決心
目を覚ますと、床に転がっていた。
どうやら眠ってから、大して時間は経っていないようだ。
(あの夢は一体?)
今までに見たこともない夢だった。
実際の戦闘が、本当に行われているようなリアルな夢であった。
夢の出来事をボーッとする頭で考えていると、扉を叩く音が聞こえた。
「失礼致します。」
入ってきた人物を見て、黒野は息を飲んだ。
入ってきたのは、青い鎧を纏い兜を小脇に抱えた同年代程の美しい少女だった。
しかし、普通の人間で無いのは一目で見て分かった。
長く垂らした青い髪の毛の間から尖った耳と、二つの角が見えた。
「救世主殿?」
その言葉にハッとする。
どうやら彼女に見惚れて、固まってしまっていたようだ。
その意思の強そうな瞳には、戸惑いの色が浮かんでいた。
「あっ!ご、ごめん。何でもないよ。」
腕を左右に振り、慌ててごまかした。
「そうですか。魔王レックス様がお呼びです。先程の広間にお越し下さい。」
そう言うと、彼女は踵を返し部屋を後にした。
(大方、頼み事の答えを聞こうというのだろう。さてどうするか。)
眠る前は悩んでいた黒野だったが、彼の腹はもお決まっていた。
ー広間ー
広間には召喚時と違いレックスと、側近であるペトラニウス、そして先程の少女の三人しかいなかった。
「カエルレウムよ、クロノ殿の様子はどうであった?」
レックスが彼女、カエルレウムに話しかけた。
「はい、まだ混乱されている様子でした。私の姿を見て、まだ驚いている様子でした。。」
彼女は黒野が固まった理由を、まだ彼が混乱しているからだと思っていた。
「そうか、戦う事を了承してくれれば良いのだか。」
レックスは心の底から黒野を仲間にしたいと考えていた。
自分と対等な闇を持つ者など、今までに一人もいなかった。
そのせいで、レックスはいつも一人だと思っていた。
周りの者はいつも自分ではなく、魔王レックスとしての自分を必要としていた。
これで、ようやく孤独から解放されると思うとレックスは嬉しくてたまらなかった。
そのように考えている、レックスとは対照的にペトラニウスは顔には出さないが、内心穏やかではなかった。
やはり黒野の事を認めたくないようだ。
その時、扉が開き黒野が広間に入ってきた。
うつ向いているせいで、表情が確認できない。
「クロノ殿、決心はつきましたかな?」
レックスがそう訪ねると黒野は顔を上げ、
「はい、自分で良ければ協力いたします。」
と答えた。
その顔にはまだ、若干の迷いが見てとれた。




