東の近郊都市 3
テーブルの上に並べられているピザを適当に皆で食べながら俺は父さんに電話をしたのだが、残念な事に父さんが電話に出ることは無かった。
予想していたことでもある為俺はサクトさんに電話をかけると、サクトさんは3秒以内に電話に出てくれて、俺はサクトさんに大まかな説明を済ませるとサクトさんは「任せて」とだけ言われた。
その後十分後にサクトさんから返事が返ってくると「エルメスさんから許可が出たわよ」と返事が返ってきた。
サクトさん曰くエルメスさんは今現在そもそも帝国におらず、今はアメリカの方へと事業拡大を目指して動いており、後半年は帰る予定が無いらしい。
どうにも遊園地などの新たな娯楽施設拡大を目指しており、その為に色々と勉強も兼ねてのアメリカらしい、そう聞いて俺は結構安堵の息を露骨に漏らしてしまった。
するとジュリが「どうかした?」と聞いてきたので俺はサクトさんから言われた内容をそのまま伝えてみた。
「そっか。エルメスさんは今アメリカに居るんだ…アメリカの復興じゃ無いんだよね?」
「それは無いでしょう。アメリカ人である私が言うのも何ですが、帝国からの資金などで十分復興としては足りていますよ。むしろ一部の企業が閉鎖状態で困っているので、そう言った企業の合併なども目的の一つでは。幾つかの帝国企業が事業拡大と謳って入ってきていると聞きます」
「仕事熱心だね。復興よりも事業拡大を目指しているとは…異世界交流もすっかり板について…」
「レクターは余裕そうだけど。新年度からは帝国立士官学校も他国からの留学生を多数迎え入れるから競争だぞ…お前埋もれないようにな」
「それ本当だったんですね。アメリカや日本でも復興だけじゃ無く異世界交流を本格的に初めて技術をドンドン取り入れたいんでしょうね」
「それはそうでしょう。私は慣れましたが、アメリカでは飛空挺を見るだけでテンションが上がる人が多いですしね。あれは滑走路を必要としないから必要な面積を削ることも事故を低減させる事も出来るでしょう」
「それは確かにな。完全に安全と言うことは無いが、それでも飛行機よりはマシなはずだよ。滑走路が要らないって言うのは結構大きいよ。まあ、流石に都市部のど真ん中はあまりおすすめはしないけどな。帝都なんて東西南北の地区のど真ん中にあるからな…」
「あれ結構上を見たりしたら飛んでることあるんだよね。私達が住んで居るのは旧市街地だから見ないけど、新市街地の友人が何度も見るって行っていたし…」
「それ私は気になっていたんですけど。どうしてそんなことになっているんですか?」
「簡単だよ。元々大きな壁を作る事は新市街地開発計画時から決っていたし、壁に不要な出入り口の穴を作りたくないという話になってさ、結果迂回路を作ったりするのもあれだし、帝都は広いから門の外に着くったら不便だろ? 新市街地の中に作るアイデアになったんだよ。その際に結構近隣住民と争ったらしいけど」
「その辺は何処でも同じですか。アメリカでは四月には飛空挺の一般航空としてのスタートを切る予定だそうですよ」
アメリカも前に進んでいると言うことか、だが中国やロシアはどうなのだろう。
「ロシアと中国はどうなんだ? そう言えばあれからさほど時間が経過して居ないが…」
「中国は新体制が完成してもう復興や戦後処理に入っているはずだよ。問題はロシアだね」
「ええ。ジュリの言うとおりで今現在ロシアは革命のまっただ中なのです」
「革命?」
俺は「今時?」と反応したが、ケビンは神妙な面持ちで「ええ」と答える辺り真面目な話らしい。
「ロシア内の幾つかの都市などで所謂独立運動が過激の一途を辿っており、ロシアは殆ど二十年間ジェイドが支配していたので内部状況が酷いんです。彼に変わる新たな支配体制を取れる人間が居ないと言いますか。政治が出来ない人間ばかりで全く話し合いが出来ないのですよ。かと言って異世界連盟が臨時政権を立てようとしても良い立候補者を立てられないですし、都市も都市で今までの押さえつけ故に独立しようという流れが出来ているんです」
「それ…各国はどうするつもりなんですか?」
「アメリカや日本などは基本ロシアの国内運動に現状は任せる形になるでしょうね。下手に介入すれば禍根を残しそうですしね。色々と不雑ですよ。国が分断するのは避けたいというのが本心ですね」
「え? なんで? 関係なくない?」
「ロシアは中国やヨーロッパ諸国同様に大国です。西暦世界で一番の国家面積を保有していて、規模も一時期はアメリカ等に並んでいたほどです。アメリカ一強を出来れば維持したくないのがアメリカの意志でもあるのです。あまり一強にしてしまうと反発を招きかねませんし…」
「それでも今現在はガイノス帝国が居るから問題なくない?」
「それもあくまでも異世界を挟んだ国です。同じ世界ではロシアや中国には現状維持を心掛けて欲しいのですよ。レクターには分かりませんかね? 国の想いが」
「レクターに理解出来るわけ無いだろう? この馬鹿に理解出来たら世界中の人間に理解が出来ると言うことになるさ」
「罵詈雑言が全く止まない! 俺今現在何かした!?」
「お前はもう既に昨日の時点でやらかしているだろうに…連れて行って貰えなかったという理由で」
「でも今現在は危ういんですよね? もしロシアが崩壊したらどうするんですか?」
「海も俺を無視するし! いいもん! 食べることだけに集中するもん!」
黙々と食べて行く姿は何処かエアロードとシャドウバイヤに似ていると思った。
「その時はその時です。もう諦めるしか無いでしょう。元々ロシアは幾つかの国が集まって出来た国家群です。ソ連時代こその規模でこそ有りませんが、一時はソ連崩壊があったようにロシア崩壊も十分あり得ます」
「各国はその辺も覚悟の上で?」
「ええ。せめて都市部同士の内乱にならない事を祈るだけです。これが各国の独立で終わるなら良いのですが、都市部同士がロシアの派遣を巡って争うのは止めて欲しいですね。正直もう支援が出来るほどどの国も余裕が有りませんし」
「余裕あるのはこっちに国ぐらいですけど…」
「しないだろうな。それは海も分かっていただろう? 向こうの細かい事情が分からないのに下手に支援をするわけにも行かない。状況の悪化をしないためにも今はロシアや中国の内部事情に任せるしか無い。話だと中国は上手くいきそうって話だが…」
「ええ。ロシアは本当に危ういですね。半年ぐらいは正直様子見状態です。アメリカも幾つかの諜報員を送り込んで様子を見ると言っていますし…」
「戦争にならないと良いですけどね…ジェイドが居なくなった弊害がこんな所で現れるとは思いもしませんでした…」
なんだかんだ言ってジェイドはロシアに対して深入りし過ぎていたのだろう。
彼の影響力は非常に多かったと言わざる終えないし、それがジェイドが死んだ事で、ジェイドがロシアを見捨てたことで弊害となった。
元々各都市事に色々と事情があったみたいだし、当分は雨の都市などが中心となって色々と動かすのだろう。
自由を手に入れたあの国の人達の真価が問われるのかも知れない。
「あの国の人達だって決してそんなに争い好きじゃ無いだろうし、きっと良い落とし所を見つけるさ。流石に戦争後でまた国内で争う元気なんて無いだろうし…ロシアを愛しているならきっとどんな形でも前に進めると思うよ…」
信じて待てば良いと俺は決めてこれ以上ロシアの事を考える事は止めた。