表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化企画進行中】異世界最強兄は弟に甘すぎる~無愛想兄と天使な弟の英雄譚~  作者: 北崎七瀬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

137/767

兄弟、ギルド長の年齢が気になる

 ウィルはイレーナに一撃で伸されたが、何か幸せそうな顔をしているので良しとしよう。

 レオは彼を一瞥だけして、イレーナに訊ねた。


「……で?」

「で、って?」


 こちらの意図を分かってとぼけている。

 じろりと睨んでみたけれど、全く意に介さない彼女に、レオは舌打ちをした。


「……俺たちの用事はここまでだが、この報告会にギルド長まで出てきたのはどういうことだ? まさかただのウィルの御守役というわけでもあるまい」

「あら、この難題クエストを達成してくれたパーティに、直接お礼を言いたかったという理由ではご不満かしら?」

「このまま部屋を出て帰っていいならその理由で構わん」

「……相変わらず、つまんない男ねえ」


 イレーナが肩を竦めて苦笑をすると、そんな2人を交互に見たユウトが首を傾げた。


「レオ兄さん、ギルド長さんと知り合いなの?」

「……ああ、まあな」


 まあ、嘘を吐くことでもない。レオは軽く頷いた。


「言っておくけど、ウィルのお眼鏡に適うパーティなんて、滅多にいないのよ。だからお礼を言うついでに直接会ってみたかったのは本当。でもどんな冒険者なのかと思ったら、まさかあなたのパーティだったとはね」

「俺のパーティではない。俺は今まで一切パーティリーダーはしていないからな」

「レオさん、ランクDだもんね」

「ぷはっ、あなたがランクD!? 何それ、面白すぎるんだけど!」


 レオのランクDがツボに入ったらしい彼女はけらけらと笑う。

 昔の彼を知るイレーナからすると、逆に低すぎて面白いのだろう。

 一頻り笑った彼女は、ようやく落ち着くとレオをまじまじと見た。


「それにしても、良く育ったわね。筋肉の付き方や醸す気配でだいぶ強くなったのが分かるわ。昔のあなたの剣は、鋭くて良く切れるばかりで危なっかしかったけど、今は心も入った感じかしら。……この子のおかげかな?」


 イレーナがちらりとユウトを見る。

 その視線を受けた弟は可愛らしく首を傾げて兄を見た。

『そうなの?』と訊かれている気がして、レオはその瞳を見つめ返しながら即座に頷く。


「もちろんだ」

「あらあら、あっさり認めちゃうのね。子どもの頃はいつも仏頂面で、周りはみんな敵みたいな目付きしてたのに、変わるものだわ」

「ギルド長さんは、レオ兄さんが子どもの頃から知っているんですか?」

「そうよ。私は昔、剣技を担当する教官だったの。あなたの『レオ兄さん』に剣を教えたのは私なのよ」

「えっ」


 あっさりと関係を明かしたイレーナに、ユウトが目を丸くした。


「……ギルド長さんって見た感じで、てっきり国王陛下と同じくらいの年代の方だと思ってました」

「あらあ、嬉しい。ユウトくんは良い子ね。イレーナって呼んでいいのよ?」

「……俺がイレーナと会ったのは6歳の頃だが、半魔でもないのに当時からずっとこの見た目だ。実年齢を教えてもらったこともない。多分妖怪だ」

「失礼ね、この姿は毎日の努力の賜物よ。妖怪じゃなく美の女神と呼びなさい」


 彼女はレオの突っ込みにも機嫌を損ねることなく、軽くいなす。

 そして今度はルアンに目を向けた。


「あなたがルアンくん? ランクBの盗賊……今回のクエストのパーティリーダーなのね」

「そうです。いつもは別のパーティに入ってるんですけど、今だけレオさんとユウトと臨時パーティを組んでます」

「この無愛想男が仲間に入れてるってことは、かなり出来る子ね。育ててみたいわ~。ルアンくん、お姉さんと修行しない? 私は剣の他に短刀やナイフも教えられるのよ」

「……自分でお姉さんとか、おこがましい……」

「うるさいわよ、そこ。……どう? ルアンくん」


 笑顔で勧誘するイレーナに、ルアンは悩むことなく首を横に振る。


「せっかくですが……」

「ええ~、駄目? 良い子見つけたと思ったのに~」

「無駄だ。ルアンはすでに狐に師事している。変な癖を付けるとあいつ怒るぞ」

「うそ、すでにあの男がこの子を育成中なの!?」


 イレーナが大きく嘆息した。

 この反応からして、どうやら彼女がここに来たのはこれが目的だったらしい。

 有望な人材の囲い込みと、育成。それをギルド長自らやるというのは、そういうことだろう。


「もしかして、ギルド直属の冒険者が欲しいのか」

「……そうよ。今、ランクSの冒険者が足りないの。SSとSSSは絶対数が少ない上に王宮付きだし、ギルドからの依頼は受けてもらえないでしょ。だからいっそ、いい素材を見つけて私がSまで育てたいのよ」

「ランクAには、Sに上がれそうなパーティいないんですか?」

「……ウィルのお眼鏡に適うのがいないの」


 イレーナはもう一度大きくため息を吐いた。


「ランクSは冒険者としての実力もさることながら、その内面が重要なのは知っているわね。冒険者ギルド直属になると、基本的に高ランクゲートに取り残された冒険者の救助や、冒険者の障害になる魔物の討伐などがメインになるわ。ただの攻略と違って、負傷者を探す根気や、その帰還を成し遂げる責任感、他者を救おうとする正義感なんかが必要なの」

「……その素質があるかどうかを観るのがウィルの役目か。確かにこいつに判断させればそう間違わないだろうな。その分、条件をクリアできる者は限定されてしまうだろうが」

「そうなのよね……。だから、中位ランクでもいいから先にウィルに資質を認められた冒険者を、私が育ててしまおうと思って」


 聞くと、以前ウィルをクリアするハードルが高すぎるということで、ギルドのお偉方が一押しするランクA冒険者をSに上げたそうだが、根気がなくて全く役に立っていないらしい。

 それを踏まえての苦肉の策と言ったところか。


「あーあ、良いパーティが来たと思ったのに。もう狐が唾付けてるなんて」


 当然だが、イレーナはレオが王弟であることを知っている。そしてレオとユウトがセットなのも分かっているから、最初からこちらは誘っても無駄だと思っているのだろう。

 実際、すでに2人は王宮直属パーティなのだから仕方がない。


「……中位ランクでもいいのなら、ダグラスさんたちのパーティどうでしょう?」


 そんな時、不意にユウトが提案をした。

 それにルアンが目を丸くし、イレーナが関心を見せる。


「え? 親父……っつか、ウチ?」

「ダグラス? ルアンくんとお父様たちのパーティなの?」

「まだランクBパーティだけど、みんな面倒見が良いし、仲間思いだし、頼りがいあるし、良いんじゃないかな。ルアンくんがネイさんに師事してから、クエスト達成率がすごく高いパーティになったし」


 ユウトの提案に、レオも頷いた。


「ああ、確かに。実力は今ひとつだが、人望や責任感の面では向いてるかもな」

「他人に厳しいあなたも同意するなら、期待できそう……! 是非ウィルと引き合わせてみたいわ! どうかしら、ルアンくん!」

「ど、どうかな……。とりあえずザインに帰ったら親父たちに訊いてみます」

「お願い! ウィルも時々お父様に会いにザインに行くから、そのついでに会ってもらうのでもいいわ!」


 イレーナはウキウキしている。

 最初にがっかりした分、余程嬉しかったのだろう。


「ダグラスたちの剣は我流だから、イレーナが矯正してやればかなり強くなるだろう」

「それは楽しみだわ……! ルアンくん、お父様や仲間の皆様は何歳くらいなのかしら?」

「全員30代です」

「うふ、良かった、全員若造ね。鍛え甲斐がありそうだわ~」


 30代のダグラスたちを若造呼ばわりする、イレーナは一体何歳なのだろう。

 そこにいる全員が思ったが、とりあえず誰も口にはしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ