#000「編入生徒」
舞台は、寮の自室。
登場人物は、渡部、山崎、吉原、朝丘の四人。
「敦史さんは、消防士になられたんですね」
「そう。それで今は、消防学校で訓練を受けてる」
「期間は、半年なんだよね?」
「大変ですね」
「部屋は広く使えるし、怒りに任せて殴られたり蹴られたりしないのは良いんだが、何か物足りないんだよなぁ」
「いつも居る人間が居ないと、違和感があるよね」
「いつも居ない人間が居ても、違和感はありますけどね」
「あぁ、そうだ。明日から、新しい生徒が編入するから、ここも四人部屋になるって話は聞いたか?」
「聞いたよ」
「私も、伺いました。三年次に編入とは、珍しいですよね」
「朝丘拓弥だ。よろしく」
「俺は、山崎孝志。こいつは、吉原敏生」
「よろしくね、朝丘くん」
「寮監から、同室は三人だと聞いていたのだが?」
「もう一人は、渡部博巳っていうんだ。もう少ししたら、保健室から帰ってくると思うんだ」
「あっ。噂をすれば」
「堀先生から、新しい健康調査票を受け取ってきました。そちらのかたが、朝丘さんですね?」
「そうだ。渡部だな?」
「俺が名前を教えたんだ」
「僕たちの名前と一緒にね」
「それは助かります。よろしくお願いしますね、朝丘さん」
「よろしく」
「さて。名前と顔が一致したところで、今度は、係とか、ベッドの場所とかを決めよう」
「昨年度までは、山崎くんが室長で、ベッドは左の上段、僕が風紀で、山崎くんの下段」
「私は保健で、ベッドは右の下段です」
「そうすると、ベッドは右の上段が空いてるんだな。係は?」
「残ってるのは、美化だな。でも、室長が良ければ、代わっても良い」
「僕も、風紀でなくては嫌だという訳ではないよ」
「保健がよろしければ、私が美化をしますし、下段のほうがよろしければ、上段に移ります」
「いや。自分は残りもので構わない」
「そっか。それじゃあ、とりあえず、朝丘が美化で右の上段。あとは、これまで通りということで」
「賛成」
「私も、同意します」
「異議なし」