東の近郊都市 4
ロシアの話をしている間にすっかりピザもエアロードとシャドウバイヤとオールバーの手によって半分以上食べられてしまっており、俺達はお腹一杯にするわけにも行かないので腹半分ほどで後はエアロード達に任せようと言うことになった。
俺はお水をコップ半分ほど飲んでから「ふう」と息を吐き出してから、俺はエアロード達の方をもう一度見ると黙々と食べていた。
「エルメスさんの事ソラ君は知っていたんだね」
「え? ああ父さんの昔の写真に載っていたから「誰だ」って聞いた事があるんだ。何でも有名人を自宅に呼んで良く話を聞いていたらしい。父さんだけじゃ無くて有名人なら誰でも呼ぶから結構危うい目にも遭ったことがあるらしい。犯罪者を家に招いたとも聞く」
「何ですか。そういうことは危機管理能力でどうにかしなさいよ。て言うか犯罪者を有名人として呼ぶな」
「ケビンさんの言いたいことも分かりますけどね…良く呼ぶ気になりますよね。僕だったら流石に躊躇いますけどね」
「有言実行。躊躇をしないがあの人のモットーらしいし。実は去年の六月頃に呼ばれ書けたことがあるんだが…断ったんだ」
「え? どうしてですか?」
「いや…学校が忙しいし…それじゃ無くても日本での一件や帝都でのクーデター事件で目立っていた所為で記者陣が鬱陶しかったのもあって、興味半分で調べ物でもされたら嫌だったから「学業が忙しい」って断った」
「そう言えばソラ君が誰かに電話しているのを見た気がする。あれってエルメスさんだったんだ。そもそもソラ君が電話する相手って当時は私かレクター君やアベルさんぐらいだし…」
「まあ、父さんにはあまり電話しないからな。レクターも電話する前に俺の前に現れるし、ジュリぐらい何だよな…」
「なんですか…電話をする前に来るって…予知能力者じゃあるまいし」
「マジで来ているんだよ。俺が「レクターに電話するか」と思っている間に俺の前に現れる。下手をすればこいつ玄関前に来ているとき有るからな」
「モガモガ!」
「え? 何です?」
口の中にピザを沢山入れてから喋るのを見てジュリが「飲み込んでから喋ったら?」と指摘、水を口に入れて纏めて「ゴクン」と飲み込んだレクター。
まあ良いけどさ…多分ピザってそういう風に食べる者じゃ無いと思うのだが。
そう思って指摘してみるが…言うことを聞かない気がするので敢えて何も言わない。
「何となく分かる。ソラが読んでいる気がするって」
「何ですかその一方的なテレパシーは。本当に人を止めていますね…」
「エルメスって人金持ちなら家に沢山金目の物があるの?」
「有るけど…盗むなよ。本人が居ないだけで使用人とかは居るからな? ああいう人って別宅には使用人とかを置いているモノだし」
「使用人ですか…ソラの家や海の家には居るのですか?」
そんな事を俺達に聞いてくるケビン、俺の家は見せた気がするのだが。
「俺の家は居ないけど海の家は居るよ。と言っても直接言ったことがあるわけじゃ無いからなんとも言えないけど。結構綺麗なメイドさん」
「典型的な金持ちパターンなんですね」
「まあ、広い家だから掃除するのも母さんだけじゃ限界なんですよね。でも料理は母さんがメイドのルリさんと一緒に作ったりするし、半分家族みたいなものですよ」
「師匠の性格で使用人をそのまま扱うのは出来ないだろうな。あの人らしいよ。俺はそんな事より海の家に一回あれって一日遊べるほど広いらしい」
「まあ城みたいな家ですから。地下には地下水道への道も有るらしいんですけど…今は鍵を何重にもかけて封じているって聞きますね。地下には練習場がありますし。それはソラの家もありましたか?」
「ああ。と言っても父さんがトレーニングの為に活用するだけで俺は使わないんだけど…基本学校の設備だけで十分だし。持て余すんだよな」
「普通一般の自宅には練習場なんて有りませんよ。本当に金持ちなんですね…」
「レクター君がうらやましがるんですよね。二人の家。サクトさんの自宅も結構な豪邸なんですけどね。まあ軍の将軍クラスの人達の家って似たり寄ったりだったりしますし」
らしいのだ。
父さんも今の家を将軍になった際に皇帝陛下から貰ったモノだと主張していたし、結構父さんは皇帝陛下からモノをよく貰ったりするが、コレもよく考えたら皇帝一家はウルベクト家との関係を知っていたから何だろう。
なんならガーランド家とジェイドとの関係も…ガーランド家もまた皇族の血筋を引く一族だったのだろうから。
「父さんが皇帝陛下からモノをよく貰うのもウルベクト家の関係を知っていたから何だろうな…聖竜は少なくとも知っていたはずだし」
「かもね。ある程度は把握していたんだろうと思うよ。やっぱり皇帝陛下は全てとは言わないけど、大まかな計画の詳細を聞かされていたんだと思う。だからこそ「皇帝陛下は何もしない」という内容に納得が出来ないモノがある」
「それは仕方が無いさ。あの人達は異能故に危険な事には巻き込まれない。それはあの人達の才能でもある。命の危険には無縁なところにあって、その能力で帝都も帝国もある。あの人達が居るだけでガイノス帝国があるんだ」
「そう言えばそういう才能なのでしたね…」
「ああ。だから貴族内紛の時に皇帝陛下は民衆に政治を預けることに全く躊躇いが無かったんだ。あくまでも自分がそこに居て国の上に立っていると言う状況があれば国は存続できるから。最もとある理由もあってガーランド家は早い内に唆したんだろうけど」
「え? なんでですか?」
「実は師匠には言わないで欲しいんだが…実はガーランド家はジェイドの血筋らしいんだ。彼が人だった頃に作った子供。だからガーランド家もある意味皇族の分家。だからどんな形でも…」
「皇族を帝国から離反させる事だけは避けたかった。それが真実ですか? ならその時に裏で動いていたのは…きっとウルベクト家なのでしょうね」
「だと思うよ。まだ貴族内紛の時はその辺の繋がりがあったんだろう。でも、月日が過ぎていく過程でそういう繋がりが薄れた。最も当代でまた復興したようだけど」
「最もあくまでもジェイドは弟だったらしいから多分皇族としての能力はそのまま子孫への過程で薄れていった」
「そう考えるとガーランド家とウルベクト家と皇族一家の間に二千年以上前にそんな繋がりが有ったんだって驚くよね。でも、他の三つの近郊都市は近代化に伴い再開発計画があるのに、北の近郊都市だけはそれが無かった理由も、皇族由来の土地を荒らしたくなかったのかな?」
「かも知れないな。ある意味北の近郊都市はガイノス帝国発祥の地だ。でもまあ…傷つけられたわけだけども」
今では集合墓地があるだけ。
「そう言えば話で聞いたんですけど。今年のお盆の時期に三十九人の遺族がお墓参りに訪れるというのは本当ですか?」
「らしいよ。それとやっぱい俺達の故郷の住民も北の近郊都市に移り住むらしい」
「? どういう意味です?」
「ああ。ケビンさんは知らないんですよね。ソラ君の元々の家があった集落は燃えちゃったんです。でも、住民は無事で、今は近くのホテルに皆さん泊まっているんですけど…まさかそんな生活を一年以上続けるわけにも行かないからいい加減移り住むか、復興させかって話があったらしいんですけど。決ったんだ」
「うん。元々皇帝陛下がずっと「そうしないか?」と提案してくれていたらしいんだ。元々北の近郊都市をそのままにする事は流石に躊躇われたらしい。再復興できるからそうしたいと…」
今頃その為の予算が政府で組まれている所だろう。