表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小料理 タヌキ屋 4  作者: まんまるムーン
6/11

6




 頭の中がパニックになってしまった。


沢井君が家まで送って行ってあげると言ってくれたが、少し頭を整理したかったので、丁重に断った。


沢井君はとても心配してくれて、何かあったらいつでも連絡してと、連絡先を交換してくれた。



「チカコ…」


急に耳元でカスミが囁いた。全身に鳥肌が立った。


「カスミ! どこに居たの?」


「急にあんな男が現れるから! チカコ、あんな男に近寄っちゃダメよ! ほんとロクな奴じゃないから! 変態やろう! 死ねばいいのに!」


「…カスミ…」


「あんな見るからに陰気でうだつが上がらなさそうな男、近寄ったら運気下がっちゃうわ! 悪い事言わないさっさと…」


カスミは沢井君の悪口を言い続けている…。



 沢井君って…そんなに悪い人なのかしら…?

 

 …死ねばいいのにって…死ななきゃいけないほど…悪い事…した…?



 カスミが言うことは、いつも正しかったけど…


 …あれ…いつも正しかった…っけ…?


「チカコ! ちゃんと聞いてる? 私、間違ったこと言ってないよね!」


 

 …そうよ…


 私の友達にカスミなんて子


 いない!!!!



「…カスミ…あなた…誰なの?」


「…どうして…?」


振り向くと、髪を振り乱したカスミが上目遣いでこっちを睨んでいる。


「…チカコ…ずっと守ってあげたじゃない。どうしてそんな事言うの? あんたも私の事捨てるの?」


カスミは2、3歩歩み寄ると、いきなり誰かに殴られたようのけぞった。あっという間にカスミの目の周りは内出血して膨れ上がった。


「…あんたも! 私の事ボロボロにして捨てるの?」


今度は反対側を殴られたように頭が動いた。そしてお腹を蹴られたように飛び上がってうずくまった。誰かがカスミの髪を掴んで引っ張った。カスミの体は引きずられた。


「…う…うぅ…」


「カスミ…。」


カスミはうずくまったままうめき声をあげた。


「…見つけたのよ。痛みを共有できる相手を…。あんたには責任がある。だって…あんたたち兄弟でしょ! 私から逃れられるなんて考えないで!」


カスミはいきなり顔をあげて大声で怒鳴った。


「…カスミ…、私、あなたと知り合った記憶も無いし、あなたのこと、誰だかも知らない!」


カスミは震えながらゆっくりと立ち上がった。鼻から血が流れ落ちていた。カスミはゆっくりと手で鼻血を拭った。


「…もう少しだった…。もう少しだったのに! ううん、絶対連れて行く。逃がしはしない。」


カスミは全身を小刻みに震わせた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ