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無間城の戦い 18

 カールはこれ以上語ることなど無いと言わんばかりに殺気をハッキリとアンヌに向け、アンヌもそれに答えるように二本の杖を構え直す。

 カールにとってはジェイドが全てであり、それ以上もそれ以下も無いという気持ちにきっとそれ以上の答えは無いと分かった以上アンヌにはこれ以上聞くつもりは無かった。

 沈黙が流れ、先に動いたのはカールである。

 一線の光がアンヌ目掛けて飛んでいき、アンヌはその光線を氷で出来た花形の盾を作って受止めている間に右側に走って回避、幾ら氷の盾に玄武の能力無力化を付与できても、受止める際の熱量で氷は溶けてしまう。

 完全に溶けきる前に右側に避けてカール目掛けて光線を二発ほど照射するが、カールはそれを天使の羽根で受止めた。

 小さい天使の羽根が十ほど空間を舞い、その一つ一つがアンヌが放つ光線を受止めるという理不尽な能力を前にカールが取った行動、それは空間の温度を下げるである。

 天使の羽根が次第に氷結し始めるが、そんな時天使の羽根が全部発光し始めその後一気に閃光と共に爆発してしまう。

 空間全部を破壊したのではと思われるほどの大きな爆発、恐らく側面の壁に付いている窓から炎が噴き出したであろうが、それでもアンヌは無事だった。


「咄嗟に氷のドームを作って受止めた=褒めても良い。どうして気がついたか聞いても良い=問い」

「…氷結させ始めた時は分かりませんでした。でも、貴方が今までずっとそうしてきたように熱線を放つタイプの能力を多用していると分かって咄嗟に思いついたのです。あれが爆弾では無いかと…」

「その通り=正解。一度に展開できる数には制限がある=精々二十まで」

「そして、数を増やせば増やすほど一つ一つの威力は軽減するのではありませんか? 数が増えて威力が増したり、威力は均一なら貴方は上限まで増やすはず。それをしないのは出来ないからです」


 カールは褒め称えない代わりに一枚の天使の羽根を作り出し、それを適当に投げる。

 するとふんわりと移動する天使の羽根は壁に衝突したところで大きな大きな爆発で周囲に瓦礫と衝撃と熱風を飛ばす。

 アンヌは咄嗟に氷の盾を貼って防ぐ。

 しかし、カールはそんな事とはお構いなしに今度は五枚作ってその内の一つを先ほどとは違う場所に向って投げた。

 すると先ほどとは多少だが威力が落ちていることが爆発の規模からして良く分かる。


「十一枚からは一気に威力が落ちる=残念。この部屋をぶっ飛ばす上での十分な数は十枚=それで十分」

「まだ制限があるはずです。連続での使用は難しいのでは無いですか?」

「ええ=正解。でも貴方相手にそんな遠慮は必要ないでしょう=問い」


 カールは残った四枚の天使の羽根を今度はアンヌ目掛けて飛ばしていき、アンヌはそれを大量の氷の粒で迎撃する。

 拡散弾のように飛んで行く氷の粒が四枚の天使の羽根を空中で迎撃、お互いに視界が爆発で埋まるが、そんな時カールはアンヌ目掛けて同じように拡散弾の様に光線を浴びせる。

 アンヌは敢えてその場から動かないようにし、氷で出来た花形の盾を二枚ほど重ねて防ぐ。

 着弾する度に能力が解除されるが、それでも着弾する際の熱量で表面の一部が溶けていく。

 何度も何度も飛ばしていくカールに対してアンヌは左右から高熱量の一撃を二発たたき込み、カールはそれを天使の羽根を作って盾代わりにする。

 爆発が光線の熱を相殺してしまうが、それでもカールが攻撃の手を休めることは無かったのだが、それを止めさせる一撃に打って出た。


 アンヌ自身の能力は何処まで行っても結局で高温と低温による攻撃しか無いし、それ以上もそれ以上の攻撃手段も存在はしない。

 雷を扱えるわけでも無いし、呪いのような力を発揮も出来ない、ましてや剣劇なんで出来るわけが無いのだ。

 それは同時にカール自身も同じで、彼女は何処まで行っても遠距離攻撃手段しか本来は持ち得ておらず、無論不死者である為にある程度は近接戦闘は可能だが、それでもその達人達からすれば素人に毛が生えたレベルでしかない。

 無論アンヌ自身が誰かから教わるというアイデアもあったが、旅をしている間にソラ達からはハッキリと言われてしまったこと。


『剣術にしても武術にしてもそうだけど、体を使うタイプの戦術はその人の才能面が非常に左右するからあまり結果が良いとは言い難いいんだ。教えても良いが、多分アンヌの場合俺達から教わらない方が良いと思う。付け焼き刃程度しか教えられないし、それも多分カール相手に使ってもむしろ弱点にしかならないかもしれない。教えても使わないことをおすすめするよ』


 アンヌはその時は「それでも少しで良いので教えて欲しい」と頼み込むと、ソラは少し考える素振りを見せた後とある戦術を教えてくれた。

 アンヌにでも扱えて、同時に戦術としては十分昨日するであろう戦術。

 アンヌは二本の杖を握りしめて駆け出して行き、拡散弾の様な光線攻撃を氷の盾を至る所に作って防ぎながら走る。

 走っている速度も決して速いほうでは無い、なので十分カールにとっては目で追える範囲だったことも合ってアンヌの行動は予想出来てしまう。

 カールは接近されたこともあってアンヌの周りから小さいが光の粒のような攻撃を無差別に叩き込む。

 これも小さいが氷の盾を作っては防ぎ、時には氷の壁を作っていくが、それでも無茶な行動故にかすり傷程度はどうしても残ってしまう。


 かなり接近されたと分かった途端カールは天使の羽根を作り出して空中へと逃れる。

 そして、胴体に何かが突き刺さる触感と痛みが走り、それが何なのかと腹の部分を見て見ると血の付いた氷が見えた。

 そっと後ろを見るとそこには氷のモーニングスターのような棘の生えた球体が鎮座していた。

 そして、氷を足場にして跳躍してから至近距離でカールの体を爆発させる。


「ハァ…ハァ……」


 咄嗟の苦肉の策。

 ソラから教わった幾つかの戦術、アンヌでも実行可能な戦術でもあったが、カール自身が油断していたこともあって以外と効果的な戦術でもあった。


『近接戦闘術と言ってもキチンと体を作っていない人間が使っても全く意味が無いから、この場合アンヌに合わせた戦術を教えるよ。まずは罠だ。罠は張るだけじゃ意味が無いんだ。罠へと誘導しなくてはいけないし、その罠をバレてはいけない。不要に走って接近していき、攻撃を防いでいけば敵の何割かは少し警戒して後ろに下がろうとするだろう。そこに棘の生えた球体でも設置しておけば罠に引っかかる可能性じゃ十分にある』


 だからこその罠である。

 無論これは誰でも通用出来るわけでは無い、ソラ達のように本来近接戦闘を得意とする人間に使ってもまるで意味が無いどころかカウンターに合うだけ。

 でも、カールのようにアンヌと同じく近接戦闘を不得意とする人間にとっては前に進むぐらいなら後ろに下がるだけ。

 本当の意味でカール対策の戦術の一つである。


『それで攻撃だけど、近接を行なうなら氷と言いたいが、これは罠に使った方が効果的だ。むしろ攻撃に使うならアンヌは爆発だ。それも杖の先に高出力の熱量を集めて保存、それを敵へと接触した瞬間に一気に破裂させる。これ以上に効果的な手段はあまりないと思う。だけど、この手法。基本的に敵が動かない事が前提だ』


 だからこその罠との併用技であり、アンヌがカール対策として講じた作戦の一つ。

 アンヌはそっとカールの方を見ると、口から血を流しながらも空を舞い、天使の翼を羽ばたかせて天使の輪っかを浮かばせているカールの姿。

 少々どころでは無いダメージを負っており、その傷は簡単には治らない。

 戦いは第二局面を迎えようとしていた。


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