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無間城の戦い 14

 結果論だけをハッキリと告げる前にジェイドは当初の目的通りこの世界を滅ぼした人工頭脳を発見することに成功したわけだが、その人工頭脳がという化け物を相手にする際に作り出した姿こそがソラ達の前に立ち塞がったあの姿に他ならない。

 ナノマシンという技術を最大にまで活用した戦法は今までで一番スリリングな戦いである事はジェイド自身認めるが、結局の所でジェイドにもボウガンにもダメージを与える事は出来なかった、

 不死者を相手取るにはどうしても二歩も三歩も劣ってしまう事は間違いが無い。

 結果敗北してしまったわけだが、そんなメメントモリが提案した内容こそが「自分が軍門に下る」というもので、ボウガンはそんな話を聞いて疑いを持つことは間違いが無いが、ジェイドはそれを一言で了承した。

 正直メメントモリの当初の目的に自分達の目的が合うとは思って居ないし、最悪最後には裏切る未来しか見えてこなかったボウガンだが、それはジェイドも同じ事である。

 だが、ジェイドが生きている限り裏切るリスクはかなり低く、足を引っ張る可能性なら十分あるが、そんな事で自分を裏切れると思って居る方がおかしいとジェイドはそう想定した。

 その間カールは回収した人間達を地下空洞に隔離し、そこで社会形成が始っていく姿だけ確認後、メメントモリにバレないようにと地上へと出て行く。

 案の定メメントモリはカールがしていた一連の行動には全く気がついておらず、その場を後にすることに成功したわけだが、その後生き残った人類がではどうなったのかと思えば、案の定外へと探しに行くという行為だけは避けるようになった。

 最終的に集められた人間達は合計で二百人ほどに成ったのだが、カールとボウガンが交代で地下空洞を補強及び拡張工事をコッソリと行なうようになり三百年で千人を超える人口を作り出したのだ。


 人間を滅ぼすつもりが全く無いジェイド、あくまでも平和を維持する事と不死者達を封じ込めるという目的で動いているジェイドにとって人類を纏めて滅ぼすようなやり方はあまり容認は出来なかった。

 そうやってメメントモリの世界を乗っ取ってから約四百年が経過したとき、キューティクルの世界へと辿り着いた。

 悪魔が人間の悪夢を喰らう世界、人間が悪魔や天使や妖精などと共存している世界。

 そこの悪魔の女王と呼ばれていたのがキューティクルであり、実質世界の殆どは彼女の思いのままであったが、これは彼女が王政を強いていたわけじゃない。

 彼女はどちらかと言えば自由気ままをモットーにし、時に人に悪意を持って近付き、時に天使を唆して、時に精霊を騙して生きてきた。

 その過程で彼女は不老不死と呼んでも言い力を目覚めさせたわけだが、ジェイドからすればそれは偶然と言っても良い結果だったはずだと。

 最も不老不死を得てから日が浅い彼女ではジェイド達に叶う訳がないが、不老不死になった事でむしろ「この男達には勝てない」と察することは十分可能なレベルだった。


 結果キューティクルが選んだのは「他人に戦わせる」である。



 ジェイドがやって来た場所は奥深い森林地帯で、周りは霧が深く幻想的な雰囲気を作り出しており、正しく妖精でも出てきそうな雰囲気を出しており、カールは読んでいたはずの本をしまいそのままファンタジー小説へと手を伸ばす。

 ボウガンはこんな状況でも本を読もうとする彼女に感心すら覚えるボウガン、メメントモリは興味なさそうにジッと一点を見つめている。

 本当にこの場に興味が無いらしい事は間違いが無い。


「お前達は何時でもマイペースを崩さないな。こういう時は場の空気を楽しむというのはどうだ。小川の音、小鳥の鳴き声、深い霧と奥に見える妖精達。正しくファンタジー小説だな」

「? そう言えばなんか見えるか。あれって妖精だったか…まあ初めてじゃ無いから驚きはしないが」

「妖精は羽をもぎ取れば戦力を低下させることが可能です=弱点。もしくはこの森を燃やせば良いのでは無いでしょうか=弱体化します」

「発想が物騒すぎるな。天使の真似事をしている奴が言うべき台詞ではないと私は思うが?」

「機械に言われてもなんとも思いません=感情の無い化け物が」


 ジェイドの目の前までやって来た妖精達はジェイドに対して「警告します!」と声を大きく張り上げて告げる。


「この先に進む事は許しません! 今すぐ引きなさい!!」


 ジェイドは「この先に何かあるのか…」と呟きながら先に進もうと試みると、妖精達は槍を取り出してジェイドへと襲い掛ろうとするが、ジェイドの体に無数に刺さる槍だったが、その槍はどれ一つもジェイドにとって致命傷に成る事は無く、むしろその槍を全て抜き取る妖精達の体から大量の血が噴き出していく。

 カールは「自業自得ですね=無様です」と言って本に意識を向ける。

 ボウガンもイマイチ手伝う気が起きない。


「妖精王に伝えるんだ! 此所は我々が抑える!」

「し、しかし…!?」

「ドラマがあるな…まあ感動することは無いが。まあ伝えれば良いさ。どのぐらい強い奴らがいるのか少しばかり気になるしな」

「森を燃やすか? その方が早いと思うが?」

「いや…自然を大事にしたい。以外とこういう景色は嫌いじゃないからさ。お前達も自然を大事にしながら戦えよ」

「……面倒だと断言する。森を燃やした方が制圧速度や効率上良いはずだ」

「人間らしさを残せと言っただろう? 効率を重要視すれば人間らしさを失う。それに楽しめ…永遠を生きる存在が早く制圧してもろくな事が無い」


 そう言ってジェイドは襲い掛ってくる妖精達の攻撃を敢えて避けないまま何度も突き刺さされるが、無論ジェイドの能力上即座に回復してはそのダメージを相手に押しつける以上そもそも勝ち目が無い。

 気がつけば妖精達の死体だけがその場に残っている。

 使命の為に命を容赦無く犠牲にする妖精達、血のにおいが少しばかり気になったのかカールは本をしまってからジェイドを追いかける。


「匂いがキツいです=耐えられない」

「確かになんだこの…妖精ってこんな匂いを発するのか? あいつらの血がこんな異臭がするとは知らなかったが? 今まで他の世界でも戦ったがこんな匂いをしていたか?」

「私が記録している以上は無いはずだ。人間の腐臭とは違う匂い、硫黄に非常に近い匂いだろうが…あれよりよっぽど酷い。生身の状態では特に問題が無いから多分だが彼等の死んだから血や肉が一気に腐食したのが分かった。この世界の妖精は腐食が一般的な生物よりよっぽど速いようだ。それと…」

「? なんですか=疑問」

「その腐食した際に発せられる匂いや空気が周囲の植物にダメージを与えているようだ。もしかしたらここの妖精達を殺せば森を殺す事になるのでは無いか?」


 ジェイドが足を止めて「何?」と聞き返す。

 匂いが凄いという事は当初から気がついていたが、まさかその匂いなどが植物に悪影響があるとは思わなかったジェイド。


「何故だ? 森を大事にしているのなら何故殺すようなことを考え付く」

「閣下恐らくですが=答え。彼等の命が同時に森の命なのでは無いでしょうか=疑問」

「なるほど。森と共に生まれ森と共に滅ぼすという考え方故か、どうするボス? このままだと森が滅びるぞ」

「この森を生かせば良いのか? その程度で良いのなら簡単だ」


 メメントモリがそんな事をハッキリとジェイド達に告げ、ジェイドは「言って見ろ」と聞くとその内容に「面白い。やってみろ」と進める。

 メメントモリは両手をそっと目の前に広げてから何かを散布し始めた。

 それがなんなのかジェイド達には分かっていた。


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