表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/44

#001「乙女心理」

舞台は、寮の自室。

登場人物は、朝丘、渡部の二人。

「戻ったぞ。あれ、渡部一人か?」

「お帰りなさい、朝丘さん。山崎さんは室長会議で、吉原さんは風紀会議に出席しています。美化と保健は来週ですから、会議の詳細は、そのときに説明しますね」

「会議は、頻繁にあるのか?」

「いいえ、月に一度です」

「そう。何を読んでるんだ?」

「少し前に流行した、恋愛小説です。もう少しで読み終わりますけど、読んでみますか?」

「自分は、推理小説ぐらいしか読まないから」

「そうですか」

「どうも甘ったるい話が苦手でね」

「好みは、人それぞれですから」

「そう。人によって違いが、ある」

「ヒャッ」

「推理は、外れだったようだ。突然、変なことをして悪かった。でも、どうしても確かめておきたくてな」

「今のボディー・チェックで、何を確認したのですか?」

「もしかしたら、と思ったのだが、どうも違ったようだ。忘れてくれ」

「もしかしたら、自分と同じ性別だと思ったのですか? ヒロミさん」

「何の話だ? 自分は、タクヤだ」

「鞄をベッドの上に載せるときに、底のポケットから、古い荷札がはみ出しているのが見えたんです。イニシャルがティー・エーではなく、エイチ・エーだったものですから」

「えっ」

「ご心配なく。あとの二人に見つからないように、そっと外して捨てましたし、このことは、誰にも言いませんから」

「そうか。くれぐれも、教職員以外には漏らさないように頼む」

「ご安心を。詮索はしませんけど、何か事情があるようですね」

「誰だって、個人や家庭の事情を抱えているものだ」

「怒らないで聞いてくださいね。シャツの下に晒を巻いていたり、右手首に包帯を巻いていたりというのは、深刻な悩みがある証拠だと思いますよ。差し出がましいかもしれませんけど、辛いときは一人合点せず、遠慮なく私に相談してくださいね」

「話せるようになったら、そのうちにな。でも、どうして、そこまで干渉するんだ?」

「保健係ですから。あっ、そうだ。もしくは、このテディーさんに、乙女の悩みを打ち明けると良いですよ」

「自分は、こういう愛らしいものは嫌いなんだが」

「オイラのことを嫌わないでよ、ミーちゃん」

「縫いぐるみ越しに喋るな。あと、どこから声を出してるんだ?」

「ヒロミン? ヒロちゃん?」

「どっちも違う。縫いぐるみに、変声機でも付いてるのか?」

「フフフ。幼い頃に自分が呼ばれていた愛称で呼びかけていたら、自分で自分を呼んでいるような奇妙な錯覚に陥ってきました」

「まったく。変な奴だな、渡部は」

「変わり者なのは、重々承知してますよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ