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西の近郊都市 4

 レストランから出て行くと再び古い街並へと身を乗り出し俺は一旦時計を確認するのだが、まだお昼の一時過ぎであり今から行くにはまだまだ時間がありそうである。

 俺に続くようにケビン、ジュリ、海の順番に出てきて、俺の周りに自然と集まっていくのだが、そんなおりオールバーは「まだ食い足りない!」と主張し始めた。

 まあ竜の胃袋がその程度でアッサリ収まるとは思えないが、しかしこの辺りのレストランや料理店なんて基本似たり寄ったりの料理ばかりになる。

 と言う事で時間を潰すという意味も兼ねて俺達は一旦街の中心地まで移動する事にし、そのまま歩いて駐車場へと移動することになった。

 大きな駐車場へと足を踏み込んでいると、俺は携帯のスマフォが再び鳴るので一体何事かと思って画面を見てみると画面には「真上」というので俺は真上を見る。

 するとエアロードとシャドウバイヤが降ってくるので回避した。

 地面に『ゴツン』という鈍い音と共に二人はアスファルトの地面に激突する。


「何? 一体何事!? お前達さっきまで帝都プリンスホテルの最上階の高級レストランに居たんじゃ無いのか?」

「美味しそうなモノを食べているから! 奢って貰おう!」


 あり得ないという顔を全員でしているが、こいつら美味しそうなモノを俺達が食べているからという理由で帝都から車で一時間の距離をすっ飛んできたようだ。

 いっそのこと警戒態勢中で打ち落とされれば良いのに、と思ったのだがまあ口には出さないで居ることにした。

 しかし、もう既にフィッシュパイは無いしこれから食べるつもりも無いのだが、そういう風に説明したら「何処かで食べたい」との一点張りであった。

 どうやら俺の意見は完全に無視するようだが、まあ言うことを聞くとは思えないので俺は「あればな」と言いながら車へと乗り込む。

 ケビンの運転であっという間に中心地近くまで近付いてきたので、手頃な駐車場へと降り立ち俺達はそのままそこから歩き出そうと言うことになった。


「屋台とかこの辺は沢山ありますね…ほら。ありましたよ…フィッシュパイ」

「本当だ! ソラ!」

「本当に金の掛かる奴だな。高級レストランの料理じゃお前達の胃袋を掴む事は出来なかったのか? 相当金が掛かっていると思うぞ」

「あれはつまらん。マナーとか鬱陶しかった。食べ物はやはり屋台などでその場で食べるのが一番だ!」


 俺は「さいですか」と言いながら女店員にフィッシュパイを二切れほど注文、竜を見て「可愛い!」と興奮した女店員はジュースをおまけしてくれた。

 エアロードとシャドウバイヤはそれを嬉しそうに近くのベンチで座って食べ始め、俺はそこでようやく大人しくなった二人に溜息を吐き出す。

 するとケビンは別の屋台から唐揚げの様な食べ物を購入していた。

 ジュリは単純にジェイクの様なジュースを購入しており、俺はそれが美味しそうに見えたので俺はジュリにエアロードとシャドウバイヤを任せて購入するために歩き出す。

 ガタイの良い男性店員だったが、物凄い強面で声も非常に低く正直対峙しているだけで圧を感じてしまうが、俺は今までの経験上慣れてしまったので店員に「バニラシェイク」と一つ注文して受け取る際に笑顔を作る男性店員だが、無理矢理作り出した笑顔はまるで更に圧を強めているようにしか見えなかった。

 単純に恐怖しか対象に与えないのだが、この屋台大丈夫なのだろうか?

 この男性店員に任せているとこの屋台絶対に潰れると思うこの頃。


「ですがこの辺は屋台とかが多いですね…おや? ジュリ後であそこの洋服店に行ってみませんか?」

「良いですよ。私も気になっていたので」

「じゃあ俺達は別行動するから此所で集合で良いよな?」

「ええ。ではさっさと食べて見に行きませんか?」


 二人で楽しそうにしているとやっぱり女子なのだなと思うが、しかし時間になるまで正直暇でしか無い。

 ベンチに座って青空を見上げているとほんの数時間前まで死闘を演じていたとは全く思えなかった。

 そんな時睡魔が襲い掛ってくるので俺はベンチに身を預けてそのまま眠りについてしまう。



 ジェイドが何を願い、何を想って戦いへと向って歩いたのか今更になって詳細を知る手段など存在しない。

 しかし、眠りの中へと落ちていくと次第に見えてくる新しい光景、それは俺に再び疲れる瞬間が訪れたのだと認識させる。

 ゆっくりと目を開けると似たような家が並ぶ迷宮のような街並が広がる場所であり、前を見ても後ろを見ても全く同じ道のりしか見えてこない。

 とりあえず前に進んでみようと思って歩いて行くが、まあ…景色が変わらない。

 なんだろう…今度はどんな嫌がらせなのだろうか?

 そう思っていると俺と同じぐらいの背丈の白いTシャツと白い短パンをはいている真っ白い仮面を装着している少年が手招きをしていた。

 なんだろう…何処かで会ったことがあるような気がしてならないが、手招きをされている以上は逃げるという選択肢は存在しなかった。

 少年は俺をまるで道案内するように何度か俺の居場所を確認しながら手招きで道案内を続ける。

 そうして歩くこと十分ほどの場所に一枚のステンドグラスが見えてきた。

 一体何なのだろうと思って近付いていくと、白と青で出来たステンドグラスが発光し始め俺はその眩しさで目を閉じる。

 そうして目を開けると今度はまだ人として生きていた頃のジェイドと初代ウルベクトと思われる人物が何かを話している光景だった。


「どうしても意見を変えないつもりなのか? それは彼女の事はショックだったが…それを彼女が求めているとは思えないんだ」

「世界を平和にする方法が見えてこない以上は誰かが礎になる必要がある。いずれこの世界に現れる異能殺しを待っている時間は無い。世界には不死者が溢れている。次の才能ある人物が現れるという保証が無い以上は誰かが戦う必要があるんだ」

「だからって…君が不死者になる必要が何処にあるんだ!? 受け継いで生きていく事が何よりも大切じゃ無いのか? 百年、千年と受け継いでいけばそれは永遠にだって勝る最も強力な武器になる」

「私は……そこまで忍耐強く生きる事は出来そうに無い。とにかくコレは決定事項だ。今更意見を変えるつもりは無い。どうしても納得できないのなら殺せば良い」

「………そんな事…そんな事出来ない」


 初代ウルベクトは俯きながら立ち去っていくジェイド見送るしか出来ず、そんな初代ウルベクトの表情は何処か悲痛さを秘めていた。


「俺は………俺はそれでも信じたいんだ。受け継いでいく人の想いこそが永遠に勝るたった一つの方法だと。俺は証明してみせる! いつかお前の前に立ち塞がる人間は俺の思いを受け継いでいく人間だ!」

「そうか……期待しているよ」


 ジェイドは最後まで初代ウルベクトを決して見ようとはしなかった。

 すると仮面の少年が俺の目の前に小躍りしながら現れて俺に指さしそのまま指さした人差し指を初代ウルベクトの方へと向って向ける。


「似てる。君とあの人」


 そう言われてしまえばそうかも知れないが、それこそ子孫だからという理由な気がしてならない。

 それとも俺と初代ウルベクトにはそれ以上の何かがあると言うのだろうか?

 俺にはそんな事だけは到底思えなかったが、仮面の少年はケタケタと笑いながら次のステンドグラスへと案内する。

 今度は赤と白で出来ている燃えるような光景。

 眩い光は俺を何処へと向って誘うのか、それは光を浴びている俺にだって分かりはしなかった。

 ただ…導かれるように更に先へと。


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