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夢幻を手に入れた者達 3

 俺とジェイドが同時に地面を蹴った瞬間地面が割れるのではと思われるほどの衝撃と共に地面が大きく揺れる。

 異能殺しの剣を斜め右下から左上目掛けて斜めに切り上げていき、ジェイドはそれを上からの斬撃で受止めつつ踏ん張って俺からの攻撃による衝撃を受止め、一瞬攻撃後に剣が浮き上がった瞬間に俺の剣を右側に弾く。

 そのままジェイドが突っ込んでこようとするのを俺は敢えて前へとツッコんでいきジェイドの攻撃タイミングを大きく逸らす事に成功した。

 するとジェイドが何を考え付いたのかと言えば俺の額目掛けて頭突きを決めてきた。

 やってくると思った瞬間に俺はその頭突きに頭突きで答えようと頭を強く前に突き出すと、俺とジェイドの頭がぶつかり合いお互いに後ろの仰け反る。

 蹌踉けながら両足を踏ん張るのに流石に少しばかり時間を要してしまったが、それでも俺とジェイドは殆ど同時に踏ん張る。

 そこからは同時に突き攻撃を相手目掛けて繰り出す。

 さながら西部劇のガンマンのような緊張感と共に繰り出された突き攻撃『送り火』はほぼ同時に衝突し合い結果後ろにお互いに後ろに少し吹っ飛ぶ。

 すると俺は上空に幾らか浮かんでいる…なんと例えたら良いのか…VRゲームに出てくるような感じの仮想ウィンドみたいな画面が浮かんでいた。

 それも二三個なんてレベルでは無く、軽く五個はあると思う。

 それは全て『REC』とカメラのマークが描かれているが、何? この戦い録画しているわけ?


「ああ。あれが気になるのか。別に大した物じゃ無い。気にすることは全く無い」

「じゃあ説明しろよ。大した物じゃ無いのなら気になるから説明しろ。全く気にしないなんて出来ないからな」

「あれは全ての異世界に放送するために記録術式だ。あれを通じて世界中のテレビや水面であれが移っている」

「なるほど。なるほど。全然大した事じゃ無いし! アンタなんて事して居るんだ!?」

「私が負ければ世界に希望が、君が負ければ世界は絶望が…分かりやすい構図だろう? 君が最後の希望なのだから」

「簡単そうに言ってくれるけど…これアンタが死ねば即止まるわけ?」

「ああ。私の命と連動させるように動かしているからな。私が死ねば術式も止まるという構図でおかしくは無い。しかし、今ので確信したが…やはり君の中に眠る『竜達の旅団』もとい『可能性の支配』はやはり私を殺す唯一の能力のようだな。アンリミテッドは使わないのか?」

「アンタはどうなんだ?」

「私の事は聞いているだろう? 私は使えないんだよ。異能を改造したら使えなくなるし…私の異能はもうこれ以上無く強くなりすぎている。正直因果律やその人の事象などを上書きするなんてそれ以上存在出来ないさ」


 そう言えば聞いていたような気がするが、正直なんかその辺の話は適当にしか聞いていなかった気がする。

 無論使うつもりではあったが、最初は様子見だと決めていた。

 と言うかまだジェイド自身が底を見せていない中で迂闊にこっちが底を見せるわけには行かない。

 アンリミテッド…異能の上限を解放して限界を超える唯一の方法だが、同時に自分の現状の底を見せてしまう行為でもある。

 最初っから全力で戦うときなら良いが、今のようにまず様子見と言った感じの戦いではまだ使うべきじゃ無い。


「因みに少し興味本位で聞くのだが…嫌なら答え無くて良い。君が可能性の支配で作った魔導はアンリミテッド状態で無いと使えないのかな?」

「ああ。基本アンリミテッド状態で作った魔導はアンリミテッド状態で無いと使えない。これはアンリミテッドの制約でもある」

「やはりそうか…難儀なものだな。自分で作った能力は限界を突破しないと使えないというのは…ボウガンが使いたがらないわけだ。あれはお前以上に自分の才能をあまり使おうとはしない男でな」

「あまり興味ないけどな。とくにボウガンの事については。何せ押しつけられた鍵の所為でとても疲れる女性に出会ったから」

「その代わり面白い女性だったろう? 一度会ったことがあるのだが…飽きさせない女性だよ。時折本気で面倒だと感じるときがあるがな」

「それには完全同意」


 と言うかジェイドはベルに会ったことがあるのか、そっちの真実が意外だったしベルはそんな事を喋らなかった。


「彼女も不便だな。愛している人が自分が愛しているという事を全く自覚して貰えないばかりか、存在しない恨みを勝手に背負わされているのだから。報われない恋心とはああいうことを言うのだろうな」

「報われない恋心か…」


 流石に同じ意見にはある。

 決してベル自身はボウガンを恨んでいないし、むしろこうしているときも話をしたいと願っているのに、当の本人が申し訳無いという気持ちしか抱いて居ないのだから。

 願わくばあの二人に納得のいく結末がある事を願おう。


「まあ、ボウガンが生きている事は間違いが無いのでね。もし君が勝つようなことがあればボウガンの事だけは気にしてやってくれ。あれは本当に不便な男さ。真面目で実は誰よりも責任感が非常に強い奴だ。裏切る度に自分自身の心を傷つけて生きているような奴だしな。もう十分奴は悩み続けてきたつもりだ。その分ボウガンは逃げてもいた。自分が立ち向かうべき敵からな」

「吸血鬼…あるんだよな? 吸血鬼を人間に戻す方法?」

「さあ? そんな事を私に聞かれても困るな。だが…吸血鬼はどちらかと言えば病気だからな。あれは。異能とか才能とかそういうレベルでは無く、異能レベルにまで浸食しかねないが、あれは基本病気だ。病という奴だな。だから吸血鬼になりそうになった奴の中には強い気持ちで跳ね返した者だって居る。まあ、君にはあまり関係の無い話だな。君はそれすら通用しないのだから」


 あれって病気なのか?


「血液の病気だ。もし専門家がいるのなら見せてやれば良い。まあ…大人しく捕まればという話だが。あれは逃げるのも得意な男さ。まあ…雑談はこの辺りで良いか。そろそろ頭痛も引いたしな。やれやれ不死者相手だからと言って容赦無く頭突きを決めて」

「だと思うなら剣術勝負で頭突きをしようとするなよ。反射的に返すしか無いだろう?」

「普通逃げるだと思うんだよな…来るかね…普通頭突きで」

「俺は頭突きで来るなら頭突きで返す。師匠からそう教わった。敢えて頭突きで返した方がダメージが低いと聞いた」


 ジェイドが「なるほど…」と呟きふと考え込むような素振りを見せる。

 因みに考え込んで居るような素振りを見せているだけで油断の二文字がまるで存在しない。

 ただ立っているような佇まいで呆けているように見えても全く隙が無いのではないかと思われる。


「確かに、下手に逃げるより突っ込んでいく方が助かる確率が高い場合もあるな。武術は攻撃する場所のポイントが重要だからな。そこを敢えて避ける為に前に進むというのはあるな。まあ…それが分かっているのなら敢えて対処する方法もある。そろそろ君の実力の底が見て見たい気がするしな…ギアを上げてみようか…」


 消えた。

 ジェイドが消えた。

 それが一番正しい認識だったと思う。

 消えたのだ…ジェイドが俺の目の前でそう思った瞬間俺は殆ど本能のままに右側に剣を置いてジェイドから来る斬撃に耐える。

 すると俺の視界に確かにジェイドが現れるのだ。


「ほう…この速度に反応したか。流石だな…因みに聞いておこうか。何処で知った? 私が考案したギアと呼ばれる高速移動術」

「知っていたわけじゃない。師匠から聞いたんだ。師匠も古い資料で見ただけだって言っていたよ。それを再現したと。まさか」

「私が作ったんだよ。かつてね」


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