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血の怪物に出会いました。

前回のあらすじ


魔物退治に来たと思ったらピクニックで、しかしやっぱり魔物退治でした。

「アグニ。今のは」

「人間ではないな。獣の悲鳴のようだったが」


 アグニは足を止めて、悲鳴の方向を向きました。魔王も足を止めました。私は相変わらずだらけていました。

 長い長い、嘆き悲しむような悲鳴でした。その声は途絶えることなく、今も私たちの耳に届いています。

 その悲鳴が明らかに人のものではないことに、私は胸を撫で下ろす思いでした。


「まるで断末魔のようだが、長いな。絶命し切れていない。なにか強力な魔物が死にかけているのかもしれない」

「それって、依頼で言っていた三つ目狼のボスでしょうか」

「または、ボスに狩られた魔物のどちらかだろう。森の中で三つ目狼に勝てる魔物はそう多くはいない」


 この悲鳴を上げさせている元凶は三つ目狼のボスか、またはそれをこの森の中で倒せてしまう魔物か。

 それはどちらにせよ、このラスタの森における最大の脅威が、すぐ近くに迫っていることを意味していました。


「それにしても、君は落ち着いているな」


 アグニが意外そうに言いました。おそらく、私の体から魔力が僅かにも放出されていないのを見たからでしょう。

 それは私が、獣の悲鳴にもほとんど心を揺らしていないことを証明するものです。それがアグニにとっては意外で、驚くべきことだったのでしょう。

 でも私からすれば、それは今更と言うものです。


「だって、アグニがいますから」


 私はツンとした態度を取って言いました。

 そうです。今更です。

 私たちはそもそも、三つ目狼のボスを倒すためにラスタの森に入りました。初めから戦うことは分かってたじゃないですか。

 それをあろうことかアグニは、「森の中で勝てる魔物はそう多くない」なんて言っちゃう魔物のボスを前に、私に向かって「気を抜いて魔力を抑えろ」なんて言った訳です。ええ。自覚はなさそうですけどね。

 ハッキリ言って乙女に対する要求ではありません。ついさっきだって人のおしりは揉むし! むんずと揉むし!

 それでも私がこうして力を抜いているのも、すべてはアグニが守ると言ってくれたからです。実際守ってくれましたし。アグニ強いですし。

 それを今更「慌てないのか?」とか、私を守る自信がないとしか思えません。騎士にあるまじき発言です。嫌味の一つは当然の権利と言えるでしょう。


「そうか」


 私は微塵も褒めていないのに、アグニはなんだか照れくさそうです。いったい何を考えているのでしょうか。

 そもそもアグニは私をなんだと思ってるんでしょうか。守るべき町娘? それとも頼るべき勇者?

 もしかして、使い魔の上で全力でたれる私を見て、その辺の認識がこんがらがったのかもしれません。理不尽です。自分でそうしろと言っておいて……。


「分かった。オレが全力で君を守る。だから安心して付いてきてくれ! 少し急ぐぞ!」


 どうやらアグニの腹は決まったようです。

 分かりました。私も今日は町娘モードで参ります。

 そしてアグニが走り出しました。すかさず魔王が追います。悲鳴のあった方向へ。強力な魔物のいるほうへ。

 アグニは全力でした。少なくとも私にはそう見えました。今までのように慎重に歩みを重ねるのではなく、とにかく少しでも早く目的地にたどり着くための最短距離をひた走ります。

 馬ほどではないにしろ、アグニはとんでもない速さで森を駆け抜けました。邪魔になるものはすべて両断して、まっすぐ、まっすぐ、ただまっすぐ。

 魔王はアグニにしっかりと付いていきました。脱力のあまりずり落ちそうになる私の背中を尻尾で支える余裕っぷりでした。私はその度に魔王のふかふかの背中ともふもふの尻尾に挟まれて、幸せのうめきをこぼしました。あふう。あふうう。


『信じられんほどに緊張感のない勇者だ』

『魔王のずぼらさを受け継いだのでしょう?』


 失礼な。


  @


 アグニはしっかりと追随する魔王を見て、関心したように言いました。


「それにしても素晴らしい使い魔だな。オレの全力にしっかり付いてくるとは」


 魔王はフンと鼻息一つで返しました。『嘗めるな小僧』ですね分かります。


「それにこの剣もだ」


 アグニはぶっとい大木を根元から一刀両断し、できたばかりの丸太に足跡を刻みました。魔王もそれに続きます。


「切れ味が明らかにおかしい。どうしてこんな簡単に木が切れるんだ?」

「女神さまのご加護の為せる技ではないでしょうか」


 私はやる気なさげに答えました。


「以前はこうではなかったのだが」

「では私の勇者的なプレミアとの合わせ技ではないでしょうか」

「聖属性と闇属性が同時付与されているのもか?」


 それは初耳でした。

 というか聖剣に闇属性って。魔王的な影響もあったことは確定的に明らかですねコレは。


「女神さまにだって腹黒い面の一つや二つありますよ」


 私はこともなげに言いました。こういう時は誤摩化してしまうのが一番でしょう。

 頭の中で『失礼な』とかいう声が聞こえましたが、女神に言われる筋合いはありません。

 アグニはと言えば、きょとんとした顔でこちらを見ていました。前方不注意ですよ、気をつけてください。


「君は変わっているな」


 笑われました。しっつれいな!


  @


 そんなやり取りをしているうちに、だんだんと悲鳴の声に近づいてきました。声はすでに枯れそうなくらい弱っていました。


「もうすぐ出るぞ」


 アグニが短く警告しました。でもそんな事を言われても、私的にはやることは一つです。すなわちたれることです。


「それに一つ分かったことがある」

「なんですか?」

「声の主だ。これは三つ目狼の鳴き声だ」

「ってことは、つまり」

「ああ。いま補食されているのは、三つ目狼のボス(・・・・・・・)だ」


 そして私たちは、それを前にしました。


 異様な光景でした。


 その一帯は森の中でも拓けていて、まるで木々が避けたかのように、ぽっかりとした広場を形作っていました。

 そこに二つの魔物の影と、無数の死骸がありました。


 影の一つは三つ目狼でした。

 アグニが切り捨ててきた三つ目狼の二倍ほどの大きさがあり、その全身から漂う風格はただ者ではありません。おそらく、あれがボスでしょう。

 しかし今、三つ目狼は明らかに死にかけていました。もう一つの魔物に、体の後ろ半分をばっくりと喰われて。


 もう一つの影はスライムでした。

 しかしそれは私がオムアン湖の湖畔で倒したような、小さく、そして弱々しい魔物ではありませんでした。

 目を見張ったのはその大きさでした。

 家一軒をまるごと飲み込めそうなサイズの、大きな大きなスライムです。それがボスの体を捕らえているさまは、まるで巨漢に組み敷かれた子どものような無惨なイメージを連想させました。

 そんなイメージを抱いてしまったのは、スライムの体内に透けて見える囚われたボスの体が、ぼこぼこと変形していたからです。まるで、体内から攻撃でもされているかのように。

 ボスは懸命に前足で地面を掻いていますが、足下の地面が抉られるだけで解放される気配がありません。そうしている間にも、ボスの口からはか細くなった悲鳴が漏れていました。

 それはある痛烈な印象を私に与えました。それは私たち女性が最も忌避する暴力。ありとあらゆる尊厳を踏みにじる、許し難い暴挙。

 私は無性に、あのボスの性別が気になってしまいました。ですが同時に、それがいったいどちらであれば少しでも救いになるのかと考えた時、私は愕然としました。そして、私のこの悲惨な想像がただの妄想であって欲しいと切に願いました。

 もしかして、あのボスは、あの悲鳴が聞こえている間中ずっと、こうして嬲られ続けていたのかと。

 私は呆然とそのスライムを見上げました。

 そのスライムは気色の悪い、赤黒い色をしていました。冒険者たちの笑い話のように、間違っても口にしようとは思わない毒々しい色。

 それは私に一つの単語を連想させました。


 血の怪物。


 濃淡様々な血が混ざり合ってできたような、禍々しい巨大なスライムがそこにいました。


「下がってくれ、ルージュ殿」


 アグニが小さい声で警告します。静かで鋭い声でした。

 魔王はそれを聞いて、少し下がりました。個人的にはもう少し下がってほしいくらいでした。それくらい、あのスライムに私は近づきたくありませんでした。

 アグニは私たちが離れたことを確認したあと、静かに呼吸を整えて、そして両手に剣を構えました。偽の聖剣。しかし今は、偽以上の力を持つ聖剣を。

 そのとき、アグニの体から熱い魔力を感じました。それは偽の聖剣へと伝わり、一つの現象を起こしました。

 それは炎。

 アグニの魔力が聖剣の刃にまとう炎となり、その熱量が周囲の空気を焦がしたとき、それが引き金となって唐突に戦闘は始まりました。


 突然アグニが剣を盾のように構えました。

 その瞬間、アグニの剣に火花が起こりました。そして火花とスライムを結ぶ戦場に、赤黒くきらめく糸が見えました。

 スライムの体の一部が槍のようにアグニに伸びたのだと私が悟ったとき、既にアグニとスライムは動き出していました。

 スライムが弾かれたように後退しました。その際、スライムの体内と体外にあった三つ目狼のボスの体は二つに別れました。地面に投げ出されたボスの半身には、喰い千切られたような痕がありました。つまりあのスライムは、いつでもボスを喰い千切ることができたのに、ずっとそれをしなかったということになります。

 怒りを覚えました。

 地面に横たわったボスのすぐ脇を踏み抜き、アグニが駆け抜けました。私がそれに気付いて顔を上げたとき、私はアグニとスライムの戦闘をちっとも見ていないことに気がついたとき、私がその事に後悔する時間すら与えられないまま、私を置いてけぼりにした戦闘は唐突に終わりを迎えようとしていました。

 アグニの敗北という形で。

 圧倒的な数の赤黒い触手が、アグニを取り囲んでました。

 一つひとつが鋭く尖った触手がまるで槍のようにアグニの体を貫こうとし、アグニはそれを全力でたたき落とすべく両手剣を振るい、そして無数の爆炎が空中に現れ触手を焼き焦がし、爆散させました。

 しかし触手の一つがアグニの太刀筋をすり抜けて、アグニの爆炎さえも突き抜けてまっすぐに彼の心臓を射抜こうとするのを見た私に、迷う暇なんてありませんでした。

 やり方なんて分からない。方法なんて聞いてない。それでも全身から溢れる魔力を言葉に乗せて、ただそれがアグニを救ってくれると信じて叫びました。


「待ちなさい!!」


 従えと。

 そしてその思いは半分裏切られて、半分叶いました。

 アグニを襲おうとしていた血色の槍は、一つ残らず動きを止めたあと、一瞬で方向転換してその勢いを増しました。

 私のほうへと。


「ルージュ殿!」


 そんな声を出さないでください。私はほっとしているんですから。

 私ならきっと大丈夫。女神も魔王も何も言わないのがいい証拠です。もう脱力なんてしていません。灰色の魔力が私を守ってくれる。そう信じているから頑張れる。

 私に迫るのは槍だけではありません。あのスライムが大きな体を弾ませて、アグニを飛び越えて私を押しつぶそうと飛び込んできました。こういう所は湖畔のスライムと一緒ですね。私は自分に落ち着くよう言い聞かせ、咄嗟に魔王の体を魔力に戻して、思い切り拳を振りかぶって迎え撃ちます。

 物凄いドキドキしましたが、血色の槍は灰色の魔力を貫通できず、一つ残らず逸れて私の後方に突き刺さりました。女神と魔王グッジョブ! しかし無数の槍はまるで私の体を縫い止めるようにして私の邪魔をします。もしかしてこれがスライムの狙い?


「わああああああ!」


 それでも私は力尽くで拳を振り抜きました。頭の中に描くのは女神の(きょく)。不気味に脈動する赤黒い槍に縫い止められそうになる心を無理矢理抱きしめて一歩前へ。邪魔する槍をぶちぶちと引き千切って目の前に迫る巨大なスライムめがけてまっすぐパンチ!

 しかし私の拳はスライムに届きませんでした。私が振り抜いた拳の正面にだけ、まるで穴を空けたみたいにスライムが避けたのです。私の背後に突き刺さった槍を楔にしたようで、拳を中心に吹き荒れる風圧にさえ抗って私を覆い尽くします。

 これが実戦。

 これが魔物。

 スライムが、ほとんど知能がないだなんて嘘でしょう?


「アアアアアアアアアッ!」


 振り絞るようなアグニの声さえもが遠く感じる中、スライムは私の体を僅かな隙間もなく包み込み、私の体を取り込もうと灰色の魔力に触れたその瞬間。

 パン、と音を立てて、スライムの体が弾け飛びました。


  @


「……あれ?」


 私は恐怖のあまり強く閉じていた目を開き、そして呆然としました。

 まるで地獄絵図のようでした。

 辺り一面が血の海でした。私の鼻血など比ではありません。あのスライムが弾けて飛び散った痕跡で、広場どころか辺りの木々までもが赤黒い液体でびっちゃびちゃの大惨事。思わずオエってしまうような酷い光景でした。

 その惨状の中心で、私は無傷で立ち尽くしていました。体を見回してみましたが、傷一つどころか血の一滴も付いていません。なんという防水性能。私は女神と魔王、どちらにお礼を言うべきでしょうか。

 続けてアグニを見ました。彼は酷いものでした。体の全面にべったりと赤黒い何かを塗りたくった状態で、ただただぽかんと私を見つめていました。顔だけはしっかりと腕でガードできているのがせめてもの救いでしょうか。

 どのくらい見つめ合っていたのでしょう。

 アグニがかくんと膝を折って、その場に尻餅をつきました。

 それは私を慌てさせるには充分な仕草でした。


「アグニ! 大丈夫ですか!」


 なんせアグニときたら、どこからどこまでかアグニの傷なのか見分けがつきません!

 傷はどこですか、痛くないですか、大丈夫ですか、女神さま女神さまとあれこれ言いながら、どさくさまぎれに良いカラダしているアグニの腹筋や胸筋をべたべたと触っているとき、アグニが唐突に笑い出しました。


「ッハハハハハ!」


 私はビクッとして手を離しました。アグニのデリケートゾーンに触ってしまったかと思ったからです。具体的に名前を上げるとすれば、乳首です。

 しかしアグニは私が手を離したのに笑い続けました。朗らかに朗らかに、さっきまでの死闘を吹き飛ばすように笑い続けました。

 血みどろの惨状とはどこまでも不釣り合いなアグニの笑顔と笑い声に、私はようやく人心地つけた気持ちになれました。

 何はともあれ、元気そうでよかったです。


  @


 結局アグニに大きな怪我はありませんでした。さんざん驚かせてくれてよくもありがとうございました本当に。

 対して私はと言えば、突然始まった戦闘の緊張とその後の安堵から腰が抜けてしまい、また魔王の背中にお世話になってしまいました。私の腰を撫でてくれる魔王の尻尾が優しい。

 私たちはスライムと三つ目狼のボスの死亡を確認したあと、すぐにラスタの森を抜けました。森の入り口で血みどろフィーバーなアグニがリエリアの住人に目撃され、ちょっとした阿鼻叫喚だったのはもはや良い思い出です。

 領主さまの依頼については、切り落として持って来たボスの首を冒険者ギルドの支部長に渡して完了ということになりました。率先して死体から首を落としたアグニを見て、実はかなり引いていました。そういう意味があったんですね。納品用ですか。無知な町娘ですみませんでした。

 ボスを食べていた化物スライムについてもしっかりと報告したあと、私たちは領主さまのお屋敷に戻り、大きな浴槽で湯浴みをして、美味しいものを食べて、柔らかい羽毛のベッドで寝ました。なかなか匂いの取れなかったアグニには、三回ほどお風呂リテイクを言い渡しました。すすぎが甘いんですよすすぎが!


 そして私たちは、依頼の報酬として大手を振って「私たちの馬!」と呼ぶことができるようになった例の意識の高い馬に乗り、王都を目指して街道を進んでいます。

 そろそろこの馬にも名前が必要かもしれません。何かいい名前はないでしょうか。アグニに聞いたら「君の好きな名前を付けるといい」と言われたので、勇者的な第六感が閃き次第名前をつけてあげようと思います。


「オレは情けない奴だな」


 道中、アグニがぽつりとそんなことを言いました。

 私はと言うと、例によって砕けた感じの堕落脱力スタイルです。こんな私を前にして情けない奴とは何かの皮肉でしょうか?


「君を守ると言っておいて、結局守れなかったどころか、君に守られてしまった」


 それが恥ずかしいとアグニは言いました。

 それを聞いてムッとした私は、後頭部をアグニの胸にぐりぐりと押し付けながら、アグニを見上げて言いました。


「アグニは私のことをどう思ってるんですか?」

「え?」

「勇者ですか? それとも、酒場で生まれた町娘ですか?」

「……どうなんだろう。今回の件で、ますます分からなくなった」


 いつもの元気がありません。そんな笑顔はアグニにはまったく似合っていません。


「どっちも私ですよ」


 アグニはハッとした顔で私を見下ろしました。

 私たちはまっすぐに目を合わせ、そして言いました。


「私は勇者ですし、世間知らずの町娘です。だから私はアグニに助けてほしいですし、アグニを助けることもあると思います。どっちも私です。

 だからアグニも私を助けてください。そして、たまには頼ってください。

 今は頼りないかもしれませんが、私はこれでも一応、あなたたちの勇者なんですから」


 そのとき、いったい私はどんな顔をしていたのでしょうか。

 年頃の娘にはまるで興味のないはずの変態イケメン騎士さまのアグニに、こんなだらしなくも切なさげな表情を浮かべさせてしまうような顔だったでしょうか。

 それがあまりにも意外すぎて、私はぽかんとアグニを見つめて、アグニもまた、私をじっと見つめていました。

 なんとも言えない間でした。


「君は」


 私たちの沈黙を破るのは、いつだってアグニでした。


「本当に不思議な勇者殿だ」


 そしてアグニの顔に、いつもの笑顔が戻ってきました。


  @


 アグニ復活にあわせて速度を増していく馬の振動に揺られながら、私はぼんやりとスライムと戦った時のことを思い出していました。


『待ちなさい!!』


 あのスライムは待ちませんでした。

 それはすなわち、魔王のとある言葉が真実だったことを意味します。


『そこの女狐が言ったこととさほど変わらぬ。滅ぼす先が人界となり、ニンゲン、そして魔物どもは絶滅するだろう。そして二度とゲートなど開くことはない。我ら魔族にとって、人界とは災いはあっても益など一つもない場所だからだ』

『あれ? 魔物も滅ぼす事になるんですか? というか、魔物って魔族の手先ですよね?』

『なんとも白々しいことを言うな。貴様等ニンゲンはあの醜悪な魔物どもの出所を魔界だと考えているようだが、我らは人界だと考えている。魔物どもは魔族にとっても害悪なのだ。この点について、我はおまえと議論するつもりはない』


 私は女神と魔王の魔力を込めて、スライムに命令しました。

 従えと。

 しかし、その声は届きませんでした。そして森中の魔物たちが恐れた女神の魔力も魔王の魔力も恐れることなく、あの禍々しいスライムは私の方へと襲いかかってきました。

 それはつまり、魔王には本当に、魔物を操る力なんてないということです。

 魔物は魔族の手先ではなかった?

 では、魔物はいったいどこから来たのでしょうか?

 それとも、あのスライムだけが特別だった?

 あるいは、私の命令の仕方が間違いだった?

 魔物ひとつとっても、私には分からないことだらけです。


 別に私は真実が知りたい訳じゃありません。

 ただ、いつかするべき選択をしたとき、決して後悔だけはしないように、見るべきものを見て、知るべきことを知りたい。

 正しい選択でも悪い選択でもなく、良い選択をするために。

 私は心の中に浮かんだもやもやを心の深い所に押し込めながら、次の町、新しい景色に思いを馳せました。

リエリア編終わり。


えっ? レビュー1件…?

えっ? レビュー!? 都市伝説じゃあなかったのかぁ!?


見たとき心が震えました。今も心臓ばくばく言ってます。書いてくれた人ありがとう! PV数も今までで一番パナいですヒャッホイ!

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