな綺麗な水槽はないのか?」
「ええ、綺麗な場所はあるけれど……これだけのモノになるとね………」
彼女はようやく俺の方に振り返りその整った顔立ちを俺に見せつける。
別段睨みつけるような目でもなく、特に優しそうな顔立ちでもない、でも、どこか忘れられない様な綺麗さをもっている。
彼女は前髪を払い、澄んだような綺麗な青い目を俺の方へと向ける。
「初めまして………アメリカ合衆国エージェントの『ケビン・アファリー』と申します。今回は合衆国エージェントとして、合衆国からあなたへの正式な依頼をガイノス帝国の許可を得る形でこうして話し合いの場を持たせてもらいました」
「やっぱり合衆国だったか………」
「ええ、合衆国からあなたへの正式な依頼、合衆国の裏切り者である『ジャン・バウワー』とその裏で動いている組織を阻止して欲しいのです」
「それって先ほどの男の事か?」
「先ほどの男はそのジャンなのか?それとも関係者か?」
「関係者でしょう。少なくともジャン・バウワー本人ではありません。これがジャン本人です。あなたにはきちんと記憶しておいてほしいのです」
そう言って手渡された写真には、細身の眼鏡をかけたひ弱そうな金髪の男性が写っており、オタクと言われたらアッサリ信じてしまいそうだが、目つきはどことなく恨みを抱えているような目つきをしている。
「この男が何をしたんだ?一見見ると何か大事が出来るような男には見えないけど?」
ケビンはどことなく言いにくそうにしていると、もう一枚の写真を俺に見せてくるのだが、その写真を見た途端俺の心臓は止まりそうなほどの高鳴り見せた。
それはレクターが預かっているはずの腕輪『バル』である。
「それは一週間前にアメリア合衆国のテキサス州で発見された腕輪です。当初はただの腕輪として発見されましたが、ガイノス帝国が二週間前に作った大使館に持ち込んだところこれが呪術で構成されている道具であると判断されました。合衆国大統領は緊急事態であると判断され、この道具がどこから入手したのかを判断したところ、この男が名乗りを上げたのです」
「待て待て!名乗りを上げたからってそんなすんなり……」
「いいえ、彼の自宅のパソコンのメールから何者かと連絡を取り合っていることが判明しました。そのメール相手からどうやらそこそこ大きな組織であることが判明しました。そして、数日前にあなたが『バル』を発見したところから、今回両国はあなたとあなたの仲間達に正式な依頼を出すことが決定されたという事です」
俺はバルの写真とジャン・バウワーの写真を見比べながら俺は大きくため息を吐き出した。
今回新キャラクターが登場しますが、これがあらすじの所に書いてある『祖国に尽くす兵士』という英雄です。では明日お会いしましょう!




