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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫~最強の師弟が歩く英雄譚~  作者: 中一明
シーサイド・ファイヤー≪上≫
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意地と遺児 2

 商店街の賑わいの正体を見つけ出そうと、レクターと一緒に商店街の出入り口の方へと足を延ばし、身を精一杯伸ばしてのぞき込む。

 しかし、特に目の前の風景に変化が訪れるわけが無く、俺達はどうにか騒ぎの中心を見たいという想いで近くの非常階段で建物の屋上めざして駆け上る。

 どうにか屋上までたどり着き、屋上と隣の建物の屋上の間にかかっている鉄の板のような橋を渡りながら人混みの中心目指して歩き出す。

 正直足場の悪い中を歩いているのだが、俺達からすれば随分マシな足場な気がする。

 これが三年以上前なら正直躊躇うような足場だ。


 歩いて五分ほど掛かって辿り着いた人混みの中心には、青白い肌の男性が倒れており、その周りを警察と思われる男性が二人組で囲んでいる。

 青白い肌の男性が既に死体だとぐらいは分かるのだが、ここからだと死体の具合が全く分からない。


「漁師かな?それとも観光客かね?」

「どうだろうな。服装的には特に目立つような要素が無いしな………でも、体格的に漁師は無いだろ。結構細身だし」

「う~ん。そうかな?なら……観光客とか?」

「まあ、その辺が妥当なラインなんだろうな」


 青白い死体の首過ぎに斜め傷がある気がするので、俺は顔を前に覗き込むと確かにその傷があると気が付いた。

 結構鋭い傷なのだが、おかしなことにそれ以外に目立つような痕が見えてこない。


 斜め傷しかできない理由、それは暗殺しか考えられ無い。


「これは事件だ。斜め傷以外に目立つ傷跡が無い」

「という事は……この街で人殺し?」

「だけならいいけどな。暗殺者がこの街をうろついているのなら最悪だぞ」


 暗殺者としてのレベルにもよるが、これだけ人がうろついている状態で誰にも気付かれず、一撃で殺す事が出来る実力者なんて想像するだけでも寒気がする。

 俺達としてはジュリの元まで戻ろうと来た道を戻っていくのだが、その途中の足場が突然崩れてしまう。

 俺は地面まで一直線に落ちる自分の体を両足で壁に張り付かせる為に魔導『竜の欠片』を発動させる。

 鎧の足裏に力を集中させ、壁に張り付き一旦落ち着く。

 下の方を眺めるが、鉄の板が真ん中から真っ二つにされているように見える。


「大丈夫?」

「ああ、でも………偶然じゃないぞ。このタイミングで真っ二つになるなんて……」


 どうやら鉄の板が壊れた音が周囲に人間を呼び出しているらしく、目立つ前に立ち去りたいところなのだが、人混みの反対側に視線を移した瞬間それが視界に映った。

 俺同様に壁に張り付いている黒服の人間が其処にはいた。


 黒い長袖のフードと黒いズボンをはいており、顔はフードとサングラスで完全に隠れており、両腕は長い袖に隠れている。

 体系はスレンダーで特に凹凸が無い体系をしており、俺の方をじっと見つめている。


 正直ここからでは女性なのか、男性なのかが全く分からなかった。


「これで死なないとは………さすがに英雄は違うな………では……これはどうかな?」

「お前………誰だ?」


 フードの人物は俺の右目目掛けてナイフを投げつけてくるのだが、俺は体を逸らして回避しつつ、上を目指して跳躍するのだが、フードの人物はその動きを完全に見切っていたのか、俺の進路上に姿を現し俺の体を蹴っ飛ばす。

 下に落下する俺の体を俺は壁を蹴る形で建物隙間を移動して行く、とにかく戦いやすい場所を目指すべきだという直感で体を動かしていく。

 後ろから追いかけてくる音だけが近づいてくるのだが、俺は振り返ることなくとにかく走る。


 何とか水路まで逃げ出し、俺は跳躍しながら後ろを振り返ると俺の真ん前にフードの人物が居た。

 俺は緑星剣を呼び出して剣で斬りかかる。

 フードの人物は攻撃を空中で回避するのだが、その回避体制がありえない様な動き方をしており、まるで空中で飛び回っているように見える。


 俺は何とか動きを見切ろうと、建物の壁に着地して再び斬りかかろうとフードの人物めざして近づいていく。

 フードの人物は横に移動して行き、途中で動きを止まってそのまま俺目指してナイフで斬りかかっていく。


「ワイヤーか!? あんたワイヤーで空中で動きを切り替えっているんだな」

「……ほう。それが分かるか。やはり場数を踏んでいる人間は違うな」


 俺達はお互いに距離を取ろうとするのだが、フードの人物の進路上にレクターは突然現れてフードの人物の背中を思いっ切り蹴り飛ばす。


「!? タイミングを見計らっていたという事か?君達の戦闘能力を見誤っていたようだ。少々本気を出してみる事にしよう」


 男はフードを脱ぎ去り、短めに刈り上げている髪の毛が露見し、サングラスを脱ぎ去ると、金髪と額にあう痣が何かの模様に見えてくる。

 禍々しい模様に神経が集中していくのだが、サングラスの奥にある青い瞳は金色に染め上がっていく。


 別の壁に張り付いているレクターも目にもその姿が写っているのだが、これは呪術なのだろうか?それとも魔導なのだろうか?


 男は強烈な目つきを俺とレクターの方に向けると、俺の視界内から姿を消すような速度で俺に近づいていき、俺の緑星剣の腹に男の拳が叩き込まれる。


「ほう………良く攻撃を受け止めたな。君に恨みは無いが……依頼主は君に死んでほしいそうだ」

「勝手な話だな。だったらあんたを捕まえて誰の依頼なのかをガイノス軍に調べてもらうさ」


 俺は男を蹴っ飛ばし、レクターが男の後ろを捕らえるが、男はワイヤーを使って体を反転させレクターから攻撃を受け止める。

 その隙に俺が男の背中目掛けて攻撃を仕掛けるのだが、ワイヤーが動きの邪魔をしてくる。


「中々な動きだ。学生とは思えないな………最近の学生はレベルが高いのか?」

「この状況下で話を振ることが出来る余裕があるんだな」


 俺はワイヤーを緑星剣で切り裂き、同時にワイヤーを逆に利用して建物の壁に張り付く。

 レクターは男の体を蹴っ飛ばして移動して行き、男はレクターの方を追いかけようとするので、俺は緑星剣を男の進路上目掛けて刃先を向ける。

 息を吸い込み意識を剣先に集中させる。


「伸びて広がれ!!刺殺(しさつ)(たば)!!」


 俺の叫び声と共に緑星剣から勢いよく剣が束上に広がって男に襲い掛かっていくのだが、男はその姿を見た途端素早い動きで刺殺の束の攻撃範囲から逃げようとする。


「逃がすか!ラウンズ!」


 騎士人形を呼び出して同じく刺殺の束による追撃攻撃を仕掛けていく。

 複雑に広がる刺殺の束の攻撃によって退路を塞がった男の周りに刺殺の束による攻撃が集まっていき、何本もの剣が突き刺さっていくように思え、同時に大きな爆発音と爆炎が広がると男と思われる『何か』が水面へと落ち込んでいく。

 俺達はその『何か』を水面を大きく揺らす瞬間を目視で確認していた。


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