#005「仮定空想」
舞台は、山崎家。
登場人物は、聡司、山崎、渡部、吉原、朝丘の五人。
「もしも、ロール・プレイング・ゲームの世界の住人だったら、何になりたい?」
「さっきのゲームの話か、聡司?」
「室内でこういう風に過ごすのも、たまには良いですよね、吉原さん」
「ゲームで遊んでばかりだと駄目だけどね」
「こういうのは、制限があるから面白いんだ。時間無制限に遊べるとなったら、他のことをしたくなるに決まってる」
「遊んでる場合じゃないのに遊ぶから、スリルがあって楽しいんだ」
「興奮するよな」
「頭で分かっていても、身体を止められないのですね」
「成績は下がる一方だね」
「やり込み注意だな」
「話を戻すけど、何になりたい?」
「俺は戦士だな。剣を武器にして、立ちはだかる敵を薙ぎ倒す」
「僕は魔導師かな。杖と呪文で、悪者を改心させる」
「問答無用に斬りつけるより、良いかもしれませんね」
「呪文が通じれば良いけどな。自分は、狩人になりたいな。弓と矢で、遠くから敵を攻撃できそうだ」
「俺は、それを逆手にとって不意を衝く盗賊だな」
「正々堂々と戦えよ。でも、悪ぶりたい気持ちは分かる」
「渡部くんは?」
「私は、吟遊詩人でしょうかねぇ」
「声を武器にするんだな?」
「よく通る声をしてるもんな」
「やっぱり聡司も、そう思うか」
「コーラス部で鍛えられましたからね」
「ピアノが弾けて、歌がうまくて」
「語学も堪能」
「世界中、どこでも通用しそうだな」
「グローバル社会だもんな」
「でも欧米で活躍するなら、あと頭一つ分ぐらいは背が高いほうが望ましいですね」
「背が低いと不利だよね」
「まぁ。高過ぎても、持て余すだけだと思うけどな」
「もしも、無制限に身長が伸びていったら」
「地球に住めなくなる」
「それ以前に、強度不足で直立出来ないと思います」
「成長しても、素材は一緒だもんね」
「ジオラマの材料で、高層ビルは建てられないからなぁ」