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その頃王都では。

前回のあらすじ


 竜王に、会いにいきます!


 所変わってゴードグレイス聖王国が王都ディアカレスに位置する王城の一室、王族の執務室では、極めて沈痛な空気が場を満たしていた。

 どんよりとした空気をもくもくと発生させている主な原因は、言うまでもなく執務机に突っ伏して頭を抱える二人の男である。

 少し前までは綺麗に片付いていたはずの机の上は、今やぐしゃぐしゃになり見る影も無い。

 それでもギリエイムは、床に落ちた無数の書類に目を向けるよりも、紙束に額を押し付けて安らかな暗闇を享受していたいと思う程度にはやさぐれた精神状態にあった。

 どうやらその心境は、宰相たるエイクエスにも通ずるものがあったようだ。普段であれば年上の陛下を遠慮なく諌める言動をするはずのエイクエスもまた、ギリエイムと瓜二つの姿勢で頭を抱え込んでいた。


 もしも今、この部屋を城の侍女の誰かが訪れようものなら、呼吸することすらままならずにそっと退室しようとするだろう。

 今ならルージュの魔力よろしく、重力というものも目に見えるかもしれない。

 そんな重苦しい空気の中、思い詰めたように沈みに沈んだ二人の男が同時に言った。


「「どうしてこうなった……」」


 半分以上、涙声であった。

 言うまでもなく、勇者ルージュの失踪についてである。


  @


 両思いでかつ、顔のよい若い男性騎士二名を勇者の従者につける。

 これは国王ギリエイムと宰相エイクエスが女神トーラから直々に賜った、曲解の余地のない真なる啓示である。


 その意味こそ理解できなかったものの、内容としては明白だ。そもそも女神の啓示というものは深遠なるものであり、過程や結果に言及しないものが殆どである。

 帝国で討ち漏らしたスライム一匹が、やがて聖王国で暴走(スタンピード)を引き起こすこともある。何がきっかけとなって、どういう作用が起こるのかはまさに神のみぞ知る。

 女神はそれが、勇者ルージュに必要だと言った。

 人界に救いをもたらすには、心から愛し合う騎士のカップルが必要なのだと。

 なぜ必要なのか。それを知る必要はない。例えゴードグレイス聖王国の宰相だろうと、ましてや国王だろうとない。

 先行きの見えない怪しい啓示を、エイクエスは女神が与えたもうた試練とさえ呼んで恭順を示した。


 敬虔なるトーラ神聖教徒として、ギリエイムとエイクエスは女神の啓示に準じた。


 ギリエイムの手足となって手を尽くしたのは、他でもないエイクエス自身である。

 そう都合よく、条件に一致する男色家の騎士が王都にいるわけがない。そう諦めかけたエイクエスの下にオルフェレウスとアイザックが送り込まれてきたときには、人界の隅々までを見通す女神の慧眼に涙さえ流したものだ。

 冷静沈着で知られるエイクエスが満面の笑みで謁見の間の扉を開いたときなど、ギリエイムは千万の言葉を用いてエイクエスを喝采したい気持ちで一杯だった。

 まさに奇跡と呼ぶに相応しい邂逅であった。

 全てが光り輝いて見えた。

 その時、ギリエイムとエイクエスには、希望が照らし出す人界の未来の栄華が確かに見えていたのだ。



 そしてその結果もたらされたのは、勇者ルージュの逆上からの失踪という、どう頑張っても前向きには捉えようもない非情な現実であった。



 ルージュが転移魔法を発動し、謁見の間から姿を消したその直後。

 誰もが無の境地へと至り、なす術もなくぽかんと立ち尽くす中、謁見の間の誰よりも早く正気を取り戻したのは、意外にも目の前で置き去りにされたアグニであった。

 大抵のことは「そうか!」と笑い飛ばすアグニであっても、流石にルージュが失踪した直後には衝撃のあまりあんぐりと口を開いて惚けた様子だったのだが、ふと気が付けば、アグニはなるほど、得心したというような様子で瞳に光を取り戻すや、力強く床を踏みしめて謁見の間を去ろうとしていた。まるでたったいま起きた出来事をすべて忘れてしまったかのような変わり身だ。


 それを呼び止めたのは、続いて我に返ったエイクエスであった。


「ま、待ってください、アグニ! ……その、大丈夫、なのですか?」


 エイクエスの声からは、不安の色が見え隠れしている。

 国王たるギリエイムに礼どころか一瞥もしない清々しい様子に、たったいま失踪したルージュに通ずる、どこか尋常ではないものを感じたためだ。

 今のアグニは一見して平静に立ち返ったように見えるが、この状況ではそれすら不自然だ。


 勇者ルージュは、アグニに変わる新たな従者に不満を訴え、制止も空しく転移魔法によってどこかへと消えてしまった。

 もしや。

 ルージュに続いて、アグニまでもが王都を……ゴードグレイス聖王国を去るつもりではないだろうか?


 もしそうならば、エイクエスは今、この場でアグニを留めなくてはならない。

 エイクエスは国王に迷いなく背を向けて去ろうとしたアグニの、その精神を気にかけたのだ。


 だがその思いは、幸か不幸か杞憂に終わる。


「ええ。ご心配には及びません、宰相閣下」


 そう言いながらアグニは振り返る。

 その表情には迷いや憂い、怒りや焦りといった負の感情の面影はない。

 むしろどこかリラックスしたように、仄かな苦笑いに似た表情を浮かべてさえいる。

 それは少なくとも、たったいま、共に旅をしたいと願い出た人物に置き去りにされたばかりの男が見せるべき顔つきではなかった。


 狼狽えるエイクエスを前に、アグニは続けて言った。


「ルージュ殿はああ見えて、やるといったらやる、そういう人物です。付け加えて言うなら、『なんとかしてしまう』人物でもあります。この旅の間、オレはルージュ殿のそういう所をたくさん見てきたから分かるのです。ルージュ殿は、必ずや自らの手で最高の従者を見つけ出してみせるでしょう」


 その言葉はよどみなくはきはきとしていて、実に聞き取りやすい理想的な共通語の発音だった。

 エイクエスはその一言一句を余すことなく理解した上で、いったいこいつは何を言っているのだろうと思った。


 二の句が告げないとはまさにこの事だった。

 そうではない。そうではないのだ。

 エイクエスはそういう意味で、大丈夫かなどと聞いたのではない。

 ルージュが従者を見つけられるかどうかなど、どうでもいい。

 そんな話をする以前に、もっと他に、懸念すべきことがあるのではないか!?


 だが。

 そう思うからこそ、エイクエスにはアグニの思いが分かってしまった。

 どんよりと沈みつつある場の空気に、どこか居たたまれなさを感じながらも、近衛騎士の白銀鎧を軋ませるように胸を張り、この場に集う者たち全ての視線を浴びてなお堂々と振る舞うアグニの思いが。


 この男は。

 アグニはどうやら、まったく、全然、これっぽっちも、ルージュが逃げ出したとは思っていないのだ。


 ルージュの逆上を目の当たりにし、目の前で置き去りにされたと気付いてなお、このままルージュが姿をくらまし、二度と戻ってこないなどとは考えてすらいないのだ。


 あまつさえアグニは、彼女が姿を消す直前に言い残していった勢い任せの狂言としか思えないあの言葉さえも真摯に受け止めている。アグニは本気で、彼女なら実現させかねないと、寧ろ実現させるに決まっていると信じているのだ。


 かつて勇者フセオテの背中に、無限の信頼を預けたときのように。


 アグニを辺境に送って、僅か三ヶ月だ。

 ルージュはたった三ヶ月間で、これほどまでにアグニを信じさせたのだ。


 アグニが何を見て、何を聞いてきたのか。エイクエスは彼自身の言葉から、一応の報告は受けている。

 温泉目当てに観光地に寄ったついでに殺人事件を解決しただの、美味い肉目当てに辺鄙な村に寄ったついでに村一つ救っただの、勇者らしいようで勇者らしからぬ、まるで三流作家が考えたような、そんな判断に迷うエピソードばかりだ。

 エイクエスは初めてそれを聞いたとき、当代の勇者はいったい何者なのだと混迷を深めたものだが、それを実体験してきたアグニにとってはそうではないようだ。

 きっと言葉の報告だけでは伝わらないような、魂を揺さぶる何かがあったのだろう。


 そして、それを共有することのできないエイクエスが胸中に満ちる不安を打ち消すためには、言葉を使ってアグニに問いかけるしか術はなかった。


「勇者殿は、戻って来るでしょうか?」

「ええ。ルージュ殿は必ず王都に戻ってきます」

「たったいま、ルージュ殿は貴方さえ置き去りにして消えました。それでも戻ってくると言えるのですか

?」

「必ず戻ってきます、宰相閣下。何故ならば」

「何故ならば?」


 アグニは握り締めた拳に親指だけを立て、自分自身の胸元を指してこう言った。



「このオレがここにいるからです」

「は?」

「ルージュ殿が求めたこのオレが、従者たるアグニが、この王都にいるからであります、宰相閣下!」


 そのあまりにも力強く堂々とした口上に、エイクエスはその場にへたり込みそうになった。


「なあに、ルージュ殿との別行動は今に始まったことではありません!

 ルージュ殿はこう言っていました。オレが良いと。

 続いてこうも言いました。行って参りますと。

 それが全てです。ルージュ殿は必ずや二人目の従者を見つけ、オレを迎えに来るでしょう。であれば、オレはこれから始まるであろう旅の準備を万端に整え、ルージュ殿の帰りを待つべきです。それが今日、この場におけるオレとルージュ殿の役割分担です」


 では、オレはこれより旅の準備がありますので!


 そう言葉を締めたアグニは、微塵の隙もない完璧な聖王国式の敬礼をキメると、再び踵を返して扉へと真っ直ぐに歩き出した。


 今度こそ、アグニを呼び止める者は誰もいなかった。


 聞こえてくるのは床を踏み鳴らすアグニの足音。そして、


「そうだ。今のうちに夜店も調査しておかねば。食べ歩きとなればジィドが適任か?」


 という、ちょっと聞き流せないような呟きのみであった。


  @


「この際、あれが勝手に持ち場を離れた上に、命令されてもいない旅支度をし始めたことに関してはもう何も言わん。あれの言葉が確かであれば、勇者がこのまま失踪するという最悪の事態も免れるだろう。まだ今ひとつ不安が拭えない感はあるが、ああも自信満々に言い切られてはな……」

「ええ……。少なくとも、アグニが勇者殿に対してとても大きな信頼を抱いていることは間違いないでしょう」

「先代に懐いていたようにか?」

「……それは、どうでしょうか。私には、少し違うもののように思えました。どちらかと言えば、いいほうの意味でですが」


 先代の勇者フセオテへのアグニへの接し方は、まさしく信頼と呼ぶに価するものであった。

 だが、かつてのそれと同じ感情をアグニが抱いていたようには、エイクエスには思えなかった。

 勿論、アグニはルージュを信頼していた。だが同時にアグニは、自分はルージュから頼られる存在なのだということを強く確信しているようだったのだ。

 そうでなければ、謁見の間でのあの発言には繋がらない。


「そう。まるで、信頼とは本来こういうもののことをいうのだと言わんばかりに」

「我が聖王家も、歴代の勇者達を信頼し、最大限援助して送り出したことは間違いない。だが、これを機に少々考えようという気にはなった」


 少なくとも、今のルージュに最も必要な人物がアグニであることは間違いないだろう。ギリエイムは激怒して謁見の間から立ち去ったルージュ、そしてどこか晴れ晴れとした様子であったアグニを思い出して強く確信する。


 一先ずのところ、女神推薦の騎士二名については再考せざるをえないというのがギリエイムとエイクエスの共通認識であった。


 あれほどまでに強く望まれれば、もはやルージュの従者からアグニを外すなどという選択肢が生まれようもない。先代勇者の従者であったアグニであれば実績も充分だ。むしろルージュが自ら連れてくるという従者候補のほうに不安があるくらいである。例えば辺境の町で一番腕っ節が強いなどというような、井の中の蛙を地でいく冒険者などが連れてこられた場合は苦心して考え直させなければならない。ルージュはある種の使命感を持って転移魔法で旅立っていったのだが、ことアグニと旅を続けたいという点に関しては、まったくの無駄足であった。

 生んだ効果といえば、思い悩むギリエイムやエイクエスを初めとする国の重鎮達に重いプレッシャーを与えたぐらいのものである。


「少なくとも、この目先の問題の解決は重要だ。決して失敗できんぞ、宰相よ」

「分かっております陛下。恐らく、この城の誰よりも」


 だからこそ、この事態を招いた張本人であるギリエイムとエイクエスは共に執務室に篭って浮かない表情をしていたのだ。


 特にエイクエスに至っては、浮かないという以前に浮かばれない。なにせ彼は自分の名前を使い、王都中の騎士達に対して同性愛者かどうかを確認するような指示を出したのだ。


 隠密に調査を進めるなら、いくらでもやりようはあった。だが女神の啓示はあまりに突然であり、事は急を要した。エイクエスは手段を選べなかったのである。


 結果として、エイクエスは二人の騎士を見つけ出した。

 だが、時として中途半端に結果を出すことが不幸を招くことだってある。


 望みの騎士が見つかったと聞いた時、エイクエスは手放しで喜んだ。それはクールで知られる宰相が普段見せない一面であり、それを見た侍女たちが噂話をしたとしても無理はない。

 冷静さを失ったエイクエスが、侍女たちの目を忘れて二人の騎士に「貴方たちは友情を越えて、愛し合っていると聞きましたが、間違いありませんね!?」などと念を押したのもよくなかった。


「その結果、ついたあだ名はBL宰相……。知っていますか、陛下。BLというのはボーイズラブ、つまり男性同士による同性愛を表現する言葉だそうですよ。私を指差してBL宰相だとのたまった侍女の一人がそう教えてくれました。フフ、その後がまさに傑作でしてね。その侍女は私のあだ名を嘲笑うどころか、それならそうと早く言ってくださいなどと文句を垂れつつ一枚の書類を差し出したのです。それは古い王室領の帳簿の写しでした。決して一介の侍女の手元になどあってはならないものですが、私はその場で怒ることさえ出来ませんでした。ええ、そうです。それは侍女にとっては重要な決算書類ではなく単なる裏紙に過ぎなかったのです。私が書類を裏返すと、そこには、ああ、なんということでしょう、半裸になって陛下をベッドに追い詰める私の、よりにもよって、私のぉ……っ!」

「もうよい、もうよいのだ宰相よ! すまぬ。すまぬな……!」


 ギリギリと唇を噛み締めてぽろぽろと涙するエイクエスに、ギリエイムは痛ましそうな視線を向ける以外に為す術はなかった。女神の試練に全力で臨んだ結果がこれとは、浮かばれないにも程があった。


 だがエイクエスは強かった。エイクエス・ハウファードは仮にも若くして一国の、それも大国ゴードグレイス聖王国の宰相にまで上り詰めた傑物の一人である。そのエイクエスにとって、己の行いが招いた結果がBL宰相の誹りだなどとは、絶対に認められなかった。


 女神の啓示は無駄ではなかった。そう思いたいエイクエスの結論ありきの思索はやがて、一つの可能性に辿り着いた。


「……いいえ、陛下。こうは考えられないでしょうか。女神はまさに、この状況をこそ狙ったのではないかと」

「……ほう。聞かせてはくれぬか、宰相よ」


 その血を吐くようなエイクエスの言葉に、ギリエイムは乗り気な姿勢を保つ。言うまでもなく彼自身のためである。例え女神にそんな深遠な考えなどないという事実をギリエイムが知り得ていたとしても、彼はその姿勢を貫いただろう。


「もともと、女神様が私たちの前に姿を現さなければ我々がアグニを勇者殿の従者から外すことはありませんでした。そして勇者殿もまたあのように謁見の間で振る舞うことも、ましてや王都から失踪することもなかった筈です」

「すると宰相よ、お前は女神の啓示が誤りであったと言いたいのか?」

「いいえ、逆なのです、陛下。であれば、勇者殿は我々には予想もつかないような何らかの理由によって、彼女自らの手で従者を一人、何処かから連れてくる必要があった。あるいはその人物こそ、女神様が真に見初めた、魔王討伐において極めて重要な役割を担う人物であるのかもしれません」

「おおっ……!」


 あり得る、とギリエイムは思った。思ってしまった。

 エイクエスの推測は彼の絶望と、そこから生まれる希望的観測を元に導き出されたものであったが、しかしそれは異様な説得力を放ってギリエイムの心に浸透した。

 高い信憑性があった、という訳ではない。

 単に信じたかったのである。

 例えその裏に、人界に名を轟かすゴードグレイス聖王国の聖王と宰相が同性愛者の騎士を選りすぐって従者につけようとした挙句に勇者に逃げられたなどという事実からの逃避があったとしても、それに薄々感付いていたとしても、ギリエイムはその考えに乗っかりたかったのである。


「そうだ! そうに違いないぞ宰相よ! 女神め、初めからそうと言っておればいいものを!」

「ですよね! そうですよね! 女神様ともあろうお方が、無意味な啓示を下すはずがありません!」


 笑いあうギリエイムとエイクエス。空元気とは言え笑うことが出来た二人に、少しだけ元気と活力が戻ってくる。

 そしてエイクエスは、もう一つの可能性について触れた。


「それともう一つ。勇者殿の従者が、今日この日、あの時あの場所で決まってはならなかったとしたらどうでしょうか」

「ふむ? どういうことだ。詳しく話せ、宰相よ」

「はい。実はつい先ほど、王都ディアカレスに一人の男が戻ってきたと報告がありました。奇しくもそれは、勇者殿が謁見の間から失踪した直後。もし仮に女神様からの啓示がなければ、何をどうしたところで勇者殿の従者としての選択肢にすら挙がらなかった人物です」

「なるほど。もしくはその男こそが、勇者の二人目の従者に相応しいのではないかと、そういうことか。それで、その男の名は」

「ジャスパー・クリスノート」


 その名を聞いて、ギリエイムがピクリと片方の眉を吊り上げ、そして僅かに笑みを深めた。


 ジャスパー・クリスノート。

 ギリエイムはその名を知っていた。

 そしてその男ならば、確かに勇者の従者としての実力は充分すぎるほど持ち合わせているのである。

 何故ならばその男は、


「ご存知の通り、彼は我が国が擁する唯一のSランク冒険者。もし此度の勇者殿の失踪が、彼の帰還に合わせたものであったとするならば……」


 女神の啓示は、彼の帰還さえも見越したものであったのかもしれない。

 エイクエスの言葉に、ギリエイムは深く頷いて返した。


「至急、その男を呼べ」

「ハッ」



 こうして、王都ディアカレスに新たな騒乱の種が撒かれた。

 渦中に晒されるであろうルージュ、ましてや、全ての元凶とも言える女神トーラすらも与り知らぬところで、静かに、静かに……。


BLって言葉をなんとなく縛ってたんですけど解禁しました。

BL宰相ってなんか禁忌の響きですよね。

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