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女騎士は男の娘  作者: 池田 真奈
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第1話 騎士になりたい!


拙い小説ですが楽しんで貰えたら幸いです。



広大な農地と商業には欠かせない港を持つ事により莫大な利益を得て変わらぬ栄華を誇る国が存在する。

周辺諸国から羨望の眼差しで見られる程の富に恵まれたウルスラ王国だ。

伝説の聖女ウルスラを讃え、その名を冠するウルスラ王国を守るのは勇猛果敢な王国騎士団や王国兵団で、周辺諸国にもその名を馳せている。

更にウルスラ王国には百合騎士団と呼ばれる女性だけで編成された一風変わった騎士団が存在するのも有名だった。

やはり国を守る要となるのは男性を中心とした王国騎士団や王国兵団になるのは否めない。

だが華やかな百合騎士団に憧れて入団を夢見る少女達が多いのは事実でもある。

百合騎士団は特に儀礼的な式典や兵士達の士気昂揚のために戦場へと赴く事を主な任務としていた。

そんな理由から容姿に優れた少女達で編成されており、国内だけではなく国外にも熱狂的なファンを持つ。

その可憐な戦乙女達を率いる団長には【白百合の騎士】と言う特別な称号が贈られる。

これは騎士に憧れた故に、不本意ながら白百合の騎士を目指す事になってしまった一人の"男の()"の物語になる。






「今年度における王国騎士団への入団願いは思いのほか多かったらしいぞ。 貴族枠は別として平民枠は昨年の100倍の倍率だったそうだ」


酒場の片隅で二人の男が安酒を飲みながら噂話に花を咲かせている。

先程からの話題は毎年この時期に行われる王国騎士団への入団試験についてだ。


「平民なら無理せず素直に王国兵団に入れば良いものを…… 確かに入団試験に合格すれば一代限りだが騎士としての地位と名誉が手に入るとは言え、やっぱり平民じゃあ大変だろうしよ」


試験を受ける騎士の身元を確認した場合、貴族の次男や三男など家督を継ぐ事の出来ない者が圧倒的に多い。

中には腕の立つ平民出身者もいるのは事実だ。

しかし平民と言う身分は並み居る貴族達からは蔑みの対象でしかなく、その中に足を踏み入れると言う事が果たしてどう言う事になるかは容易に想像出来る。


「そう言えば…… 百合騎士団の方はどうなってるんだろうな。 今年は特段目立った噂も聞かないが……」


例年ならば絶世の美少女が試験を受けるらしいとか華やかな噂が聞こえて来る時期の筈だった。


「俺はヴァレンタイン公爵令嬢が試験を受けると聞いたがな。 余程の理由が無ければ合格は確実だろうし面白みに欠けるんだよなぁ」


王国でも有数の名家と名高いヴァレンタイン家の者が受からぬ筈がないと言うのが大方の予想になる。


「まぁ、所詮はお飾り騎士団だからな。 美人なら誰でも入れるんだろ?」


彼らだけでなく国民の大半が思っている事だ。

彼女達の血の滲むような訓練をしている事などは全く知りもせずにいる。

それは華やかな彼女達しか見る機会は無いのだから仕方がない事なのかも知れない。








何かおかしいと思っていた…… 入団試験会場に女性ばかりいるんだもの。

どうやら僕はとんでもない間違いを犯しちゃったらしい。

それは僕が小さい頃から憧れていた王国騎士団への入団試験を受ける筈だったのに、何故か今受けているのは女性だけで編成される百合騎士団の入団試験だったからだ。

色白で背も低く華奢(きゃしゃ)な体型の僕は全く疑われる事も無く、すんなり試験会場に案内されてしまった。

長い銀髪も勘違いされる一因なのかも知れないけど切るのも面倒で、僕は伸ばしたままの髪を紐で結っている。

失礼だろうけど…… 騎士になろうと言うくらいだから逆にどう見ても男みたいな女性もいる訳で、そのせいだろうけど全く疑われていないみたい。

やっぱり、このままじゃマズイよね…… 恥ずかしいけど間違えましたって正直に言おう。

そして来年になったら改めて王国騎士団の入団試験を受けるんだ。

僕は試験管理官に説明するために席を立つ。

すると一人の少女と目が合ったのに気付く。

そんな彼女の視線が僕の左胸にピンで止めてある名札へと移ったように思えた。


「あなたも平民枠での受験でしょ? 私もあなたと同じよ。 今年は平民枠の百合騎士団への入団希望で、一次審査を通過したのは私達二人だけみたいの。 でも本当に良かった…… 私一人だったら凄く心細い思いをしたと思うわ」


ホッと安堵の息を吐きながら本当に嬉しそうな顔をして僕に話し掛けて来たのはサラサラとした赤く長い髪を後ろで一纏めにした可愛らしい少女だった。

その彼女が気の強そうな青い瞳で僕の黒い瞳を真っ直ぐに捉えている。

彼女が僕からの言葉を胸に希望を抱きながら待っているのが分かるから、居た堪れない気持ちになってしまう。


「うん。 お互いに頑張ろうね!」


気の弱い僕に実は間違えましたなんて言える筈も無かった。

ちゃんと笑えているかな…… なんか口の横が引きつっている気もするけど。


「私はミオよ。 あなたは…… マオちゃんね! 名前も似てるなんて偶然…… これって運命の出会いかも! なんか素敵……」


名札の名前を見たミオさんが胸の前で祈るように手を組んで目を閉じる。

平民の僕達に姓は無く、何々の村の誰と言う感じで呼ばれる事になるから僕はカタリナ村のマオって呼ばれている。

どうやらミオさんは僕との出会いが嬉しくて仕方ないみたい。

僕は目の前でウットリとした表情を浮かべた夢見る少女の姿に思わず絶句する。

もう駄目だ…… 違うなんて絶対に言えない。


「うん、僕はマオ。 宜しくね、ミオさん」


し、しまった! 思わず僕って言っちゃった。

慌てて口を右手で塞ぐ僕。

そんな僕を見てミオさんがニヤリとした。


「マオちゃん…… 僕っ子って奴? うわぁ〜 凄く可愛い!」


どうやら好評だったみたいなんだけど……

キラキラした瞳で僕を見上げるミオさん。

年頃の女の子の気持ちとか良く分からない僕は困って立ち尽くすのみだった。


「ねぇ…… 良かったら私の事はミオって呼んで欲しいの。 だから代わりにマオって呼ばせて貰えない? 私はあなたの親友になりたいの。 だから…… そうさせて欲しいな」


待ってよ! 完全に仲良しな女の子同士の会話になってるんだけど僕は男の子なんだから。

これじゃ…… 男の()だ。

ワクワクしたミオさんの瞳は僕が絶対に承知してくれるだろうと言う期待に満ち溢れたものだった。


「僕なんかでいいの? ミ、ミオ……」


初めて会ったばかりの可愛らしい女の子をいきなり呼び捨てなんて…… 恥ずかし過ぎる。

思わず俯いちゃった僕はきっと顔を赤くしているんだろうなぁ。


「嬉しいわ、マオ。 あなたが良いの…… ううん、あなただから良いの。 うふふ、私達って仲良くなれそうね」


僕を見て満足そうなミオさん改めミオ。

その笑顔を見た僕は、既に後戻り出来ない道へと足を踏み入れてしまった事を理解する。

こうして僕は女性だけで編成される百合騎士団への入団を目指す事になったんだけど、周囲を見渡せば貴族枠の入団希望者の視線を感じるのは気のせいじゃないと思う。

平民の僕達を見下して蔑んでいるとしか思えない冷えた眼差しに怯える僕。

なんか僕達の周囲にいる女の子達が凄く怖いんだけど…… 気のせいじゃないよね?

この後に行われる実技試験を前に、今まで感じた事のない不安に押し潰されそうになっていた。


聖女ウルスラ様、どうか僕をお助け下さい!







多分…… 更新は遅めです。

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