二人の英雄 0
始めまして中一明と申します。少しでも面白いと思っていただければ感想、評価、ブックマーク、レビューをしていただければと思います。
デワデワ。開演とさせていただきます。
皇光歴の暦とする世界と西暦を暦とする二つの世界は混じり合った。
隔てられ交わる事すらなかった世界は、二人の悪によって繋がり合い、星屑の英雄の手によって一時的な平和を手に入れた。
諦めないことで進み続けてきた星屑の英雄『ソラ・ウルベクト』は元同級生である三十九人の犠牲によって前に進むことを選んだ。
魔導と呼ばれる力と、呪術と呼ばれる呪われた力がぶつかり合う物語はここから始まる。
ソラ・ウルベクトは海洋同盟の首都ジャマイルの四十五階建ての国会ビル、その壁に両足を張り付けて立っていた。
日本人特有の黄色人種の肌も、黒い髪も全てが緑色の竜を模した鎧に隠れており、右手には片刃直剣の『緑星剣』が握られている。
ソラがマスク越しに睨みつける先には海洋連合軍特有の真っ青なボタン式の軍服、上から防弾チョッキと額当てのような防具を付けている赤い髪の男性がいる。
睨みつけるような鋭い目つき、両手に両刃直剣を逆さ持ちにしており、ソラと同じようにビルの壁に張り付いて立っている。
「どうしてこんなことを?」
ソラの尋ねる声はどこか震えているように思え、同時に真正面に立っている男性は特に気にした様子もなく、尋ねられた言葉に眉一つ動かさない。
「我々の悲願だと言っただろ?」
「この故郷を滅ぼすような行動が?」
「そうだ……我々はずっと耐え続けてきた。君こそどうして関係の無いこんな国の為に戦うんだ?」
海洋同盟はソラにとっては他人同然の国、しかし今必死にこの国の崩壊を防ごうとしている。
「………英雄だから。俺は星屑の英雄だからな。俺は俺の英雄譚があるんだよ。目の前で苦しんでいる人がいる、この国の存続を願っている人がいるんだ! だから戦うんだよ」
「そうか………ならここで君の英雄譚は終るんだ」
二人は同時にビルの壁を蹴り、ちょうどビルの真ん中でぶつかり合う。
海洋同盟中で争いの火蓋が切られるのだが、物語は一週間前の七月下旬までさかのぼる事になる。