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西の近郊都市 1

 崩壊する無間城から父さん達の手伝いを受けながら一緒に撤退していったのだが、結局撤退する中にジャック・アールグレイが現れる事は無かった。

 しかし、あのしぶとい奴のことだ勝手に撤退しているだろうと誰一人心配はしていなかったのでそのまま撤退して俺達は二時間後に帝都の空港へと着陸しているのだった。

 俺達は心配している案件を直ぐにでも払拭するために走って病院まで向ったのだが、看護師と医師と一部の患者がいるだけでレインちゃん達は居ない。

 ギルフォードが詳しく聞いてみるとどうやら俺の家まで帰ってしまったようで、俺達はタクシーで急いで自宅まで戻っていくと、玄関近くで元気良さそうにレインちゃんとアクアとブライトがはしゃぎ回っている姿を見た。

 どうやら無用な心配だったようで、無事レインちゃんは死領の楔から解放されたようだったが、では肝心の死領の楔は何処なのかと思ってみてみると、アクアが危なっかしく握っている真っ黒な杭がそうであると気がついた。

 俺が預かろうとしてみると後ろからジュリの「待って」という制止を受けてしまう。


「何? どうしたの?」

「ソラ君が握ったら杭が壊れる可能性があるあら別の人が良いと思う。異能殺しって底までコントロール出来ないよね?」


 俺は「ああ」と呟きながら受け取れない右手を握り直してどうしたら良い物かとふと思って見ると、右側からブライトが「僕が預かるよ」と言って握りしめてフラフラと飛び始めると、ジュリの背中から現れたアカシにびっくりして飛びつこうとするので、俺は急いでそれを阻止する。

 まあ勝手に敵陣に乗り込んでいったのだから怒るのも間違いが無いが、ここで面倒くさいので敢えて突っ込まないまま敢えて落ち着かせた。

 そこで、計画云々について詳細を聞きたいところだが、このメンツが知っているわけがなく俺は父さんにでも電話しようとスマフォを取り出した。

 すると後ろにある玄関のドアが勢いよく開く真面目な顔をしている父さんが現れた。


「最後の計画を二日後に決行することになった。それに伴い必要なモノが幾つか存在する。まずはソラの参加とガーランドの奥さん。死領の楔を持って帝城地下に来るようにとの事だ」

「…分かった。待って! 師匠の奥さんに説明していないけど…誰かした? 多分師匠自身全くしていないはずだけど」


 俺はふと周りを見るが全員が首を横に振って否定されてしまうと俺はそっと父親を見るしか無かった。

 すると父さんは「なるほど」とだけ呟いてそのままドアを素早く閉めながら「頼んだぞ」とだけ言って逃げた。

 そう…逃げたのだ。


「逃げるな! クソ親父!!」

「任せたからな! 父さんは儀式の準備とか後始末とかで身動き取れないから何も出来ないぞ! 良いな!」

「クソ!! こんな時に限って役に立たないクソ親父!」


 結局何処かへと消えていった父親に対して俺は罵倒の言葉だけを出来る限り飛ばし、俺は納得できないままに家の中へと戻る。

 さて…どうするかだが、そんな中でギルフォードがふと告げた。


「俺達は流石に変えるよ。このまま手伝える事はなさそうだし、そろそろ店を開けておきたいしな。預かったお店をそのままにしておく訳には行かない」

「そうか…そうだな。レインちゃんに関してはもう問題は無いわけだし」

「ああ。また何かあったら連絡くれ。ジャック・アールグレイじゃない。流石に駆けつけさせて貰うさ」

「分かった。何かあったら連絡するよ」


 俺はギルフォードと最後に握手だけして去って行くのを見守り、アンヌとケビンの方へと顔を向ける。

 この二人がどうするのかを俺は全く分からないのだ。


「私は…残ります。怪我人がいるという話ですし、最後まで見届けたいので」

「私も残ります。大統領がこちらにいらっしゃるという話ですし、まだ手伝える事がありそうですから。アンヌ同様に最後まで見届けさせて貰います。早速動きませんか?」

「そうですね。海君。お母さんはおうち?」

「それが少し前に帝都の西の郊外都市まで出掛けているらしいんです。何でもそっちにガーランドの別邸があるらしく、そこに墓があるとか。まだお墓が出来ていないから仮のではありますがお墓参りをすると言って」

「なら西の近郊都市まで行きますか。列車で直ぐだろうし」


 そう思って家から出て行き西の近郊都市まで行こうと南区中央駅まで移動した所で俺達は現状にショックを受けてしまった。

 なんと現状無間城の影響で列車も飛行艇も出ていないと言うことだった。

 実際真上を見てみても未だに軍用飛行艇が飛び回っている姿ばかり見受けるし、列車も無間城の残骸とか後始末とかであと二日ほど列車が動かないとかでバスやタクシーがドンドン駅前までやって来ている。


「さて…車で行きますか。高速道路で移動すれば一時間で着くでしょう。問題は車をどう用意して、誰が運転するのかだけど…」

「私が運転しましょうか? これでもエージェントとして働く以上は車の運転免許ぐらいありますし。ですが…用意する車次第では絞る必要がありますよ。それにお家族みんな連れても戻すなら…」

「一般車両だと足りないよな。ミニバンでも…無理か?」

「私だけなら安心ですが、説得する以上ソラと海はやってくるのは当然ですし、最低限でもジュリは欲しいですね。レクターは要らないからここに居なさい」

「辛辣!? 何故辛辣!? 今のところ俺何もしていないんだけど」

「存在が疎ましいのです。ここで大人しくしている事が今レクターが出来る最高のお仕事です」

「なら最低でもお母さんだけでも回収する必要があるな」

「ならガーランドさんの子供は後で軍の人に連れてきて貰ったら? 流石にそれぐらい仕事してくれるでしょう?」


 ジュリがそんな事を言うのならと思って父さんに連絡を飛ばすのだが、全く反応しないので流石に苛つき通話を切る。

 仕方が無いので俺はサクトさんの方に電話を向けるとものの五秒ほどで出てくれた。

 これが父さんとサクトさんの差である。

 俺はサクトさんに最低限の説明をしてみると、サクトさん自身は流石に無理だが他の人を明日のお昼頃に向わせると誓ってくれた。


「軍の人が明日のお昼に師匠の子供を回収してきてくれるってさ。俺達は今からやってくる軍用車両に乗ってそのまま向おうか」

「でしたら私は此所に残りますね。アクアちゃんを連れて行くわけにもいきませんし。此所でアクアちゃんの相手をしています。ブライトとアカシもどう?」


 ブライトとアカシも元気よく「残る!」と言ってくれるし、アクアもなんだかんだ言ってアンヌに懐いているので安心して任せることになった。

 軍車両と言ってもミニバンのような奴が来るが、流石にレクターが来るとぎゅうぎゅう詰めになるので大人しくて居ることになった。

 最後までブーとブーイングを続けて居たが、俺達全員は一切をかけて無視することにした。

 そのまま車に乗り込むわけだが、此所で問題が発生したのだ。

 要するに誰が案内するのかである。

 ジュリはそもそも車の運転なんてした事無いので詳細な案内は流石に難しく、海も運転免許証を取ったばかりでまだ運転したことが無い。

 なら運転したことがあり高速道路を走ったことがある俺が道案内するという話になり、運転席にはケビン、助手席には俺、後ろにジュリと海が乗り込むと言うことになった。


「そう言えば西の近郊都市ってどんな街なんですか?」

「えっと…基本は荒野の様に草木が少ない場所にある都市なんだけど、その代わり以外かも知れないけど大きな川が二つある街。実質上橋の上に家が沢山ある街かな。別荘地でも有名だったはずだが」

「まあ行ってみれば分かりますか…」


 ケビンの運転は父さんの運転より圧倒的なほど安定していた。


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