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南の近郊都市 9

 俺は肝試し自体は決して嫌いでは無いし苦手意識があるわけじゃ無いが、逆に奈美は嫌いだったりするのだからここは兄弟でも性格が出る。

 因みに父さんは超が付くほどに苦手らしいが真顔でやり過ごそうとするのだが、母さんは全然答え無いのでやはり俺と奈美は父と母の間に生まれた子なのだと実感させてくれる。

 海がどうだったのかと言えば多分だけど怖がっては居なかった気がするのだが、レクターはむしろ楽しがるタイプだが、そもそもどうして肝試しをするのかという気持ちがまるで理解出来ない。

 と言うかそもそもあまり皇光歴の世界の人間は肝試しをしていても怖がる人間は少ない気がするが、それに対してオールバー曰く「そもそも皇光歴の人間達は『魂の循環』という考え方が根強い所で残っているから」と教えてくれた。

 要するに皇光歴の人間達は竜との交流がある分だけ、基本的に『魂』という未確認で証明しようのない存在を信じており、それ故に古くから存在している集落では『魂の循環』を知っている者達も居るそうだ。

 そういう環境下である為に基本あまりお盆の様な習慣が無いのだが、全く無いわけではないが、基本そこまで重要視していない。

 実際父さんも死んだ親族の墓参りなんて年に一回行けば良い方だと言う方で、下手をすれば俺が来るまで殆ど行ったことが無いなんて発言していたほどだ。


「じゃあ今度の夏は肝試しツアーを敢行しよう! 皆で! 場所は此所!」

「どうぞご自由に…この戦いが終わったら自由にすれば良いさ。俺は協力しないからさ。興味が無いんだよな。そもそも死者で遊んでいるような企画好きにはなれそうに無い」

「あ、僕も同じですね。なんか肝試しってそういう感じがして良い気持ちになれないんですよね…」

「ええ…でもさ…この廃墟の学校とか絶対肝試しにはうってつけだと思うよ!」


 それは同意出来るのだが、だからと言って俺自身が企画したいかと言えば全く企画したくないのだが…この気持ちは伝わるモノだろうか…。

 そもそもジュリからして苦手だったはずだし、アクアもあまり連れて行きたくない。

 まあ…あれはホラー系とかあまり怖がるようには見えないけど…あれって耐性とかあるのかね。

 学校の正門と思われる場所から入っていき、グラウンドを通って石造りの校舎の中へと入って行く。

 一回一回玄関から入って行くわけが無いので、渡り廊下から入り込み一つ一つの部屋のドアを開けて中へと入って行き確認してドアを閉める。

 これを繰り返すだけ。


「職員室…結構広めだな。机の上にあまり書類や本などが無い所を見るとやっぱり急な話じゃ無いんだよな」

「俺職員室嫌い。行けば怒られるし」

「それはレクターが毎回怒られることをするからでしょう? 少し落ち着いて行動していたらどうです?」

「海。それが出来るなら教師陣は全く困らない。まあ…それも今年度までだろう。来年度からはもう…」

「え? なんで?」

「まあ良いさ…来年度になれば分かる。来年度になればお前は地獄を見る羽目になる」

「??? どういう意味? 今のうちに対策しておいた方が良い? て言うかどんな対策が必要?」

「嫌。無理。どんな対策をしてもお前は今までの行いの償いをする事になる。断言する。お前は絶対に来年度。今年の四月から地獄を見る」


 レクターが本気で疑問顔をするが俺は無視をして次の部屋へと向って歩いて行き、俺と海だけが知っているとある真実、それはこの作戦が全て上手くいけばと言う前提であるが、こいつは来年度に確実に地獄を見るだろう。

 まあ俺はそれを楽しみにして二回へと上がっていく。

 まあ、こういうパターンでは教室や理科室なんかもホラーポイントになるもので、一つ一つ確認しても…結局屋上以外を探し終えても何も無かった。

 鎖は確かにこの廃校へと入って行ったので此所の何処かに居るはずなのだが、今のところ全く反応が無いと言うのもおかしなもの。

 俺達は屋上へと足を踏み入れ、改めて確認するがやっぱり何もない。


「此所じゃ無いの? でも鎖はこの廃校で消えていたよね?」

「そう見えましたけど…でも何も無いですよ」

「いや…居るよ。屋上に来たことで目覚めたのか、それとも俺達がここに来るのを待っていたのか…グラウンドを見ろ」


 俺の言葉にレクターと海が同時にグラウンドの方を見ると、そこには黒いフリルのワンピース姿の女の子が、3階建ての校舎を超える身の丈を俺達に晒しながら現れた。

 今の今まで一体何処に隠れていたのか、デカすぎないかという疑問は先ほど人であるはずの四角い何かの所為で得に考えないようにした。

 頭に赤いリボンを巻いている青白い肌の女の子だが、綺麗な金髪から黒いフリルのワンピースまで西洋風の女の子と行った感じの子供。

 まあ体のサイズは子供じゃ無いけど…まあホラー系ではよくある展開だけどさ…でも懐かしいな…奈美が見て居た西洋風の人形が一斉に襲ってくるホラー映画。

 俺はなかなか怖かったな。


「うわぁ…でもあの四角い奴を見たから特にショックは無いよね。この程度ならこの前借りたホラー映画で見た気がする。よって三十点!」


 レクターが女の子に向って人差し指を向けてそんな事を言い出したのだが、こいつは何を言い出すのだろう。

 三十点も何も、きっと不死者達の魂の残痕はそんな事を考えていないと思う。

 女の子は俺達に向って右手を持ち上げて俺達目掛けてはたき落とすが、まあさっきも同じ展開を見たので俺達三人で余裕で防ぎ、力一杯吹っ飛ばす。

 女の子の体を切り裂くというのは少しだけ罪悪感があるけど。


「ぶっ殺す!」

「うわぁ~野太い声! これ中身は中年男性が入っているでしょう! ロリコンのおっさんが小学低学年の女の子になりすます不死者? 変態じゃん!」

「良し。殺そう」

「ソラが即決した」

「分からんでも無いな。私も見るに堪えない。殺してしまおう。こんな変態は…」

「せめて声ぐらい女の子のものを再現できないモノかな~ギャップがエグい。ギャップが良いじゃなくてギャップがエグいんだよね…普通に気持ち悪い」

「きっと生前はかなり太っている中年の男だったに違いない。もしかしたら彼は生きていた頃は女の子の皮を剥いでなりすましていたのかも知れない」

「それをジュリや奈美とかに語ったらその場で悲鳴じゃ無い? ソラ…語り部の才能在るよ! やっぱり俺と企画を…!」

「しつこい。やらない。そしてお前も鬱陶しい! さっさと死ね!!」


 俺は女の子の皮を被った変態親父を小間切れにして切り裂いた。


「でも。変態かどうかなんてまだ確定したわけじゃ…」

『まだだ……私は…もっと女の子に…成るためには…』

「変態でしたね…しかも殺している。救いようが無い変態でしたね」

「救い? こんな奴に? 俺はこんな変態の犯罪者に対して救済をしようとは思わない。せめて後悔をしているならともかく、不死者の魂の残痕となってなおまだ女の子になりたいとか…真性の変態だろうに…」

「世の中は広いね…なんか戦闘がアッサリ終わったけど…」

「得にこれ以上戦闘を続けるつもりは無いよ…て言うか困るし…あんな変態。さあ…速くエネルギーを解放ししよう。多分怨霊と退治しないといけないだろうしな」

「それが一番の問題だよね。まあ最悪異能殺しの剣で真っ二つだよね」

「最悪な。出来れば成仏して生まれ変わって欲しいと思っている。出来ればだけど…説得して終えたいんだ」

「とりあえず行きましょうか…」

「俺が此所でホラー関連の行事に使おうとしているってバレたら呪われそうだね」

「口にするなよ…」


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