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小料理 タヌキ屋 4  作者: まんまるムーン
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7




 私は全身に鳥肌が立って、その場から逃げなければと思った。


周りを見回すと、さっきまであれだけ賑やかだった商店街には、人っ子一人いない! 


そして普段は街灯が灯って夜でも明るいはずなのに、だんだん真っ暗になっていく! 


私は全速力で走った。


 逃げなきゃ!

 

 捕まったら終わりだ! 


走りながら恐る恐る後ろを振り返った。ものすごい形相でカスミが追いかけてきていた。


私は力を振り絞って全速力で走った。心臓がバクバク言う。喉が締め付けられるようで呼吸が出来ない!


 ああ、もう無理だー!




「今井さん!」


突然沢井君の声がした。前方からこっちへ向かってくる。


「沢井君!」


私は無我夢中で沢井君に抱きついた。


「何か嫌な予感がして戻ってきたんだ。大丈夫?」


「う…後ろから…カスミが追っかけてきてる! 逃げなきゃ!」


私は沢井君の手を取って全速力で走った。


「カスミって…」


沢井君は走りながら後ろを振り向いた。


「ギャァァァァーーーーー! 何アレーーーーー!」


「沢井君? 見えるの?」


「見える! 俺にも見える! ん…なんかこのセリフ、少年漫画のヒーローっぽくない…? って冗談言ってる場合か! そんなことは今どうでもいい! ヤバい! アレ絶対ヤバいヤツだ!」


二人で無我夢中で走った。だが、二人とも筋金入りの文系なので、力が尽きてきた。


「今井さん! ダメだ。追いつかれる。俺さ、今からあのカスミにタックルして止めるから、今井さん逃げて!」


「そんな! 沢井君が危ないでしょ!」


「大丈夫! 一応俺、これでも男だから!」


「でもっ! 今井君タックルなんてできたっけ?」


「大丈夫! こないだラグビーワールドカップを見て、にわかファンになったばかりだから!」


「気持ちはありがたいけど、それはラグビーに対して失礼ではっ?」


「そ、そうだねっ! ごめんなさい! でも俺、なんとかしてアイツを止めるから! 多分、捕まって危険なのは、俺より今井さんの方だと思うんだ。絶対に振り向かずに逃げてよ!」


「そんな!」


「俺の勇気を無駄にしないで!」



そう言うと沢井君は雄叫びをあげながらカスミに向かっていった。


沢井君が心配でたまらなかったが、沢井君の気持ちを無駄にするわけにはいかなかったので、私は最後の力を振り絞って走った。





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