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無間城の戦い 12

 メメントモリに出会ったのは一体いつ頃だったのかと言えば、ソラ達との戦いから約五百年前の事だった事は間違いが無い。

 機械によって人類が繁栄していた世界で生まれた人工頭脳であるメメントモリ、合理的な判断を下していく彼の前に人類の怠惰は衰えを見せることは無かった。

 一度人類が楽をするという事を覚えれば、何処までも堕落すると言う事は歴史が証明してきたことで在り、同時にそれもまた人間の心や欲の問題なのだろうと誰もが思う。

 奇跡だってそうなのだ。

 一度奇跡という甘い蜜を覚えてしまうと大概の人間はその蜜の前に「次も…」や「もう少しだけ…」とついねだってしまうもの。

 実際メメントモリの世界の人類はそうやって楽な人生ばかりを選んでメメントモリに任せて居た時、人類は愚かな領域にまで踏み込んでしまった。

 それは人工頭脳の人間へと近づけるという前代未聞の領域で在り、それはもはや魂の複製と言える領域だろう事は間違いが無い。

 その世界はあらゆる全てを機械で証明できてしまう、機械で代用できてしまえたからこそ考え付いた事だったのかも知れないが、同時にそれこそがその世界の人類を崩壊させるのに時間を掛けなかった。

 一度メメントモリが人類という根底にある『魂』という領域を知ってしまう機会を得たが、残念な事にそれを理解するという結果には成らなかったのだ。

 だが、不完全とはいえ知ってしまった事は後に欲は無い影響を与えたことになる。

 その後魂の理解に失敗してしまった人類は何を思いついたのかと言えば、彼等は『人間の複製』を考え付き、人間を知ったメメントモリにそれをさせようと考えたのだ。


 人間の魂を理解させようとして失敗し、今度は人間を作らせようとした彼が何を考えたのかとジェイドが思考したとき割と彼はアッサリと答えを出した。


「彼等は暇だったのだろう。要するにやることが無くなり、やりたいことを見つけることが出来なくなる。研究職の人間がある程度行き着けばその先は非人道的な道か危険な道にはなるさ」


 そう。

 彼等は危険な道へと足を踏み込んでしまったのだ。

 上手く行き過ぎていたからこその危うさだったのだろうが、彼等は「きっと失敗しても大した事は起きない」と高をくくっていたのだろう。

 メメントモリは人間を作り出す事には得に何を示さなかったのだが、問題は作り出した人間は魂と呼んでも言い部分を持ち得ていなかったこと。

 所詮は人工的に作り出した生命体、魂というべき部分が不足していたのだから。

 経験を積ませないといけないこの人工的に作り出した人間達、メメントモリがどう考えたかと言えば、メメントモリはその作った人間達を自分のターミナルユニットに変えたのだ。

 表向きだけでも作ったことにしてしまった。

 いや…彼等のオーダーを考えたら人間と言う形を作った以上は十分果たしており、メメントモリからすればより人間を理解したら『魂を理解する』という部分を達成出来ると考えたのだ。

 一度下れた命令が完全に撤回された訳では無い現状、メメントモリは考えると言うことを決して止めたわけでは無かった。


「私からすればメメントモリはいずれは人間を作ろうと試みたはずだ。そういう意味であくまでもあの世界の人間達はそのステップを早めたといえるだろう。所詮はその程度だ。彼等は順序を早めた。理解という順序を…崩壊の順序をな。どのみち最初の『魂の理解』という部分を命じた時点で終わりだったはずだ」


 ジェイドはそう考える。

 最初の時点で十分間違っていたのだと。

 擬似的な人間の再現を何故彼等が行なおうと考えたのかなんて崩壊した今分かるわけが無いが、ジェイドの予想通りなら単純な知的好奇心だったのだろう。

 要するに自分達では考え付かない『魂』という見ることも感知も出来ない部分を知る。

 それだけの理由。


「愚かなものさ。奇跡を介在させない方法で魂の理解など崩壊を進めることしか出来ないというのに。知性の固まりでも在り、同時にその究極の理解こそが魂で在り、それを機械にさせようというのがそもそも間違っている」


 メメントモリは人間に混じることで人間を知る事になった。

 誰かを見下し優越感に浸る者達、誰かを憎みながら怒りを蓄える者達、楽をしようと他人を利用する人間達など様々だったが、そんな人達を見て聞いて感じる中でメメントモリが感じた疑問。

 何故人間は合理的な判断が出来ないのか?

 何故人間は色々な考え方を持つのだろうか?

 社会生活を行なうくせに、集団生活が出来るのに、どうして人間はバラバラの考えを抱き、争い奪い合うのか。


「この辺からおかしくなっていくのが分かるな。中途半端に魂というべき部分に触れてしまったばかりに疑問を抱くようになり、同時に機械としての「どんな問いにもキチンと答える」という矛盾をはらむようになった。さあさあ。こうなるともうおしまいだ。エラー続きのコンピュータが何を考え何を思うのか」


 メメントモリは徐々に人間と言う個体そのものを更に知ろうと試みようとしていたのだ。

 魂を理解が全く出来ないメメントモリに取って人間の中にあると言われている『魂』とはどんな存在なのか、それは人間の中にまみれて生きる事では得られなかった。

 なら人間そのものに自分と同じにしてしまえばそれが可能になるのかも知れない。

 しかし、人間を作って入り込むのと、そもそも生きている人間にメメントモリをインストールするのとでは難易度がまるで違う。

 少なくとも当時のメメントモリでは解決できる方法なんて無かったが、彼は研究者達の研究内容を見て思いついてしまった。

 それこそが『ナノマシン』である。


 ナノレベルにまで縮小されたマシンを微量ではあるがまず研究部署の中に撒いていき、それが長時間を掛けて人間の体内、取り立てて脳細胞へと至ることが出来れば人間と言う種を理解することは可能ではと考えたのだ。

 メメントモリがナノマシンを研究部署へと撒くのにそう時間は掛からなかった。

 誰一人最後まで違和感を抱くこと無くメメントモリという人工頭脳という意識に集められていったのだ。

 そう…少しずつ人間の脳細胞同士が、他者の脳が繋がり一つの巨大なネットワークが完成する。

 それが一つの研究部署出会ったことが致命的で在り、メメントモリ次に街中にナノマシン放出器を設置していき、日常生活を送る人達全員の脳をネットワーク化してしまう。

 気がつけば世界中に居るあらゆる生き物は全てメメントモリが管理できるようになった所で世界に争いは無くなった。


「私がしたい事と同じだが、私はメメントモリにそれをさせる気は無いよ。私とメメントモリでは計画の詳細や結末がやはり多少は異なるしね。さて…それはさておき。いよいよ魂を理解するという過程から人類を…いや世界を滅ぼしてしまったメメントモリ。いわゆる人間どころかあらゆる生命体をナノマシンで支配したわけだ。その辺の蟻まで…全部だ。これは恐ろしいと言えるだろうな」


 そして知る。

 『魂なんて物体は存在しない』という機械としては真っ当な結論に、人間があると感じるのは『感受性の豊かさ』が原因なのだと。

 合理的な判断が出来ない人間は世界には要らないと判断し、彼は人間を複製して人間の社会は擬似的に再現され、効率的な人としての生活の再現をさせた時それは…ジェイドは現れた。

 爆炎を一気に上げて現れた三人の化け物はメメントモリにとって人であって人では無い者達…不死者達は容赦無く襲い掛ったのだった。

 ボウガンが右手を向けて放った火球は人という存在を一瞬で蒸発させたのだ。


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