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【書籍化企画進行中】異世界最強兄は弟に甘すぎる~無愛想兄と天使な弟の英雄譚~  作者: 北崎七瀬


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【一方その頃】ネイと仲間たち2

「はい、では本日の作業工程を発表します」

「リーダー、おやつは持っていっていいっすかー?」

「飴ちゃんくらいならいいです。リンゴ飴とかは駄目です」

「鉢合わせした奴は切り捨てていいですか、コレ」

「コレ駄目」

「あたし、午後にキイちゃんと食材買い出しに行く約束したから、それまでに終わりたいんだけど」

「頑張れ。あ、王都への報告書類作ってからにしてね」

「リーダー、早く作業工程を発表して下さい」

「真面目くん、もうちょっと早く突っ込んでくれてもいいよ?」


 ネイは朝の食事を終えた後、メンバーとテーブルを囲んでいた。

 調査には一応役割分担や担当場所の分担がある。それを決め、ある程度の目安の行動時間と仕事運びを調整しなければいけない。

 しかし5人の集まりは緩い。終始こんな感じだった。


「王都からもらった情報や街で聞いた話を総合して、闘技場にはいくつかのブロックがあると推測しました。バトルステージ、客席、サロンなどの地上ブロック、魔物を準備する檻や、半魔を捕まえておく檻のあるブロック、降魔術式を使ったり、魔研の人間が出入りするブロック。これらを手分けして探りたいと思います」

「ブロックによる難易度が違いすぎじゃないですか? コレ」

「はい、一番楽な地上ブロック行きたい人、手を上げて。2人募集」

「オレはヤダ。つまんねーもん」

「僕には役不足ですコレ。僕もっと出来る男ですよコレ」


 この密偵メンバーは、自分の力に自負がある。おかげで、難しい仕事より楽な仕事の方が不人気だ。適度なスリルが欲しいのかもしれない。

 その気持ちは分かるネイだ。どちらかというと自分もそういう傾向が強いと自覚している。


 ただ、後の2人はきちんと合理性のある大人だった。


「仕方ないわね、あたしが行くわ」

「俺も地上で構いません。エリア的には一番広いですし、思わぬ発見があるかもしれない」

「お前たち、聞き分けの良い大人で嬉しいよ。よし、飴ちゃんあげよう」

「あ、ずりぃ! オレも-!」

「お前、自由だね」


 結局4人ともに飴ちゃんをあげた。

 彼らはネイをドSと言うが、仲間には結構優しい方だと思う。


「んじゃ、檻ブロックはお前らね。俺が魔研ブロック」

「えー? リーダーが良いとこ持ってくのかよー」

「えーじゃない。お前らじゃ魔研の人間の顔分かんないでしょ。……では、まず坑道からオネエに上手に壁を破ってもらって、侵入したら3つに別れるぞ。そこからざっくり全体を見てきて、2時間後に一旦坑道に戻ること。気になることがあっても手は出すな」

「あたしたちのとこが早く終わったら、どっちかのブロックに加勢に行く?」

「いや、その場合先に坑道戻って待機。トイレ行ってていいぞ」

「トイレは侵入前に行っておくのが常識ですが」

「うん、出ないなら行かなくていいぞ」

「真面目か! コレ!」


 真面目くんが真面目突っ込みされた。何かネイも巻き込まれた感じだ。


「一旦坑道に集まったら再調査すべき場所を洗って、今度は役割に応じて別れて侵入する。ここでは敵に気付かれずにできる小細工ならしていい」

「おっ、オレそういうの得意! まーかせて!」

「これはあくまで2回目の時だからな。最初は駄目だぞ。後で見取り図をおこすことを考えて、部屋や術式の配置はしっかり記憶すること」


 2回目の侵入にも2時間取って、その後で報告書をまとめる算段をする。希望通り行けば探索は昼の1時か2時には終わる。少し遅いがゆっくりと昼食がとれそうだ。


「では出発する前に、何か質問はありますか」

「あ、はいコレ」

「はい、コレコレどうぞ」

「もし半魔の捕まってるとこ行った場合、話しかけられたら応じていいですか、コレ」

「いいけど、すぐ助けに来るとか安易なことは言わんように。できれば王都から来たことも伏せた方がいいな」

「情報を聞き出すにはいくらか本当のことを言って信用を得ないといけないですよ、コレ」

「信用されない時は放っとけ。2回目に俺が行く」

「あら、何それリーダー顔に似合わず格好いい」

「何で軽くディスんの?」


 とりあえず、他に質問はないようだ。

 5人はテーブルから立ち上がった。


「はい、では行きますか」

「皆さん、トイレに行ってからですよ」

「真面目か! コレ!」






 魔研の連中がいるなら最下層。

 ネイはそう狙いを付けて、ひとり階段を下っていた。


 高ランクの魔物を召喚する降魔術式に必要なのは、それなりのスペース、そして餌となる半魔だ。

 階段を下りきると、すぐにそのスペースは見つかった。

 外のセキュリティに力を入れている分、中は特に凝った造りをしていないようだ。


 中央にせり上げのような装置があり、魔方陣が書いてある。降魔術式だ。

 おそらくここで魔物を召喚し、真上の控え室のような場所に送るのだろう。しかし今はそこに、魔物も半魔も魔研の人間もいなかった。


(奥の部屋に人の気配……)


 地下の暗がりに目をこらすと、広いスペースの突き当たりに、小さな部屋がある。かすかに窓越しに、ランプによる灯りが点っていた。

 魔研の連中だろうか。


 ネイはそろそろとその部屋の窓に近付いて中を覗く。

 すると、黒いローブのフードを目深に被った男たちが4人、ブツブツと呪文のようなものを唱えていた。

 ……何だ、これは。

 ネイの背中がぞわりと粟立つ。


 男たちの周囲で、地面から生えた黒い手のようなものが無数にうごめいていた。めちゃめちゃ気持ち悪い。


「……くそっ、駄目だ!」


 4人のうちのひとりが、いきなり声を上げた。

 途端に黒い手がぐんと伸び、男はそのままぐるぐると巻き取られ、地面に沈み込んでいった。

 そこで、全ての黒い手が消える。


 残された3人は、唱えていた呪文を止め、どこか安堵したように息を吐いた。そしてフードを取る。

 ネイはその顔をしかと確認した。

 ジアレイスと、部下の2人だ。


「これで降魔術式失敗の代償として2人持って行かれたか……。しかし、これではっきりした。王都は今、聖域に近い状態になっている。聖属性を持つ何者かがいるということだ」

「魔尖塔が未だ現れないのは、その何者かのせいでしょうか?」

「おそらくな。忌々しい、ライネル共々、地獄に叩き落としてやる」


 聖属性? 魔尖塔? ネイにはジアレイスが意図することが分からない。だがそれが重要なキーであることは分かる。即座にその単語を頭に刻み込んだ。


「所長、一旦拠点に戻りましょう。今日はこれ以上術は使えない」

「そうだな。……チッ、あの半魔ども、一日生きながらえたな」


 ジアレイスが舌打ちをしつつ、転移魔石を使って消える。

 続いて2人の部下も消え、地下には静寂が訪れた。


 ネイはそこから1分ほど周囲の変化を見る。こういう時、用心しすぎるということはない。

 そして特に危険が無いと判断し、その部屋に入った。


 ……とりあえずあの様子では、今日は戻ってこないだろう。今のうちに、部屋にある書類に目を通してしまおう。


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