貴方を取り戻す 4
昼食を終えた俺達は一旦南区の新市街地まで戻ることにし、バスに乗るためにバス停を目指すところでエアロードとシャドウバイヤが「お腹空いた」と言い出したのを俺達全員で「こいつマジか」という目で見る。
レクターも一瞬だけ言いかけたが黙り込んだ所を見る限り、「これ以上的を作りたくない」と感じたのかも知れない。
まあ無論無視する事にした一行はそのままバスに乗り込んでから新市街地へと戻ることにした。
ここからは帝城前までゆっくりと移動して行く事にし、俺はふとスマフォを手にして時刻を確認する。
まだお昼の一時、儀式開始まであと二時間はある今、入って場所まで向うことを考えて出来れば帝城前には二時半には到着したい。
そのつもりで動くしか無いという気持ち構えでいることにして、俺達はそのまま南区の新市街地へと出てくると、そこから今度は地下鉄へと乗り換えて南区の中央駅まで移動する事にした。
「そう言えば地下鉄に乗って思い出したけど、俺の家は田舎だったから初めて地下鉄を見たときカルチャーショックだったな」
「そこまでのショックですか? 田舎って…貴方の元々の家そんなに田舎でした?」
「都市からはそこそこ距離があるし、そもそも俺が住んでいた広島って基本地盤が軟らかいから地下鉄無いしな」
「無かったですね。僕も初めて新市街地で地下鉄に乗った時は結構なショックでしたね。地下鉄なんて都市伝説だって思いました」
「それこそ大げさでしょうに…」
「でもこっちの世界だと地下鉄のある街なんて結構限られていますよ。珍しいですし…初めては別の国ですけど、直ぐに帝国で実装されたのは結構真新しい話ですし」
「そうなのですか? 技術大国が作ったんですか? というかそれしか思いつきませんが…」
「そうなんですか? 私も箱入り娘みたいに監禁されて過ごしたので知らないんですよね」
「アンヌ。箱入り娘って監禁されて過ごした人間を指す言葉じゃ無いと思うぞ。今後箱入り娘という言葉を使い辛くしないで欲しい」
「皇光歴では実装されているのは帝国の主要都市と技術大国などの一部の大国だけですよ。それも国としては多分三つしか無かったはず。基本無いはずです。技術的な話と言うよりは戦争時かと言う事もあってそんな余裕が無いだけですね。街頭テレビだって割と最近だったと思います」
「そうなんですか!? 街頭テレビってそこまで重要度ありませんよね? 得に必要性も感じませんし」
まあ基本情報なんて家のテレビやネットのニュースで十分だとは思うけどな、俺自身そこまで重要度が無いから必要な情報は起きてからネットで調べるようにしている。
毎朝のルーティンなので欠かしたら体調が崩れそうな気がする。
まあ崩れないんだけど。
「ソラはそんな事を毎朝しているのですか?」
「気になるニュースは調べるのは当たり前だろう? 昨日何があったのかなんて、得に帝都で起きた事ぐらいなら知るようにはしているさ」
「父さんは必ず朝新聞を見るようにしていますね。僕はあれ良く分からないんですけど。父さんは「見ることは重要だ」って言っていますけど」
ケビンが「ええ」と引いているが、元々苦手な分類なんだろうし分からない反応じゃ無い。
「アベルさんはどうなんでしょうか? 私はソラさんの家に泊めて貰いましたが、一回も見ませんでした」
「マジで母さんに詳細を報告するぞあの馬鹿親父。どれだけ俺に会いたくないんだ? 父さん? 基本は見るけど…流し見だったはずだ。あの人は俺と同じでネットで調べる派だし。意外と近代文化は使い熟す方だよ。スマフォなんてアプリだらけだったはずだし。もう見て居て「このアプリ何に使うの?」と聞きたくなるような奴までいているんだから」
「それってさ。ただ入れているだけじゃ無い?」
「レクター。馬鹿にするなよ。俺もそう思って聞いてみたけど、ちゃんと詳細を説明できるんだからさ。例えば父さんは写真を取るだけで三つぐらいのアプリを入れていて。『人』『風景』など使い分けているんだから。動いている物体とか、静止状態の風景とかだけでも。あの人…俺より近代機器を使い熟しているんだ」
「なんでですか。ですが以外ですね。そういうのは苦手というイメージが。まあ勝手なイメージですけど。でもアックス・ガーランドさんはどうなんでしょう」
「父さんですか? 苦手の分類だったはずですけど。でもどこまで苦手なのかは知らないです。最低限は使って居るはずですし、説明したら分かるはずですけど」
「サクトさんは普通に使って居たけど、本人曰く「アベル君ほど使い熟せるわけじゃ無い」って言っていたかな。アプリとかは普通に入れているみたいだし」
「そうなのですか? まあ私も言われるほどさほど使い熟しているわけじゃ無いですけど。でも、日常生活の中でそこまでアプリとか使います? カメラとか」
「カメラを使って映えを気にする近代の若者の多くを敵に回す発言だな」
インスタとか俺は良く分からないので使ってはいないが、因みに父さんは普通に使い熟しているんだ。
それなのに掃除が苦手で部屋中をゴミ屋敷に変えかねない心配すらあるのに、家電だけは買って使うからマジで家事寸前まで追い詰められている。
本人が意識しないまま追い詰められているから困るものだ。
「と言う事はソラさんのお母さんは?」
「苦手。機械音痴ほどじゃ無いけどさ。最新機器を用意されても使わないし、触れようともしないんだよね。まあ父さんはさほど気にしないでドンドン買うんだけど」
「それ…使って居るんですか?」
「俺がな。あとジュリとか来たときに使う。この前父さんが「上げるよ」と言われたけどジュリ断るんだよな」
「だって…あれ多分日本円で十万ぐらいする奴だよ? 貰えないよ」
「流石に躊躇しますね。海の言えば高級家電とか多そうなイメージが…無いですね。古い物を使い古している気がします」
「買いますよ? 必要があれば…でも基本壊れない限りは買わないかな…。壊れたら買うぐらいの気持ちですね。以外と父さんと母さんも物持ちが良いから」
「ああ。師匠は結構物持ち良いよな。今使って居るスマフォだって確か五年前から使って居るんだっけ? でも、あの人壊れたら修理じゃ無くて、壊れたら年数にかかわらず即買い換えだったな」
「ええ…勿体無い! 壊れて捨てるなら頂戴! 直すから!」
「直せるのですか? 貴方が? 貴方のイメージは直すでは無く壊すなのですが?」
「失礼な! 知り合いに頼んで修理して貰うの! 大丈夫この拳を強めに握りしめたらただで修理してくれる」
「脅すな。そんな事で…」
「冗談だよ。流石に格安で修理してくれる所を知っているからさ。仕事を手伝ったらただにしてくれるから。アタッシュケースを何処かに運ぶ仕事とか、黒い服の男を追う仕事とか」
俺達の脳裏に危ない仕事が過り、ケビンが俺に向って「違法バイトでは無いですよね?」と聞いてきた。
レクターに聞いても答えられないので俺は心の中で「今度調べよう」と決めた。
学生が違法バイトをさせられていて、している本人は気がついていないとか在るのだろうか。
そう思って俺はふとレクターの知り合いを思い浮かべた。
レクターの知り合いで、家電を修理できるほどの技術を持っていて、その上危なそうな仕事を平気で学生に頼む常識知らず…まさか!?
「おい! 父さんとか言わないよな!? 何だ! 何故顔を背ける!? レクター!?」
「だって…ただで修理するなら仕事手伝えって。アタッシュケースの中身は麻薬売人をおびき出すのに使うからって、黒い服のマフィアの拠点探しを手伝ったり」
何を頼んでいるんだ…あのクソ親父は!!