東の近郊都市 6
元の広場まで戻ってきた俺達はそのまま時計回りに今度は東側を見て回ってみることにした。
再び目の前に現れる長すぎる廊下、どうせいつかは辿り着くし別段妨害をするわけじゃないのならショートカットさせて欲しいと思う。
まあ口には出さないけどそんな中レクターは何故か楽しそうに鼻歌を歌いながら先頭を歩いているのだが、こいつがどうしてこんなにテンションが高いのかイマイチ理解出来ない。
何か楽しいことでもあったのだろうか、そう思って記憶を辿ってみてもイマイチそういう思い出が存在しないし、むしろここ数時間マジで疲れることしかしていないのだが、ここ数時間じゃ無いか…ここ数日だ。
本当に疲れることしかしていない。
「なんでレクターはそんなに元気なのですか? 何が楽しくてそんなにテンションが高いのです?」
「え? 戦えるなんて幸せじゃ無い?」
「何処の戦闘狂の意見ですか…普段から頭のおかしい人間と言う意見が強かったですが、今確信しました。貴方は戦闘狂ですね」
「フフ。知ってしまったか。俺は戦闘狂だ!」
「断言するな馬鹿」
俺はレクターにそんな言葉を吐き出してからそのまま近付いてきたドアへと手を掛けて開く。
前の部屋はスロットが密集した場所だったが、今度はルーレットが置かれているフロアとなっており、誰も居ないルーレットだけが置かれている寂しい部屋、何処かに目立つ何かが無いかと思って出入り口から見回してみても何もない。
しかし、鎖はこの部屋へと伸びていたことは事実。
ならこの部屋にあるはずだと考えた俺達は歩いて部屋中を探してみても何も見つからない。
最後はこの部屋の一番奥にある真っ赤なカーテンの奥、俺が代表して近付いていくと突然真っ赤なカーテンが上がっていき奥には巨大なルーレットが見えてきた。
俺達は「またこのパターンか」と思ってルーレットへと近付いていく。
俺はそんな時ルーレットの上が綺麗なガラスで蓋をされており、俺達全員が立っても問題はなさそうに見えた。
周りは綺麗な夜空が見えており、外気までもを再現されており、星々の一つ一つが綺麗で見蕩れそうになってしまう。
さて…何が始るのかと思って見守ると、一人の女性が上空から落ちてきた。
その首輪には鎖が伸びており、この鎖がエネルギーを拘束しているエネルギーである事は間違いが無い。
女性は黒いバニースーツを着ておりレクターが「おお!」と強い関心を見せ、俺と海は敢えて無表情を作り出し、ケビンはバニースーツを着ているお姉さんの豊満な胸元を睨み付けて舌打ちをする。
何が彼女をそこまで苛つかせるのかイマイチ理解出来ないが、俺は胸で女性のステータスを図ろうとは思わない。
レクターは違うみたいだけど。
「気に入りませんね…胸がまるで女性のステータスであるかのように…」
「誰もそんな事言っていないぞ。しかし、俺達を誘惑するつもりみたいな服だな。まあ好みじゃ無いけど」
「露出が多すぎて引きますね。風邪を引いてしまいますよ」
「ソラ君と海君は感心がなさ過ぎない? レクターは前のめり過ぎるし。ケビンさんも落ち着きません?」
「何故人間はあんな肌を露出しているウサギの真似事女に拘る?」
エアロードが心底不思議だという感じで訪ねるが、そんな人間の考えにこいつがりかいできるとは思えなかった。
女性はゆっくりと口を開き始める。
「ようこそルーレット場へ。此所では私がお相手させていただきます。最後までお楽しみくださいませ」
「アンタと殴りかかれば良いのか?」
「お客様がそれを望まれるのなら…その代わり負けたら命をもらい受けますが!」
「ならアンタが負けたら死んでくれるんだよな?」
バニースーツのお姉さんは綺麗な美脚を振り回しながら俺のこめかみ目掛けて右回し蹴りをお見舞いしようとするが、それをケビンがシールドを展開して防ぐ。
俺は接近してきたお姉さん目掛けて異能殺しの剣を振り抜いた。
しかし、お姉さんは素早く地面を蹴り、俺の攻撃をバク転しながら回避しつつサマーソルトで俺の顎下を狙う。
俺は襲い来るサマーソルトを仰け反りながら回避、海がそんな空中に飛び出たお姉さん目掛けて刀を抜き出して力一杯振り回す。
お姉さんは綺麗な体裁きを見せながら海の攻撃を全てギリギリで回避、そんな最中怪しく微笑むのだが、そんな微笑みの顔面にレクターが拳を叩き込んだ。
「お前…女性の顔面に容赦無く拳を…流石に引くぞ」
「え? 綺麗なことと敵であることは別じゃ無い?」
「これでこの苛つく女は終わりです?」
ケビンは本当に不機嫌であるらしく「フン」と鼻息を荒くさせて立ち去ろうとすると、足下のルーレットが急に動き出す。
ルーレットは赤のハートで止まってしまうのだが、俺はルーレットでハートなんて聞いた事が無い。
すると吹っ飛んだお姉さんが起き上がって俺達の方へと怪しく微笑む。
どうやらルーレットの効果で生き返ったようだが、それってこのルーレットを破壊するしか勝ち目が無いと言うことでは無いだろうか。
と言う事はやはり此所でもレクターの出番という事で、俺はレクターに「これを破壊しろ」と命令しつつ指を下に向けた。
「ええ…イカサマは良くない!」
「ゲームにおいてイカサマしかしない男が何を言うか!? 良いから破壊しろよ!」
レクターがブツクサ言いながらも足下にあるルーレットに力一杯拳を叩き付けたが、全くの無傷であり俺は苛つきながらレクターを見る。
「理不尽じゃね!? 俺は全力で叩きましたけど!? こいつ堅すぎるって! これ破壊するの不可能じゃ無い!?」
「破壊できないようにしてあるんだと思うけど…武力派の人が思いつきそうな作戦だし。多分ソラ君やレクター君みたいな考えを読んでいるんだと思う」
「待ってくれ! ジュリ! 誰に言われても傷つかないけどジュリに言われたら傷つく!」
「ソラが酷い事を言う! バニースーツのお姉さんに見蕩れないようにしながら戦っている俺に賞賛の声が全く無いってどういう事!? 今回真面目じゃ無い!?」
「まあ…今までの戦いに比べたら確かに真面目にしていますが、多少は見蕩れそうには成っているんですね。あんな古典的な服装で」
「まあ胸の無いケビンには不可能だよね。あの色気は…うわぁ!?」
レクターがしゃがみ込むと頭上を真っ赤な光線が通り過ぎるのを俺達は黙って見ていると、その光線はお姉さんに着弾しそうになる。
それに当たってくれたら非常に助かるのだがお姉さんはそれは綺麗な動きで、それこそ新体操の選手の様に華麗に避けて見せた。
「なんて言ったら良いか…露出がありつつ胸も大きくてスタイルも良いから派手に動くと滅茶苦茶胸が揺れてエロい」
「レクター。ケビンが今にも殺人衝動を抑えられない殺人鬼みたいな顔をしているからそろそろケビンを虐めるのは止めろ」
「ソラ…止めないでください。私はレクターもそこの私を不快にする不死者の婆をぶっ殺すのです!」
「落ち着いてください!」
「そうそう。もう第二次成長期が終わったケビンは逆立ちしたってこのスタイルと胸は出来ないって、うわぁ!!!」
「待ちなさい! ぶっ殺しますから!!」
レクターをまず殺そうとケビンは周りにひたすら色取り取りの光線を放ち始め、赤は炎を、青は水を、黄色は雷を、緑は風を、白は光を、黒は闇を放っていく。
俺は猛ダッシュでジュリを確保し、エアロードとシャドウバイヤは俺の背中に隠れ、オールバーは海の元に隠れながら全員が被害が出ないようにする。
するとお姉さんは下のルーレットを動かし始めた時、俺は攻略方法を思いついた。