表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
誰に命を預けるか  作者: ひでやん
4/4

集(つど)いし同志達

暇だから書きました、お楽しみください

鉄の階段を少年と上がったゼシード、しばらく山を下山している時に少年を見ながらゼシードはふと思う、6年もあの村に隠居したがこの少年の名前を知らないと

それもそのはず、少年はゼシードが来た少し後から村に来た捨て子の子供だった、村の大人の人が資材調達として下山して資材を確保し戻る時にだった、誰も見ないような裏路地に倒れている子供、それが少年だった、普通の子供が着そうな服を着てる割にはボロボロに違和感を感じたその人は少年を抱き上げ村まで連れて帰ったという

意識が戻ってしばらくは無言を貫いたが何を思ったのかゼシードとクイーンが訓練している様子を見て目を輝かせた、結果今のような喋り方や態度を取っている

やたらと話しかけてるくる割には名乗らないなと薄々ゼシードは思っていた


「ふぅ・・・」


歩いている最中ふと少年が息を吐いた

下山して数時間が経過した、しかし一向に(ふもと)は見えない、かなり山奥なため数時間歩いた程度では街に着かない、本来ならもうそろそろ川の音が聞こえてくるはずと思ったその時である

水の流れる音が聞こえてきた


「川が近くにあるな、時間的に夕方だし川で休憩して早朝出発しよう」


「は、はい!」


息切れしながらそう答えた少年、それを合図にゼシードは水の流れる音の方向へと歩いた、落ちている枯れ葉や木の枝を踏みながら川へと到着した

その瞬間安心しきったのか少年はその場に座り込んだ、数時間歩いて川についたのだ、無理もないだろう

辺りは暗くなり始める、ゼシードは少年に近くから乾燥した枝を集めるよう指示して川に近づいた、川を覗き込むように体を傾け透明度を見た、次に両手で水をすくい上げひと口飲む


(川の透明度を見る限り飲める、飲んだ感触も泥などが混ざっていない、これは飲めるな)


過去に得た知識をフル活用し水の性質を調べあげ問題がないことを確認した、次にバッグから瓶を取り出し水を汲む、早朝出発と言ってもまた数時間かかるためこれはその時用の水分補給する水である

バッグに入れたままでは冷たくなくなるため瓶に(ひも)を結び川の中に入れもう端の紐には石を置く、これで冷たい水が維持できる、石の重さからしても瓶だけが川に流されるなんて事はないはずだ、ある程度頭を動かしたゼシードは1枚の布を広げ座る、直後枯葉を踏む音が聞こえた、どうやら少年が枝を拾ってきたようだ、あとは枝を元に火をつけてその近くで食事をして寝るだけだ、ゼシードは、そう思った


「枝拾ってきました!乾燥してるかは適当ですが・・・」


「適当じゃダメだろう・・・全部乾燥してるし」


適当に選んだと言われ心配しながら手に持ってる枝を見たが濡れてる形跡はなく乾燥してるのがわかる

その後は火をつけ何故かバッグに入っていた食料を少年と分けながらゼシードは食べた、食事の最中ふと少年を見る、キラキラした顔で食べている、周りは暗いのに焚き火のせいなのかそう見えてしまう、そこで一つ気になる質問をしてみた


「少年、君の名前はなんて言うんだ?」


「あれ?言ってませんでしたっけ」


「5年弱一緒にいたが1度も」


細かな情報に思わず首を傾げる少年、一緒にいて5年弱経つが話しかけたり訓練を一緒にするだけで名前を名乗らなかった、ゼシードは最初に名前を教えていたが何故かその場で少年の名を聞く事はなかった


「フロリアンヌ・デュラントって言います」


その名を聞いた瞬間ゼシードは飲んでいた川の水を吹き出した、そのせいで息苦しくなりいきなりの出来事にフロリアンヌも心配そうに話しかける


「だ、大丈夫ですか!?いきなり吹き出すなんて・・・」


「一応生きてるよ」

(デュラントって確かフランスト国王の苗字だった気が・・・)


デュラントとはゼシード達が憎んでいたフランスト国王の苗字である、子供があんなになっても見過ごしたクソ野郎だとゼシードは昔の事を思い出し殺気立ってしまう

だが隣からの視線に気づきふとそちらを向く


「お、怒ってます?」


「いや、何でも」


その一言に胸をなでおろしたフロリアンヌ、再度食事を再開する、その隣でゼシードは考えた


(この少年・・・フロリアンヌは捨て子と聞いている、街の裏路地に倒れていた子供、それなのに王家の名前をしている・・・まさかあの村がバレた?)


ゼシードがあの村に来たのは6年前、フロリアンヌが来たのは5年弱ほど前、この事から考えると1年ほど間があるからもしかしたらゼシードの場所を探り当てるための罠かもしれない、息子がいたのは知らなかったが国王の事だから息子すらも道具として使う可能性は大いに有り得るとゼシードは確信した

もし憶測があってるならこのまま下山するのはまずい、集合場所はフランスト王国の王都にしてあるからだ、ちょっとトイレにとでも言われて離れられては密告される可能性がある、もちろんそうじゃない可能性もあるが計画がバレるのはまずい、ならば


(殺すか?・・・いやまだ早い)


都合よく腰には剣が装備してある、これで首でも斬ってしまえばフロリアンヌは死ぬ、しかし本人から何も聞いてないのに殺すのは人道に反すると思ったゼシードはフロリアンヌに質問をする


「フロリアンヌ、いくつか質問をするがいいかな」


「フロでいいですよ、長いから呼びにくいって言われるし、質問ならなんでも答えますよ」


口に食べ物を含んでいるのに器用に喋るフロリアンヌ・・・フロにゼシードはびっくりせざる負えなかった、サーカスでも見てる気分だからだ


「ではフロ、君の親はどんな人かな」


もしここで鮮明に親の事を覚えてるなら・・・、ゼシードはいつでも剣を抜けるように右手で掴んでいた


「僕の親ですか?すごく嫌いですよ、お父さんは王家の人間としての教育を強制する上に辛いし何故か戦闘訓練させられるし遊びたくても遊べないからせめてお母さんと遊ぼうと思ってもお母さんですら勉強に戻りなさいって叩かれながら言われるんですよ、我慢はしましたが限界だったので思ったこと全部言ったら家を追い出されたんです」


「そ、そうか」


1部聞いてもない事をよく喋ったので思わず戸惑ってしまったが気を取り直す

要は反抗したらキレられて追い出したという感じだ、何とも身勝手であるがこれが現実、フロの親である国王と女王は自分の物でないと分かった奴らには容赦がなかった、過去には軍本部の地下に連れていき部下を処刑した事もあった、いらないしいたところで迷惑だから消えろと言わんばかりに殺されていく使用人達の報告を毎日聞いていたゼシードには耐え難い苦痛である


「では何か持たされた物は?紙とか」


「いえ何も」


二つ目の質問を答えた後食料である肉をフロは食べた、確かに見たところ何も持っていない、出発前にみんなに持たされたバッグにもそれらしき物もない、そう考えると居場所を察知するような道具は渡されていない事が判明する、この事からフロはフランスト王国とは無関係の人間であることがほぼ確定した、そうほぼだ

ゼシードはこの少年を信用していない、ほぼ確定した・・・パーセントで言えば98%くらいだが残りの2%が罠かもしれない、この計画は裏切り者一人出るだけで戦況がひっくり返るのだ、だからゼシードは信頼出来る同志達とその他協力者にある言葉を言ったのだ


「フロ、僕に命を預ける気はあるか」


「ど、どうしたんですか?いきなり・・・命とか」


「話を聞いて少し考えればわかるが僕の計画は裏切り者が1人いるだけでこちら側が負けてしまう、戦力だって僕を含めて10人近くしかいないのに国を相手にするのだ、当然の事だがな」


国一つの戦力が人間の数だけで言っても恐らく1万~10万程だとしても絶望的な数の差、加えて僕達より年季も技術もある僕達の父親や母親がいる、仮に誰かが裏切り行動がバレれば邪魔はされるし囲まれて殺されるなんてのもありえる、だからゼシードは裏切りなんて許さないしさせない

故に仲間達全員にこの一言を何度も問いかけた


「僕に命を預ける気はあるか」


人間というもの自分の命以外に大切な物なんてない、もちろん他の人の方がという人もいるし中には死のうがどうでもいいという人もいるだろう

そう・・・命とは自分で価値が決めれる存在、故に自分の命は誰に預けるか値するというのをゼシードは仲間達に聞きまくった、しかし全員同じ答えであった


「もちろんですよ!この命ゼシードさんに預けます!だってゼシードさんなら僕の事大切にしてくれると信じてます!」


「そ、そうか」


顔と目をキラキラと輝かせて前のめりになりゼシードに寄って来たフロ、困惑せざるおえないこの状況にゼシードは困り果ててしまう

命は自分で価値を決める、その価値をゼシード預けれる物のみゼシードは信じてる、だって命より価値があるものをゼシードは知らないからだ


「夜が遅い、フロは先に寝るといい」


「ありがとうございます、ではお先に」


「あぁ、おやす・・・寝るの早いな」


地面に広げた布から立ち上がり背を向けてそう言った、返答が来たので振り返ると既に寝ていた、あまりの寝る早さにゼシードは苦笑いするしかなかのだった、こんなに愉快な奴でもゼシードより年下なのだ


「世界って広いなぁ」


────────────────


時間は過ぎ朝日が昇る、木々の隙間から刺してくる太陽の光でゼシードは起きた、まず周囲を見回す、人影がいないと確認したら次にバックの荷物を確認、何も盗られてない事を見てようやく立ち上がる

その後は隣で寝ていたフロを起こし片付ける、炭となった枝と焦げ目がついている石を川の中へと投げ入れる、その後布を畳んで片付けたら同じ場所に土をかける、こんな山奥の川でキャンプなんて人に見つかりたくないって思う人ぐらいしかいないからである、ヒントは消した方がいいとゼシードはあらゆる偽造工作を昨日の夜と今朝行った

これで見つかる確率は減った、最後に川についたその時から冷やしていた水の入った瓶を手に取り拭いてからバックに入れ忘れ物などの最終確認を行った、そして出発し下山を終えた、現在山の麓に降り馬車で移動して門の前にたどり着きただ大きな壁に囲まれているフランスト王国をフロとゼシードは見つめていた


「こ、ここが・・・」


「時間を無駄にしたくない、行くぞ」


そう言って門に近づく、警備兵などには兄弟の冒険者見習いと言って門を通った、そこにはゼシードが見た6年前と変わらない光景が視界に広がっていた

門を通ったその目の前には王国の真ん中にある軍本部兼フランスト城という名の城まで続く一本道があった、地面はレンガの模様をしているが真っ平らである、馬などが通りやすくするために平らにしたのだ


「ここが王都・・・広い」


「さてどうするか・・・」


集合場所は王都にしたが詳細な場所までは設定していない、それこそ飲食店や武具屋と言えばよかったが6年も経てば流石に変わっているだろうと考えた、だが予想は外れ全く変わってなかった、変わらせなかったが正しいかもしれない

正門の前で2人して立っているとふと視線を感じる、だが


(この感じ方は暗殺者・・・一握りの人間にしか感じ取れない静かな殺気と視線、大量の人が行き来するこの中でそれを出したと言うことは・・・)


「あいつか」


「へ?」


「移動する」


フロにそう言ったゼシードは歩き始める、それと同時に殺気と視線も移動し始める、一定の距離を1ミリのズレもなく保ち続け尾行し続けるこの技術を体現しているのはあの家の者だけだ、そこでゼシードは少し試してみる

いきなり足を止め後ろを向いた、するとさっきまでの殺気と視線はなかったかのように消えた、見られていたかもという違和感すらなく


「あの・・・」


「いきなり止まってすまないな、移動しよう」


心配そうに見つめてくるフロに軽く謝りながら再び移動する、しかしまたあの殺気と視線を感じる

ゼシードは思わず苦笑いする、以前はこうやって訓練に付き合わされた事もあり懐かしんでいた、だが尾行の完成度はあの頃とは比べ物にならない


(成長したのは僕だけではないか)


そう静かに思うのであった


────────────


「ちわッス」


「え、いつの間に」


歩いていたらいきなり後ろから声をかけられた、髪型は短め、服装は黒いジャケットに下には黒いTシャツを着ていて長めのズボンと履いている靴すらも黒い、全身黒ずくめの男がいきなり後ろに現れ声をかけた


「雰囲気は変わらんな、シザース」


「お前こそ覇王オーラ出てるわゼシード」


全身黒ずくめの男の名はシザース・ダガー、ウェポンズファミリーネームの3代家系の一つ、ダガー家の元当主候補だった男だ

久しぶりの再開を前にポカーンと唖然する少年が1人いた


「あの・・・」


「そういやこいつ誰」


「フロリアンヌ・デュランドと本人は言っているぞ」


その名前を聞いた途端シザースは顔をにやけさせる


「へぇ・・・そいつは好都合な奴がいるな」


そう言って腰の後ろに手を伸ばそうとする手をゼシードは握って止めた、その後口をシザースの耳に近づける


「気持ちは分かるが色々詮索した結果、あいつらの作戦ではないというのに至った」


誰にも聞こえない、2人にしか聞こえない小声でそう呟くとゼシードとシザースは手を緩めた

いつもこれだ、ゼシードは思う、シザースは怒り始めると自慢の暗殺術で殺そうとする癖がある、暴言を吐いたり殴りかかろうとするのではない、癖のレベルで殺してしまう、それだけ暗殺の技術は子供の頃から高い

そのためシザースが怒る度にゼシードは止めた


「お前がそう言うなら」


落ち着いたのか顔が笑った、しかし目は笑ってない、チャンスさえあれば殺しかねない目を笑いながらしている

これだから油断出来ないとゼシードは思った、後ろの腰にあるナイフ1本でどれだけ殺せるのだろうか、そう思ってしまうほどの殺気を一瞬放ったシザース


「どうするよ、まだ2人だろ」


「あぁ、まだ2人だ」


まだ2人、少なすぎる人数に黙り込む2人を見てフロリアンヌは口を開いた


「あの・・・よかったら街を歩かないかな・・・なんて」


「散歩か・・・」


敵情視察という意味では散歩はいいかもしれない、顔もバレてないから好都合だろう、フロリアンヌが何もしなければ、ゼシードは頭の中でそれを懸念(けねん)した

もし密告しようとしているならその時どう始末するのか、大多数対一を想定しているサーベル家なら主な攻撃は範囲攻撃のため隠密にという訳には行かない、しかし暗殺者一家でもあるダガー家ならそれが出来る、ゼシードはシザースに相談する事にした

スッと歩き始めるゼシードは耳打ちでシザースに内容を伝える


「もしこいつが裏切るようなら隠密に殺せ」


シザースは小さく頷いた


「分かった、軽く散歩しようか」


その一声にフロリアンヌは笑顔になりながら我先にと走り始めた、それを初めとしてゼシードとシザースは歩き始めた


────────────


ゼシード達がフランスト王国王都内を散歩しようとしていた一方で妙な噂が立っていた

王都中心にある城から西にある大きな山は透明度の高い川が流れているほど自然豊かで住んでいる動物も多い、そのため狩りに出かける人達も多いのだ

しかしここ最近野生動物が少ない気がする、という噂が流れ始めた、よく群れでいるイノシシはいつもより2~3匹少ないのだ、微々たる差だが自然豊かなこの山で群れのうちの何匹かが死んだ、などと言うのは考えられない

かと言って野犬が住んでいるのも盗賊がいるというのも見た事ない、強いて言えば・・・


いないとされていたイノシシ数匹分の骨と野営の跡があったくらいである

気が向いたら書きます、多分

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ