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女騎士は男の娘  作者: 池田 真奈
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第5話 それを超えてみたい!

従騎士として認められた僕は百合騎士団の象徴とも呼べる白百合の騎士エレナ・バルデラ団長に仕える事になった。

更に僕なんかに小姓が一人付くと知らされて驚きを隠せないでいる。


「ねぇ、ミオ! 凄いよ、小姓だって。 一体どんな人かな…… 仲良く出来ると良いんだけど」


これから引き合わせると言われた僕達は百合騎士団本部にある一室で待たされている。

その間に従騎士として仕える際に着用する制服や支度金も支給されており、小姓を与えられたら皆で王都にある色々な店に必要な日常品とかを買いに行く話をしていた。

すぐに制服に着替えようとしたミオだったけど手渡してくれた先輩騎士から、小姓の初仕事になるから待つようにと止められている。

僕の着替えも毎日手伝ってくれるの?

その内に男だってバレちゃうんじゃないか心配で仕方がない。


「うん。 でもね……マオ。 従騎士になったらは小姓は部下になるの。 だから甘やかしたりしたらダメよ。 それも彼女達への教育のためなんだから」


ミオに真面目な顔で(たしな)められてしまう僕。

小姓には貴族の子弟達が行儀見習いや勉強のために幼い頃から仕える事が多い。

仕える主人の身の回りの世話等が主な仕事になるんだけど、そうやって従騎士の傍にいて騎士とは何たるかを学んで行かなくちゃならないから、主従関係も大事なんだと思う。

そしていきなり従騎士になった僕達とは違い、彼女達は小姓から従騎士への道を進んで行く事になる。


「私は普段から侍女に囲まれて暮らしていましたから特段思う事もありませんわ。 ですがマオに何かアドバイスをするならば…… 常に威厳を持ちなさい。 主人が下僕に舐められたらお終いですの!」


げ、下僕って…… そんな風には思えないよ。

僕のためにアドバイスしてくれたのは嬉しいけど、侍女って言えばアリエルの隣にいるメイド服を来た女性は一体誰なの?

眼鏡を掛けた凛とした雰囲気を感じさせる大人の女性なんだけど気が付いたらアリエルの背後に当たり前のように立っていた。

気になってチラッと視線を向けると僕の仕草に気付いたようでパチッとウインクされちゃった。


「マオったら一体どうしたの? あっ、来たんじゃないかな…… 次第に足音が近付いて来るわ」


思わず恥ずかしくなって俯く僕を見たミオが怪訝そうにしていたが、床に響くこちらに近付いて来る靴の音に気付いたミオが姿勢を正す。


「待たせたな! 紹介しよう、君達の小姓になる二人だ。 さぁ、入れ!」


扉を勢い良く開けて現れたマリアナ副団長が僕達に連れて来た小姓を紹介してくれるらしい。

ゆっくりと部屋の中に入って来たのは二人の小さな女の子。

聞いた話によると7歳くらいから小姓として従騎士に仕え始め、14歳頃に働きを認められると従騎士として騎士の見習いになるらしい。

目の前に現れた二人は10歳と7歳くらいかな?

えっ、でも二人? 僕達は三人いるんだけど…… 数が合わないのはどうして?


「アリエルはヴァレンタイン家から付き従って来た侍女がいるため小姓は不要との事なので、ミオとマオの二人に一名ずつ小姓が付く。 互いに学び合う事もあるだろう。 力を合わせて百合騎士団のために尽力して欲しい」


マリアナの団長の説明を聞いて漸く疑問に思っていた事が解決する。

あのメイドさんはアリエルの家の人なんだ。

凄く仕事が出来そうな雰囲気だし、公爵家に仕えるくらいだから間違いなく優秀なんだと思う。

そんな事を考えていると小さい方の女の子が僕の正面に立っていた。

チラッと横を見れば年上の方の女の子がミオの前に立っているって事は予め仕える相手は決められていたみたい。


「は、初めまして…… ジュリエッタ・ロッソと申します。 マオ様」


「宜しくお願い致します、ミオ様。 隣にいるジュリエッタの姉のジュリア・ロッソと申します」


ロッソって苗字があるって事は二人の少女は貴族って事?

貴族の娘が平民の僕達に仕えるなんて…… 誇り高い貴族には屈辱なんじゃないのかな?

僕を震えながら見ているジュリエッタとは違って姉のジュリアはミオを憎らしげに睨み付けていた。

多分…… この子は平民に仕える自分が許せないんだ。

身分の差は覆せないって事なんだろう。

例え騎士になろうとも平民は平民のまま。

蔑まれるだけだなんて…… 僕には我慢出来ないよ!


「ねぇ…… ミオ。 僕達が騎士になって変えようよ! この世界の理を…… 平民だって立派な騎士になれるんだって証明しよう!」


一言も発せずジュリアを見詰めて固まっていたミオが驚いた表情のまま僕へと振り向く。


「マ、マオ…… あなた本気で言ってるの? ふふっ、流石は私の親友ね。 うん、やってやりましょうよ!」


ジュリアに睨まれて思い詰めたような顔をしていたミオが嬉しそうに僕の決意に賛同してくれる。


「おーっほっほっほ! やはり公爵令嬢の私が認めた親友ですわ。 私が認めたのに世間がマオの事を認めない訳がありませんの! 近い将来、白百合の騎士になった私の横に立つのは貴女しかいないと思っていますわ」


アリエルって本当に変わった女の子だと思う。

公爵って言ったら貴族の中でも最上位に位置する雲の上の存在なのに僕を親友だと言ってくれるだもん。

そんな僕だって貴族と平民との間にある壁は高くて厚い事は分かってる。

でも僕はそれを超えてみたい!

アリエルには悪いけど、それを超えるには僕が白百合の騎士にならなくっちゃいけないんだ。



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