南の近郊都市 3
高級ホテルをアッサリ見つけた俺達はそのまま一旦金を支払いチェックインをした後荷物だけを預けて今度は夕食の場所を探すために歩き出した。
大きな通りは様々なお店が建ち並び料理店からアクセサリーなど様々なお店が存在しており、見ているだけでも人によっては一日潰せるのではと思われるほどで、流石は南の近郊都市と言った所だろう。
年末近くに起きた帝国立士官学校分校のクーデター事件が無ければ観光客だって結構な数が居たはずなんだ。
結構閑散としている理由、帝都からの観光客がいないことと無間城の戦いの結果、それと更に追い打ちをかけるように起きていたクーデター事件だろう。
トコトンこの南の近郊都市は良い事が起きていないと言える悲惨な状況であるが、まあ俺達が何か出来るわけじゃ無いから俺達は適当なお店でも入ろうと試みるのだが、此所で拘りを見せるのが竜達である。
まあ生半可なお店では納得してくれないので入る前から却下であるが、そんな地点で却下して欲しくない。
せめてメニューを外で見るという地点ぐらいは潜って欲しいが、残念な事に見る前に外観を見ただけで却下なのでやるせない。
まさかお店の人も外観で「嫌」と拒否されるとは思わなかっただろう。
そこを拒否されてしまったらもう前に進む事は難しいと言える。
まあ…竜達が納得する場所を探すしか無いのだがと思った事が間違いだったのだ。
歩き出して一時間もかけて納得する場所を見つけ出したのだが、正直に言おう…疲れたと。
もう勘弁して欲しいと願わずには居られないのだが、まあ決ったのなら後は入って飯を食べて金を支払うだけだと割り切って中に入って行き、席に座ってからが再び勝負。
こいつら今度はメニューを一切離さずジッと見つめながらどれを注文するのかと格闘し始めた。
俺と海に関してはまだ一切決めていないのだが、なら外で決めて欲しかったと不満を口にしてみたが無論聞かない。
聞く耳を持たないという言葉がこのために存在したのだと思わせるほどの真剣な面持ちで選んでいるのだが、どのみち何を言っても多分体勢が変わらないのでいっそ「全部」ぐらい言って欲しいが、そんな事を言えば顔面パンチで俺はお店から出て行くだけだ。
するとエアロードが俺の方を見て口を開いたその瞬間、俺はエアロードが何を言うつもりなのか理解をして鋭い睨みを向けてから「駄目」と断った。
こいつまさか予想通りの「全部」と言おうとしやがった。
そんな金幾ら家が金持ちとはいえ俺達が持っていると思って欲しくない。
エアロードは仕方が無いと決めたようでそこでようやく俺の方へとメニュー表を渡してくれた。
まあ人によっては恐怖を覚える感じの量を選んでくれたので、俺と海は最悪の事態を考えて料理の量を少なめにしてから注文、スマフォを取り出して画面を見るとジュリからメッセージが来ていたことに気がついた。
内容は「これからアクア達と一緒に食事に行きます」と皆で取った写真が送られてきたのだが、の中にレクターが居ない事が気がかりだった。
俺はジュリに「レクターはどうした?」と送ったら直ぐに返事が返ってきた。
ジュリ曰く「分からない。もう居なかったし連絡が取れないの。もしかしたら明日は連れて行けないかも」と返事が返ってきたので俺はレクターに「今どこだ?」とメッセージを飛ばすが全く返事が無い。
それどころか既読にならない所を見ると全く見て居ないのだろう事は間違いが無い。
まあ居ないのなら居ないで良いとしようと思い無視して居る間に、大きな円形のテーブルの上に密集するように料理が置かれている。
スパゲッティ系やパイ系、煮物や肉や魚、野菜からデザートまでが置かれている。
もう一種のカオスである。
「これさ。全部食べられるんだよな? お前等…知らないぞ…食べられないって不満を口にしてもさ」
「「「余裕」」」
言い切りやがったので敢えて手伝わないと決め、俺と海は自分で注文した料理だけを手元にたぐり寄せてから俺達だけで食事を勧めることにした。
まあそこまでお腹も空いていないでのさっさと食べてしまおうと俺と海は手を付けるが、その間にもう既にエアロードとシャドウバイヤとオールバーは皿一つを空にしていた。
引く俺と海。
速すぎで引く。
語彙力が無くなりそうになるほどに引く、多分三十秒も経過せずにスパゲッティがまず消費された。
何々? 俺達こいつらにそこまで過酷な事を課したのか?
無間城の周りで敵の攻撃を引き付ける役目だが、そもそもそこまでじゃ無いと思っていたし、その後も結構食べているはずなんだが?
普段以上に食べているような気がして成らない。
そこまでの戦いだったのだろうか?
「明日はどこから探すんですか?」
「とりあえず中心地に向ってそこから探そう。簡単に見つかれば良いんだけど総当たりで探したら時間が掛かって仕方が無いだろうな…どうするか」
「何か探す方法でも見つかれば良いんですけど…寝るまでに幾つかアイデアを検討しておいた方が良いかもしれませんね」
「だな。何か手掛かりでもあれば良いんだけど…」
あの時だって竜達の旅団が案内したからこそ直ぐに発見できたのであって、今回はそうも行かないだろうか。
いや…出来ないわけじゃ無いか。
まあ明日になったら試してみよう。
「ジュリさん達とは何処で合流するんですか?」
「それも明日出たという連絡を受けてからだな。空港で来るのか、列車で来るのか、それとも飛空挺で来るのか。どのみち直通は無理だからな…一旦西の近郊都市まで車で移動してそこから飛空挺か列車での移動だろうな」
「直接これないって結構不便ですよね。南の近郊都市までは現在無間城が邪魔をしているし、あれは簡単には通れるようには成らないでしょう」
「だな。せめて飛空挺ぐらいアッサリ許可してくれないかな? 軍も随分慎重だよな…もう終わった事なのにさ」
「それが軍の仕事なんじゃ無いですか?」
「かもしんないけど…俺達だって結構忙しいのにさ。明日の朝までに残り三つのエネルギーを解放しないといけないんだよ?」
マジでやばいよな…移動するだけで結構な時間が掛かりそうな気がする。
ジュリ達と合流する前に俺は竜達の旅団を使った捜索方法を使っておいた方が良いかもしれない。
どのみち見つかっても中に入ってエネルギーを解放するのに時間が掛かってしまうだろう。
明日はその足で東の近郊都市へと向う必要があるんだ。
その上で更に探し出さないと儀式までに間に合うか分からない。
結構派手なスケジュールだと言えるだろう。
もういっそ今からでも探し出したいという気持ちが抱いたが、テーブルの上の料理の殆どを平らげて腹一杯にしている竜達を見ればそれは不可能だと言わざる終えない。
もう無理か…いっそ吐き出せばまだいけるんじゃという想いを飲み込む。
「終わったんだならさっさと出よう。すっかり夜も更けて遅くなってしまったし」
「まだだ! まだ追加のデザートがやって来ていない!」
俺は口元まで出てきている「まだ食うの?」という言葉を飲み込んで溜息を吐き出してから大きめの溜息を吐き出した。
まあ…良いか。
竜達がデザートを食べるのを待っている間、俺達は暇を持て余してしまったのだが、俺と海はその間ジッと食べている所を見て居ることにした。
スプーンでクリームを口へと運ぶところを見ても今のところ全く面白くないが、最初の方ほど勢いがあるわけじゃ無い。
そこを見て居るとやはり結構辛いのだろう。
なら食わなければ良いのにと思わなくも無いが、まあ…言っても無駄だろうな。




