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009 ロクゴウ狂想曲

シモクレンたちが<ユーエッセイ>にたどり着いた頃には、日没まで数時間というところまできていた。

「うおっそい!」


あざみはもう怒り心頭である。怒髪天である。金に近い茶髪がふわりと逆立つ。

「ごめんごめん。でも、ちゃんと助っ人連れて来たで」

「強いの!? この人たち。意味あんの?」

あざみが訝しむ。


言われた黒猫<猫人族>も黙ってはいない。

「侮辱を受けるのであれば、シモクレン殿には申し訳ないが帰らせてもらう。当方も慈善事業ではない」

「そうそう! そもそもタダ働きなんてまっぴらなわっけ! ホラ、帰ろ。タンゴ」

オレンジ髪の<猫人族>もご立腹だ。


シモクレンが慌てて引き止める。

「ちょ、ちょっと待ってぇな。あの子、今、へそ曲げとって。ホンマはええ娘なんよ。気が立ってるもんやから言葉が荒いけど、なんも侮辱してるんとちがいますよ」


それでもタンゴとニャニィという二人の<猫人族>は背を向けて帰ろうとした。

それを両手を広げて押し止めようとする<守護戦士>がいる。

「カイト!」

「金と正義とどっちが大切なのさ!」


まだ若き<守護戦士>の名はカイト。

彼らは<クイックスターズ>という新興ギルドのメンバーである。シモクレンたちとは<ユフインの温泉郷>で出会った。モンスター絡みのひと騒動に偶然巻き込まれたのだが、これは出会うべくして出会った出会いであろう。

<クイックスターズ>にしてみれば、周りに自分たちより強いものはおらず、シモクレンたちにしてみれば、合流するべき<ノーラフィル>を救出しなければならないという事態だったのだ。


かくしてシモクレンは<クイックスターズ>に同行を願い出た。

二つ返事とはいかなかったが、カイトの一言で同行が決定した。


「人助けができなくって、何が<冒険者>さ!」

シモクレンはカイトを見て、出会ったばかりのユイに似ている、と思った。ひたすらに誠実でどこまでも一本気。まだどことなく幼さの残る顔立ちと大き目の鎧。

シモクレンは彼らをスカウトしてよかったと思っている。

チームレイドは仲間のレベルよりも、どれだけ背中を預けられるかが重要なのだ。


「ごめん。アタシ気が立ってたわ。どもすんません!」

カイトの純粋さに心を打たれたか、あざみは素直に頭を下げた。

あざみの思考パターンや精神構造は複雑だが、行動パターンは非常に明快だ。

「直観に従う」、その一点に尽きる。

その直観が叫んでいるのだろう。「こいつらは背中を預けるに値する」と。



「じゃあ、組み合わせなんだけど、三人一組でどうかな」

ハギが言った。異存はないようだ。大きなレイドイベントが少なくソロプレイヤーが多いため、固定パーティが組みづらい<ナインテイル>では、現実的な案だと言える。

無理矢理六人組にして連携で失策を生むよりは、三人一組の方が自分以外の二人を意識すれば済むため、大きなダメージ量をあげにくい代わりに失策を生みにくい。


「じゃあ、ポチとムダ乳とアタシ?」

「歌の題名のようですが、あざみちゃん。それはまずいですね。回復職がぼくとシモレンさんとルチルちゃんしかいないんです。あざみちゃん、先陣切りたいでしょ」

「あったぼうでしょうよ、ハギパパぁ!」

あざみは刀を抜いて威張る。


「シモレンさんもいっしょに先行してしまうと他のメンバーの回復をぼくだけで行うことになってキツいんですよね。ルチルちゃんにはまだ荷が重いですから。先鋒隊あざみちゃん、ナナシくん、ルチルちゃんでどうですか」

「やったー! お姉さまとでありますかー! 小生嬉しすぎて何やら色々な汁が溢れそうな気分でありますぅ。ぶしゃー!」


<ノーラフィル>のルチルは、<竜星雨>の一件であざみに命を救われてから一方的にファンになっていた。

「えー、錆娘モドキは相性悪いんだって。アンタ! フィアスモ使ったら承知しないからね。あと、汁っぽいのきらいだから」

「は、はいー! 汁分控えるでありますー」

最敬礼で答えるルチル。


「右辺にユイくん、ゴシェナイトくん、チャロくん。左辺にカイトさん、ニャニィさん、タンゴさん。中堅にぼく、シモレンさん、ウパロさん。魚鱗の陣でいきます」


あざみを頂点にした三角形になって進むのだ。囲まれやすいので数的不利をカバーするのに平地では愚かしいが、この山地型ダンジョンでは有効であるといえるだろう。


「全体の位置調整と周辺警戒は、ぼくの<金鶏曉夢(ヴィゾニフルドラウマ)>で行います。頼むよ、ヤクモ、ハトジュウ!」

<典災>にやられて以来、戦闘に臨むのは久しぶりのヤクモとハトジュウだが、相変わらず良好な視覚情報をハギに届けている。


「うちのゴシェ卿とチャロは、ユイくんとうまく連携とれるでしょうか」

<ノーラフィル>のリーダー<付与術師>のウパロは中衛で全体支援だ。

「大丈夫なように、声かけするんやで。先を読んで安全な場所に誘導してやるんよ。さあ、声出していくでー」


シモクレンが腕を振っていうと、ニャニィが駆け寄ってきた。

「ちょっと待って、わたしたちもパーティに入れてほしいわっけ」

「え?」

「戦闘中はパーティチャットモードで会話するでしょ」

「えええ!」

「知らなかったわっけ? どうやってこの一年生きてきたの!」

「そりゃあもう、大声で」


タンゴがため息をつく。

「<暗殺者>に大声かけるなんてやめていただきたいな」

「たしかにな」

能生も<暗殺者>だ。


「あー、おれ元<暗殺者>だけど、<冒険者>じゃないから声かけてもらった方がありがたいんだ。レン姉ちゃん、また気合い入るでかい声かけてくれよ」

ユイが叫ぶ。


「わかった。じゃあパーティチャットモードは開放しとくけど、いつも通り声かけていくでー! そんじゃがんばってこー!」

シモクレンも叫ぶ。

「おうよ!」

ユイとあざみが気合いを入れる。


「大丈夫なのですかな、あの連中は」

タンゴがため息をついた。

「いいんじゃないかな? 冒険だもの! 楽しまなくっちゃ!」

カイトは笑う。

「ミスターカイトの天真爛漫さには敵いませんな」


■◇■


十二人で<ホランエンヤリバー>を越え、<人外魔境ロクゴウ>に踏み込んだ。

最初の廃墟群を駆け抜ける。

先鋒。あざみの新技<桜花円舞>で躱して、能生が仕留め、ルチルが褒め称える。


右辺。ユイがトンファーで道を開く。チャロが叫ぶ。

「ゴシェ卿、ヘイトコントロール下手なんやから、特技使うなや」

「承知。<オウスオブナイツ>!」

「だから何もすんなっつうたじゃろが!」

「拙者、騎士として皆様を守ることを誓っただけに御座候」

「だけじゃねえちゃ! メンバーの攻撃力上げるが、てめぇの守備力下げて全員分のヘイト集めるっつうもんじゃろがい! まったくよう。妙なところでやんじゃねえぞ!」

「ぎょ、御意」

ハギからの声が届く。

(ゴシェさーん。ユイから離れはじめてまーす。スピードあげてください)

「ぎょ、御意!」



左辺。手慣れた連携で<醜豚鬼>や<魔像機>を打ち倒す。

<クイックスターズ>は新興ギルドだが、かなり場数を踏んでいるらしい。

「サファギン退治が終わってどうしようかと思ったけど、こっちきてよかったね!」

カイトは大剣を振りながら笑う。

「問題は報酬なわっけ!」

「またその話!?」

ニャニィの言葉にカイトは目を走らせるが、既にそこにはいない。宙を舞いながら矢を放っている。

「その話、重要ですな」

木から飛び降りたタンゴがニャニィと位置を入れ替わる。

「もう、金と冒険、どっちが大事なのさ」

「わたくしの技術にも、相当の対価が支払われるべきだと思うのですな」

「わかった、わかった。後で交渉するさ」



こうして<佈鬼寺大堂>へと突き進む。

セルデシアの<佈鬼寺大堂>は、地球世界の<富貴寺>の美しい阿弥陀堂建築をそのままに残している。


「きっとそこにも<常蛾>の繭があるはず!」

モンスターを切り払いながら、石段を駆け上がる。

(佈鬼寺はあざみちゃんたちに任せて、みんなは下に安全地帯を作って待っていましょう)

ハギの声が聞こえる。


「ディルウィード!?」

あざみが石段を登ると、境内に人の姿が見えた。その姿がフードを被ったときのディルウィードにそっくりだったのだ。

「違うぞ」

能生が言うと、あざみは反射的にディルウィード似の人物を斬ろうとした。



「おい待て」

能生の制止など完全無視であざみは斬りつけたが、ディルウィード似の人物はひらりと瓦屋根の上に飛び乗った。

その人物は掌に小さな光の柱を作り上げた。


「ポチ、ルチルと飛び降りろ!」

あざみが瞬間的に判断して叫ぶ。

反射的に能生はルチルにダイビングタックルを食らわせた。


「あれで<ラミネーションシンテックス>かよ!」

あざみは打刀<一豊前武>を両手で握り振りかぶる。


境内を包むほど極太の青紫の電光が駆け抜ける。

「お姉さま!」

階段の途中で仰向けになったルチルは、双筋に裂けた雷系魔法の奔流を見た。

「大丈夫だろう」

能生の言葉通り、あざみは無事に立っていた。


<叢雲の太刀>で攻撃を両断したのだ。

「ふぅ。ディルの数倍すげぇ<サーペントボルト>だったね。アンタ何者?」


敵は<冒険者>だ。フードが外れてディルウィードそっくりの顔が覗いた。ただ正気の目をしているとは思えない。

「イルカ=アネット? アンタ、人間?」

敵は答えない。


「<口伝>発動すっから、そこで待ってなさい。右薙、袈裟、右切り上げ、あ、逃げるな、唐竹、ちょ、待てー!」

あざみが叫んだが、敵はもう見えなくなっていた。

「行ったな。繭がいくらかある。日が暮れる前に殲滅しておこう」

階段を上ってきた能生は言った。ルチルも先程強打した腰をさすりながら姿を現した。

「ポチ、ルチル、あとよろすこ」

「は、ハイすこ」

能生はため息をつく。

「なんだよ、すこって」



石段を降りると他の隊も集合していた。

「なんか上、すごかったみたいやけど、大丈夫なん?」

シモクレンが心配して聞いた。

「まあ平気。上にディルウィードそっくりさんがいた。ただ、女の子だったけどね」

「何者なん?」

シモクレンの質問にハギが答える。

「敵でしょうね、今ハトジュウが追跡していますが、おそらく<アシビキの玉匣フタゴ>に逃げていったのではないですかね」



「追って行けばまた会うっしょ。ただ、どうにも気になるんだよなー。ディル似のそいつ、イルカ=アネットって<冒険者>だったんだけど、なんか抜け殻みたいなヤツでさ。でもディルの数倍は強いね」

それでもあざみの口調はこともなげである。シモクレンは驚く。

「<冒険者>やったん!?」

「うん、わけわかんねーね。ポチたちも戻ってきた。次行こ」


ハギは、この後の進路について提案する。

「一旦<魔鬼大堂>、<苦魔ノ磨崖>へ出てそこから山を登り、フタゴを取り囲むように時計回りにまわりながら、<常蛾>の巣と思われるところを叩いていくコースになると思います。おそらく途中で日没になります。そこから先が正念場になるでしょう」


「だったらハギ兄ちゃん。その二つをオレたちが担当するよ。全員で回ったら遅くなるでしょ」

ユイがそう言うので、ハギはシモクレンの判断をあおいだ。


「じゃあ、ユイのところにヤクモちゃんつけとくで。そしたら道に迷わんやろうし、斥候もつとめられる。な、ヤクモちゃん」

ヤクモは強く頷いた。

「やけどユイ。絶対無茶はあかんで。危ななったら、ウチが迎えいくから、ここまで避難するんやで」

「ああ、任せて」


それから三十分、ユイたちを残してあざみたちは快進撃を続けた。

<川中オニエ><ケベス谷>と西側を攻略し、<フタゴ>北側に回り込む。<アカネゼンジョウ>の攻略にかかろうかというところで日が没した。

広域すぎて<金鶏曉夢>の効果は切れてしまったが、ユイたちが<苦魔ノ磨崖>まで攻略を終えたことがヤクモから伝わってくる。


ユイたちは進路を北に変え、まっすぐ<フタゴ>目指して進み始めたらしい。

ホッとしたのも束の間、大量の<常蛾>に視界を覆われたハギは目の前に集中せざるを得なくなった。

<常蛾>の群れをくぐり抜けるように<月兎>が物理攻撃をしかけてくる。ダメージ遮断呪文も視界が奪われがちで投射しにくい。


<常蛾>の突撃すら刀で受け流すあざみの舞うような姿は見えるが、その後ろをついていくはずの能生の姿が見えない。

MPを奪われ、膝をついている。昏睡一歩手前だ。ハギが指示を出す。


「ウパロくん! マナコントロール!」

「え、あ、はい。<マナトランス>!」

ウパロの呪文は、MPの緊急輸血といった行為だ。急場は凌げるが、MPを大量に渡したウパロのMP残量も七十パーセント以下になってしまう。ハギは叫ぶ。

「今のは、チャネリングの方がよかった!」

「す、すいません!」

「こういうのは慣れだから!」

励ましも反省も自然と大声になる。


この状態で何分戦えるのか。能生を一旦中衛に下げ、シモクレンが先鋒に加わる。

あざみが躱し、シモクレンがハンマーで叩き潰す。その流れにルチルがいない。


「あざみちゃん、ルチルちゃんがいない」

「あのバカ!」

あざみが動きを切り換えた。<口伝>で一掃する気だ。

<紅旋斬>は数瞬の無敵時間が重宝されがちだが、変幻自在の空間移動術と二刀流の超連続攻撃の組み合わせであるから、範囲攻撃として使えば飛行中の<常蛾>でさえ制圧できる。


<アカネゼンジョウ>一帯のエネミーは打ち倒してしまった。その間に<クイックスターズ>は建物内の敵の制圧に向かったらしい。


「ハギパパ、アタシもちょっと休ませて」

ぐったりしたルチルを抱えて戻ったあざみは、ハギの結界の中に入った。

「あざみちゃん、お疲れ様」

「おいルチル!」

ウパロが叫んだが、ルチルは昏睡状態から目を覚まさない。

「隊長のときと同じですね」

ハギは残念そうに言った。


「アタシが回復したら、次行くよ。今の調子で一箇所ずつ撃破するしかないよね」

「しまった」

「どうしたのハギパパ」

「どうもゴシェ卿くんとチャロくんも気を失ったようです。ヤクモが彼らの様子を見ているようですが、ユイくんの姿が見えません。ハトジュウで探した方が」

「それはまずいね。こっちの継続戦闘が難しくなる」

「でも、ユイくんは」

あざみは立ち上がる。

「甘やかさなくたって、ユイならちゃんと成長してる。それに、ヨロイ男とじゃけえ君しかヤクモの目にうつってないなら、<常蛾>の攻撃もユイには効かないんじゃない? っていうか、<古来種>目指すもんがこんなところで散っててどうすんのっての!」



ルチルをハギが背中に背負い、後方支援にあたる。なんとか能生も戦線に復帰している。

次の<文殊オニエ>、そして<成仏オニエ>を攻略し、ついに<フタゴ>入り口の仁王像の前までたどり着いた。


その仁王像は一行に休みを与える間もなく攻撃を開始した。

「動くんかい、こいつら!」

あざみが二度目の<紅旋斬>の発動に入る。

「やりますな、あの<剣仙>」

そう言ったタンゴですら、あざみが蹴った地面で二ヶ所葉が舞ったのが見えたのみだ。あざみを目で捉えられたのは、二つの仁王像の首を刎ね飛ばし終わった後だ。

「妙なあだ名、つけないでよね」



日没から一時間ほどが経っていた。

あざみが着地するより先に事態は急変した。阿形像は空中で自らの頭を掴むと、反対の手であざみを捕え地面に叩きつけた。

吽形は手に持つ金剛杵をあざみの腹に突き立てる。


「ぐぶっ!」

「あざみ!」

シモクレンが叫ぶ。

「あざみちゃん!!」

ハギは次の呪文を唱え始めた。

「うおおおおおおおお!」

カイトが救出に入るが、石で出来ておるはずなのにパンプアップしている金剛力士像の腕が剣を阻む。シモクレンが必死に回復魔法を投射する。


ニャニィが金剛杵の一点に矢を打ち込み続ける。タンゴがヒビの入ったところで金剛杵を切り飛ばす。ハギが<魂呼びの祈り>を唱え終わる。あざみが足元に呼び寄せられた。

「また―――このパターン?」

「黙っとき」

シモクレンがあざみを抱えて距離をとる。


「アサシネイト」

能生の蹴りが阿形の首に入ったが、ビクともしない。阿形も吽形も先程よりも二回りは大きくなっているのだ。

あざみの二の舞いになるところを、ウパロが<ソーンバインドホステージ>で食い止める。


強くなったのは、力士像だけではない。<常蛾>も<月兎>も数倍の攻撃力になっている。


「ハギさん! 撤退や」

シモクレンは判断した。ハギが緊急脱出呪文を唱えた。



<ホランエンヤリバー>の対岸に飛んだシモクレンは、ユイの帰還をジリジリと待った。

ヤクモが下山を開始したそうだ。ハトジュウがユイを探すが<常蛾>に阻まれてまだ見つかっていない。

腹の傷がふさがったあざみは立ち上がろうとしたが、シモクレンに腕を掴まれた。その手はじっとりと濡れている。

あざみはシモクレンを抱きしめてやった。桜童子の代役は荷が重かったことだろう。ユイが戻らないうちは気も休まらないに違いない。

「大丈夫、心配ないよ」

「そやけど」

「ヤクモが来ます」

対岸にヤクモの赤い衣が見えた。手を振っている。

ヤクモの横にゴシェ卿のヨロイの背中が見え、その下にチャロが現れる。二人とも気絶したままだ。

そして、ユイも見えた。


「リアに、ただいまって、言う約束、したんだ。オレは、死ねない。オレは、死ねない!」

気絶した二人を背負ったまま、ユイは歩いてきたのだ。ハギはヤクモを通して、ユイが呪文のように唱えているのを聞いた。


シモクレンとあざみとハギとウパロは反射的に川をバシャバシャと渡りはじめた。


その様子を見ながら、<クイックスターズ>の三人は言った。

「いいチームですな」

「うん。やっぱり最後まで付き合おう。ね!」

「そこは、報酬次第なわっけ!」

「わたくしもそれには同意でありますな」


月を覆うように飛ぶ<常蛾>の群れを三人は見上げた。

カイトは言う。


「金貨で名誉が買えるかよ!」

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