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無間城の戦い 13

 メメントモリによる人類崩壊という状況を最初っからジェイドが理解をしていたのかと言えば、それは無いとハッキリと誰もが言えることだし、何よりもジェイド自身取り立ててそれをハッキリと理解して居たわけじゃ無い。

 というよりは最初にボウガンが先手を打ったときはまるで異変に気がつけなかったのだが、その後襲われた人間達が取った行動は悲鳴を上げて逃げるでは無くジェイド達を見つめたまま立ち尽くしていた。

 カールは素直に「気持ち悪い」と言い、ジェイドを挟んで反対側に立っているボウガンが「襲った俺達が言えば終わりだな」とハッキリと告げる。

 ジェイドは直ぐにこの状況がおかしいと言うことはハッキリとわかり、同時にその理由を探ろうとカールとボウガンにそれぞれ命令を下した。


「ボウガンはとにかくこの街を崩壊させろ。五分でな。カールは人一人を回収してこい」


 二人は指示通りに動き出したとき、ボウガンは気になる塔のような建造物を発見し、それを火球を五極の一つである弓の能力で崩壊させたのだが、その時ジェイドから連絡を受けた。

 カールが人を拉致して脳内を探ったところ、脳内が大量のナノマシンで浸食されており、そのナノマシンを大量放出しているのが先ほどボウガンが崩壊させた塔なのだとか。

 ジェイドは「不死者にまで通用するとは思えないが、念の為だ。悪影響が起きる前に全部瞬時に破壊しろ」という命令を下した。

 ボウガンは街を壊すのに四分十五秒という早さで行ない、得に塔の破壊は特に重点的に行ない。

 その際にジェイドは五十人ほどの人間達を確保、荒廃した大地の奥に発見した大きな地下空洞へと運び込み彼等を調べ始めた。

 そして分かった事、それはもう本当の意味で人類というレベルの存在は居ない事である。

 もうこの世界は人類が崩壊しており、今では機械があらゆる生命体を支配しているのだと。

 機械による支配された世界、それがどういう経緯で行なわれた事なのかと想像するしか出来ないメンバー達。


「この世界ではAIが暴走したのでは=答え」

「それはない。合理的な行動が取り柄の機械が知性を暴走させるなんて思えない。ならこの世界の機械が生命体を滅ぼしたのも合理的でその上でキチンとした道筋があったはずだ」

「例えば人間が命令したとか?」

「はぁ=疑問。人類が自らを滅ぼせと=問い」

「いや…ありえん話じゃ無いぞ。例えばそうだな…何処かの国を滅ぼそうとした過程で命令された結果ならあり得ない話じゃ無い。要するに機械が世界を滅ぼすというのはそれは人間が原因以外にあり得ないんだ。だから在るはずだ。最もボウガンのアイデアはいい線をいっているとは思うのだが、だとしたら崩壊のさせかたが奇妙だな」


 カール相手にマウントを取ろうとするボウガン、ドヤ顔をしているボウガンに露骨に嫌そうな顔をするカールを完全に無視するジェイド。


「でもそうですね=ボウガンウザい。ボウガンの答え通りならナノマシンを使って崩壊するなんて起きません=あり得ない」

「マウントを必死で取ろうとするなよ。性格悪いぞ。ああ。元からか。だが人類が原因であると考えて何を考えていたらこういうことになるのか少し不思議だな」

「ああ。ナノマシンで人類崩壊なんてある意味現実味が無くて怖い気がするな」

「閣下にも怖いという感情があるのですね=意外です」

「あるさ。私も元々は人間だよ。それより。このナノマシンはあの塔から放出させているようだが、そもそも完全に生命体を支配しているこの状況でまだ必要なのかは謎だな。まさか私達の来訪を読んでいたわけじゃ在るまい。ナノマシンという技術の特異点と言っても良い産物を作り出している存在が、今更異能という奇跡に頼るとも思えない」

「まあ機械の様に完全に生身を宿す事が出来ない。魂という概念を理解する可能性が低い存在が異能を見つけるとも思えない。異能とは結局で理解も概念の把握も出来ない存在だしな」

「その通りだ。あれは魂とかそういうレベルと同じだ。合理的という言葉で動く機械には不可能に近いレベルであり、同時にそれを理解し再現したらそれはもう機械では無く生命体と言えるだろう。それこそ機械生命体と言える。それは立派な一つの命だ。魂を己が肉体に宿す人間と言えるだろう」


 それを機械とは絶対に言わないとハッキリと断言するジェイド、カールとボウガンも同時に同意する中、ジェイドは思考する。

 この世界を制圧するのにさほど時間が掛からないと分かってしまった現状、力で押せばこの世界はあっという間に制圧出来る。

 だが、それではこの世界なんて放置すれば良いだけの話なのだ。


「このAIに会ってみたいな。何を考えてこのような状況を放置しているのか、何を思い世界を滅ぼしたのか、そもそも世界を滅ぼされたという自覚は存在するのか。それはキチンと聞いてみたい気がするな」

「ボスは自由気ままだな。勝手な事を言う。ここに居る人間はどうするんだ? もう脳神経が完全にナノマシンで制圧されている状況では何をしても元に戻ることは無いのだろう?」

「いいえ=否定。元に戻すだけなら簡単です=可能。私に任せて貰えるなら可能=どうします? 閣下の意見に従います=問い」


 ジェイドは「フム」と口元に右手を添えて考え込んで見る。

 正直に言えば放置しても構わないが、正直ジェイドの中で結論が出ていない中完全に放置も出来ないが、例えここに在る集まっている人間達を元に戻しても外に出てしまえば同じ事だ。

 ジェイドの最終目標が決して人類を滅ぼすという事では無く、あくまでも「停滞した毎日」と「平和」である点から正直に言えばこのAIとは理解出来そうに無かった。


「それに異能殺しが勝つ未来もあり得るよな? ならやはり対策を講じておくべきか。私も人間を滅ぼしたいわけじゃ無いし」


 ジェイドが聞えないようにボソッと呟いた内容はカールやボウガンには聞えなかったが、ボウガンはその際に漏らした『異能殺し』という項目だけはハッキリと聞えてしまった。

 未だ諦めていないジェイド。

 ボウガン自身もその時を待ちわびている。

 だが、今は関係ない話だと敢えて口にはしないと態度にも出さない。


「カールは人間達を元戻してやれ。私とボウガンは各地で崩壊させながら人間達を幾つか浚っては此所に戻す。この大きな地下空洞でちょっとした社会を構築させよう」

「人間に文明シュミレーションでも行なうのですか=問い」

「ああ。カール人間達に対してバレないという事は可能か?」

「はい=断言。ですがどうしてかと聞いても良いですか=疑問」

「俺達が関わったと分かれば余計な知識や疑問を抱かせるだろう。社会を再構築させるのに余計な知識は付けたくない」

「だがボス。それで元に戻しても外に出ればまた元通りだぞ。いずれ社会を再構築するなら閉じこもった空間に入れておけばどんな理由を付けても禁忌を破る人間は現れるぞ。そうしたら結果的に同じ事の繰り返しだし。例えどんな結果に終わっても戦う力ぐらいは与えた方が良い」

「そうだな…良し。カール耐性は作れるか? ナノマシンに対する耐性。お前の力なら可能だと思うが?」

「はい=断言」

「ならナノマシンを除去後、ナノマシンに対する耐性を付与。その後生まれてくる人間達にも付与するようにして欲しい。あとそれを教える何らかの役割も必要だな」

「気が多いことだ。メモでも残せば良いんじゃ無いか? 直接接触できないのならそれぐらいしか出来ないだろう? 後は戦う手段と方法を残しておけばいざとなったら外に出て戦うさ」


 ジェイドは「ならそうしよう」と笑った。


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