弟、ランクSSSゲート攻略を誓う
魔尖塔でできるランクSSSゲートに、世界から失ってはいけないアイテムが複製収納される、かもしれない。
そのグラドニの推測に、ユウトは目を丸くした。
「それって、もしかしてアイテムを次の世界に持ち越しするため……?」
それ以外に、わざわざ重要なアイテムを魔尖塔のゲートの中に集める理由がない。
訊ねたユウトに、グラドニは一つ頷いた。
「あくまで仮定の話じゃが、そういうことじゃ。今までも本当に時折、誰が伝えたか分からない前世界の書物やアイテムが現世界で見つかることがあった。それが魔尖塔に意図的に複製収集されたものだとすれば、魔尖塔自体が次の世界に行く方舟のような存在なのかもしれぬ」
「次の世界に行く方舟……。あっ、だとすると、もしかして復讐……『アレ』が前の世界の滅びを回避してこの世界にいるのって……」
「うむ。魔尖塔のランクSSSゲートによって、滅びをすり抜けてきた可能性はあるの」
そう考えると、魔尖塔がゲートの中にあるものを次の世界に持ち越してくるという話に俄然真実味が出てくる。
もちろん、これは本来創造主、および同位体の誰も知らないことのはず。もし知っていたら、復讐霊のように次世界に逃げ延びるものがもっといたに違いないのだ。復讐霊が滅びをすり抜けたのは、おそらく何かの偶然だったのだろう。
実際、グラドニもあの世界の創造主(仮)の立場となったことで様々な知識を手に入れたようだが、このことは知らなかった。
つまり回避方法など与えられておらず、世界が消える時、創造主も等しく滅びることが決まっているのだ。
「まあ滅ぶと言っても結局は、次の世界の礎として生まれ変わるはずだったのじゃ。本来『アレ』も、この世界に組み込まれておったに違いないのじゃが……。ああ、もしや人間界と魔界が対になっておるのは、『アレ』がすり抜けたせいで、あるべき力がないからか……」
ユウトに説明をしながらも、グラドニは自分の思考を整理し、勝手にひとりで納得している。
しかしそれをこちらに明かすつもりはないようで、彼は自分の中だけで結論を出すと、話をすっ飛ばした。
「うむ、この話はもう良い! とりあえず、『次の世界に持ち越したいアイテム』がランクSSSゲートにあるという仮定を検証するためにも、うぬは庇護者たちと上空のゲートに入るのじゃ!」
「えっ? いや、はい、それは分かってますけど……」
「おそらくの話じゃが、どうやら世界は『アレ』を排除したがっておる。うぬが昔ゲートでエミナの書類を手に入れたのが何よりの物証じゃ。そうならば、上空のゲートにも関連するアイテムが複製されている可能性がある」
「あ、昔燃やされた書類も?」
「魔尖塔も世界の理を無視する類いのものならば、燃やしてみたところで虚空の記録からデータを引っ張って複製しておるはずじゃ。再び生成されておるかも知れぬ。……まあ、上空のゲートは未完成の不完全なものじゃから、どこまでアイテムが期待できるかは分からぬがな」
ゲートが不完全なものだとしても、全く無駄と言うことはないだろう。グラドニの言葉で、ユウトは俄然やる気を出した。
だって復讐霊がいなくなれば、世界を滅ぼそうとする魔研の力をかなり削げるのだ。
「不完全なゲートでも、宝箱は出来るだけ開けてきた方が良いですよね」
「そうじゃな。その分歩き回ることになるから、危険度は増すが」
「エルドワがいれば、宝箱も階段も最短で見つけてくれるので大丈夫です」
「……ほう。その小僧はそんな芸当もできるのか」
そう聞いたグラドニは、ユウトの腕の中の子犬を見ながら楽しげに頷いている。こんなことを言ったら怒られるかもしれないが、可愛い孫を見る祖父のような顔だ。
己の力を移したことで、情もわいているのかもしれない。
「何に付け、ゲートを攻略してくれれば、わしは幾分自由に動けるようになる。世界からの制限はあるが、うぬらの助けになれることもあろう」
「はい、ありがとうございます。頑張って攻略してきます」
確かに、まずはランクSSSゲートを攻略してくるのが肝心だ。その中では貴重かつ有用なアイテムが手に入る可能性が高い。レオにもその話をすれば、きっとやる気が出るはず。
まだまだ知りたいことや考えたいことはたくさんあるけれど、とりあえず喫緊のものからひとつひとつ片付けていこう。
ユウトはそう決意すると、エルドワを抱えたままおもむろに立ち上がった。
「じゃあ、今日のところはお暇させて頂きますね、グラドニさん。また明日の朝に来ます」
「うむ、忘れずに寄っていくのじゃぞ」
「はい」
翌朝の約束を確認して、ぺこりとお辞儀をする。
グラドニに会った成果としては、時流を変える手伝いの確約とエルドワへの力の供与、この二つだけでも十分すぎるほどだ。
いろいろ話も聞けたし、レオに報告できることも多い。
ユウトはようやく緊張を解いて、そのまま控えていたキイとクウに連れられて外に出た。
「わ、もう星が見える」
「ユウト様、暗いので足下の石に気をつけてください」
思ったより長居をしてしまったようで、周囲はだいぶ暗くなっている。そろそろネイもレオたちに合流しているかもしれない。
これは急いで帰らなければと、ユウトは来たとき同様竜人たちにお願いして、ラダの村へと飛び立った。




