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女騎士は男の娘  作者: 池田 真奈
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第6話 こんなの嘘みたい!

百合騎士団の従騎士が着用する制服に袖を通した僕は改めて従騎士になれたと言う事を実感していた。

着替えは僕の小姓になった赤毛の姉妹で、妹の方になるジュリエッタが甲斐甲斐しく手伝ってくれたんだけど…… 僕が身に付けていたのが男物の下着だったから不思議そうな顔をしていた。

平民だからとでも思ってくれたのか、その事に対して何も言わないでいてくれたのは助かったけど、こう言う機会が増える事になるなら僕は覚悟しなくちゃいけないと思う。

女性物の下着を身に付けるって事を……


「マオ様、従騎士の制服が本当にお似合いです! マオ様の様な可愛らしい方にお仕え出来るなんてジュリエッタは光栄です」


眩しそうに僕を見上げるジュリエッタ。

可愛らしいとか言われて複雑な心境だけど、僕に仕える事を喜んでくれるのは嬉しく思う。

この先ずっと一緒に過ごして行く相手になるんだもん。

それに僕にとっては初めての部下だ。

僕に仕えて良かったって思って貰いたい。


「ありがとうジュリエッタ。 このまま街へ買い物に出るから一緒に行って貰えるかな?」


百合騎士団本部の敷地内に隣接して建てられている百合騎士団宿舎に案内して貰った僕達は、そこで制服に着替える事になった。

部屋の中を見渡したけど取り急ぎ買い揃えておかなければならない物は無さそうだ。

ちょっとした日常品くらいなら騎士団本部の売店で買う事も出来るからだ。

従騎士でも個室が貰えるのには驚いたけど、僕にとっては幸いだったと思う。

年頃の女の子なミオやアリエルと一緒に寝泊まりするのは問題があるもん。

裸にでもなれば彼女達には僕が男だと一発でバレちゃうもの。


「はい、喜んでご一緒させて頂きます。 では早く参りましょう! 皆さんがお待ちかも知れません」


どうやらジュリエッタの方がかなり乗り気みたいで急かされちゃった。

部屋を出て宿舎のロビーに行くと既にミオとアリエルが待っていた。


「遅いですわ。 まぁ、女性ですから準備には時間がかかるのは当然ですけど見た所、マオは化粧もしていないご様子…… ドロシー!」


「はい、お嬢様! 承知致しました」


アリエルが右手を上げて声を掛けたのは背後に控えている侍女の名前みたい。

彼女はドロシーさんって言うのか…… 黒髪を後ろで結っているけど、解いたら結構長いのかも知れない。

赤い縁の眼鏡が良く似合う優秀そうな雰囲気を漂わせいる。

その彼女が僕にゆっくりと歩み寄って来る。

承知しましたって…… まさか……


「失礼致します。 少しの間、動かないで下さいませ」


「は、はいっ!」


クイっと人差し指で顎を軽く上げられた僕は緊張のあまり固まったまま彼女の白くて綺麗な手が僕の顔を触れるのを見ているだけだった。


「動いてはいけません、折角の可愛らしいお顔ですから、私が更に引き立ててご覧にいれます」


腰に付けたポーチから化粧道具を取り出して素早く何かを塗ったりしてくれているんだけど、化粧なんかした事も無い僕には何をされているのかなんて分からなかった。

そんな僕でも分かったのは最後に口紅を塗られた事かな。

でも生まれて初めてだもん口紅なんて塗られるのは…… なんか変な感じ。


「さぁ、これで宜しいかと思います。 お嬢様、如何でしょう?」


ニッコリと微笑むドロシーさん的には満足の行く仕上がりだったみたい。


「マ、マオ! 凄く可愛い!」


ミオが感嘆の声を上げて僕に見惚れている。

彼女の小姓のジュリアも気にはなるみたいで、チラチラと僕を見ていた。


「私が思った通りですわ。 磨けば光るダイヤの原石と言った所かしら。 おーっほっほっほ、宜しくってよ」


アリエルも予想通りって感じで満足そう。

僕ってそんなに女の子みたいだったんだ。


「マオ様…… 素敵です。 私はこんなに可愛らしい女の子を見た事がありません」


ジュリエッタが両手を組んで祈るみたいに僕を見ているんだけど…… ごめんね、僕は男の()だから。

一体どんな感じになってるのかな?

玄関前に全身が映る大きな鏡があるのに気付いた僕は気になって近寄って確認してみる事にした。


「ええっ! これが僕なの…… こんなの嘘みたい!」


鏡に映っていたのは白い従騎士の制服を見に纏う可愛らしい女の子だった。

ジュリエッタじゃないけど…… 僕だって見た事が無いくらいに可愛らしいなんて。

ちょっと化粧をしただけだよね? こんなにも変わるものなの?


「お化粧だけでは、こうは変わりません。 マオ様が生まれついての可愛らしさを持ち合わせているからです。 薄化粧だけでこの可愛らしさですから、ドレスを着て本格的なお化粧をなさった姿を想像するだけで胸が踊ります」


いつの間にか僕の背後にやって来たドロシーさんが僕の両肩に手を置いて鏡を見ながら、そう口にしていた。


「その際には私にお言いつけ下さい、喜んで施させて頂きます」


そして最後に僕の耳元で囁くドロシーさん。

ドレスを着る? そっか…… 従騎士になったからには、そう言う場にも参加しなくちゃいけないんだ。

ドレスを着る場合、やっぱり胸とかが問題だよね…… 僕にはあるのはただの胸板だから。

ううっ、どんどん深みにハマって行く気がするのは気のせいじゃないよね。

僕が選んだ道だとしても…… なんて険しい道なんだろう。

街に出たら下着屋さんに行きたいってミオが言ってたし、恥ずかしいけど僕も見てみよう。

もしかしたら何か解決策が見つかるかも知れないもの。


こうして僕達は百合騎士団宿舎を後にして、王都にあるマーケットに向かう事にする。

明日からは従騎士としての仕事が始まるから、貰えるだろう休日がいつなのか分からない今の状況から考えても自由に動けるのは今日しかない。

でも女性用の下着屋さんに行くだなんて…… 想像するだけでも恥ずかしい。

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