無間城の戦い 15
妖精達全員をナノマシンで操る事はできなかったが、結果から見れば妖精王とやらをおびき寄せることには成功したわけだが、そこで妖精王は彼等が不死者であるとハッキリと断言した上で封印しようと試みた。
無論彼等ほどの手練れとなれば封印が不死者の弱点で在ると言うことぐらい分かりきっており、そのアイデアが出てくるときにはジェイドを除いて離脱していた。
では、ジェイドが逃げなかったのかと言えば彼は己が持っているチートまがいの能力が何処まで通用するのか確認しておきたかったのだ。
人体を木に変える事で永遠に植物に変えてしまうという封印術、ジェイドを完全に木に変えた所で妖精王はその瞬間に大樹に変わり果て、ジェイドは元に戻った。
因みに妖精王という人物を当初ジェイド達は美しい女性を予想していたが、現れた人物は妖精とは名ばかりの脂ギッシュの3メートルを超える巨体のおっさんであった瞬間「うわぁ…」と声を漏らしたジェイドとボウガン。
メメントモリは得に意見を有さず、カールはそんな妖精王に得に思う所は無かったようで二人に対して「妖精王を美しい女性と思うのは偏見だと思う=意見」とハッキリ答えていた。
「しかし、ボスの能力も大概チートだな。完全に封印されてからでも発動するんだな。それって能力としてはどうなんだろうな…」
「流石は閣下です=惚れました」
「君はずっと同じ事を言うな…? 陛下。周りの妖精達を」
「? おや? 妖精達は何処に行った? この辺に彷徨いていただろう? 食ったか? ボウガン?」
「食えば腹を下しそうな奴らを食うわけ無いだろう。と言うか食いたくない。あんな死体の状態で激臭を放つ奴らはこっちからご免だ」
「いいえ=否定。彼等はここに居ます=指さし確認。この辺に植えられている木に変わりました=謎」
「恐らくだが。これが彼等の本性なのだろう。木。これが妖精達の本当の姿で、その木が知性と奇跡を与えられた姿こそがあれなのだろう。それを与えていたのが妖精王なのだと思うぞ。その妖精王が木に戻ったことになる。だからこそ、妖精王は封印術で対象を木に変えるという封印が使えたわけだ。それも…恐らく使ったら本人にすら解除ができない」
「みたいだな。元の姿に戻っただけか…この森も静かになるだろう。良かった。良かった。これで自然が護られたことになるな」
「ボスは勝手な事を言って正当性を手に入れようとするな。危うくは妖精達を調べようとしていただろう?」
「まあ。結果正体が分かったんだから結果オーライだろう? さて…そろそろ出てきたらどうかな? お嬢さん。まさかこのまま隠れて逃げようとか考えて…いたか」
「逃げたな。完全に。何時から居た?」
カールとメメントモリが「さあ?」とだけしか答えずジェイドも無論知っているわけがない。
気がついたらいつの間にか付けていたと分かっていたが、てっきり指摘したら出てくると踏んでいたが、実際は逃げ出したという現実。
「しかも逃げ足が速いお嬢さんだ。一瞬しか見えなかったが人じゃ無いな?」
「人が数キロをあっという間に走って移動されたら流石に異能というレベルじゃない気がする。まあ居ないわけじゃ無いだろうが。気配を上手く消して、その上で走る速度が速いってなんでつけ回すって離しだしな」
「どうします=問い。閣下は彼女をどうするおつもりですか=問い」
「それを聞くと言うことはカールは彼女の正体が分かったのだな? そうだ。彼女は不死者だ。それも自然と生まれてしまった珍しいパターンだな。後天性が基本パターンの中で先天的に生まれてきた不死者は本当に珍しい」
「ボス。その場合死ねばやはり魂の循環には入らないのか?」
「いや…例外だな。求めているわけじゃ無いからこの場合は入るかも知れない。言い出したら始祖の竜とてある意味不死者だ。だが死後は生まれ変わったと聞いた」
「例外があるのか? 新参者としてはどうにも理解が遅くなる。人は魂という存在を得るだけ損だな」
「そういう考えをする限り貴方が人間を理解する日は来ませんね=絶対」
ジェイドが「確かにな」とハッキリと答えた。
しかし、この世界には妖精のように特殊な種族が沢山居るようだな。どれもが人間のようないわゆるヒューマノイドタイプをモチーフにしているタイプが」
「はい=そうですね。この様子なら天使や悪魔をモチーフにした存在も居る可能性があります=確認しますか?」
「そうだな。さっきのパターンがあるからな。綺麗な女性とかを予想して同じようなおっさんが現れたら流石に即殺害かもしれん」
「ボスは本当に不謹慎だな。だったら似たような感じの女性だったらどうする?」
「貴方が不謹慎という言葉を使いますか=疑問。それ以上に不謹慎=侮辱」
「……………」
「答えが出ないなら無視で構わないと思うが? 何故人間はそんな下らない事で簡単に悩むことができる? と言うか何故そんな会話をする」
「人間が元来馬鹿だからです=確定。これだから男は=全く」
「…………その時結論を出す」
ジェイドは全力で逃げた。
そして、天使達の王と言っても良い存在と出会った時似た感じの女性だった瞬間ジェイドは迷わず殺害した。
全く躊躇は存在せず、見るに堪えないモノを見てしまったみたいな顔をしていたのが全員にとって印象深かった。
「これ妖精達と同じパターンあらどうするつもりなんだ? その時も殺害するのかね」
「していたと思う。攻撃する手に全く躊躇が無かったから」
「口調だけは優雅でしたね=感想。口調だけはですが=そこだけ」
「全くだな。見た目は優雅さの欠片も存在しない化け物女だったな。引きこもりの女でもまだ見た目に気を使うと思う。引きこもりのニートのデブが女性だったらというパターンを目の前で目撃させられてしまった」
「凄いパターンだな。まあ目の毒ではあったが…あれで女性というのは流石に止めて欲しいのは分かるな。もし求婚してきたら流石にその瞬間に頭を吹っ飛ばす」
「貴女達は=仕方ありませんね」
「しかし、予想通りではあるがやはり居たなカールとは違うマジモノの天使」
「人をまがい物みたいに言うのは止めなさい=命令」
「天使の羽根に天使の輪。真っ白な簡単なドレスの様な服。正しく天使だな。なら悪魔もいそうだな。ボスはこの前の女が悪魔だと思うか?」
「悪魔だろう。此所を責めているときにそれとなく調べてみた。キューティクルという名前の悪魔らしいな。因みに可愛らしい感じの女の子との事だ」
ボウガンの目の色がハッキリと変わりカールはそんな二人をジト目で見つめるだけだった。
敢えて口に出して避難することは無いが、そんなキューティクルと出会った瞬間彼女は降伏した。
彼女曰く色々と手を打ったらしい。
それこそ現れた時から真っ正面から挑んでも勝てないと感じたらしく、妖精王の封印術などに期待をしていたが、どれも空振りに終わってしまった。
キューティクルは「死ぬのだけは御免被りたい」と提案し、仲間に入れて欲しいと言い出した。
ジェイドは得に拘る理由は無く、彼女の忠誠心を試すために「この世界の人間達を屈服させろ」と命令した。
キューティクルはこの世界の人間の世界を自滅へと追いやり、世界大戦をあっという間に引き起こした結果…人間達はジェイドに屈服する結果に終わった。
ジェイド達が四人揃って動き出し、皇光歴の世界と西暦世界が繋がる事件を経過してジェイド達は本格的に動き出した。
ボウガンが動いていたのはソラが生まれる数年前から出会ったことは言うまでも無い。