怒り
「ふー、何とかなったな。」
地面に立っている事をこんなにもありがたく思う事も珍しいだろう。
巻き上がった粉塵が落ち着くと、辺りの様子がはっきり見えた。
人間の兵士達が魔物を斬り裂き、死体に火を放っていた。
そして、今まさに子供の魔物に剣を振り下ろそうとしているところだった。。
一瞬で頭の中の何が弾けた。
自分の中の闇を具現化する。
自分の手に刃渡りが、2メートル近い刀が現れた。
刀を抜くと刀身は真っ黒に染まり、反りの部分には鋭い棘がいくつも生えている。
その刀を握ると、兵士達に飛び掛かった。
めちゃくちゃに振り回すその刀は確実に相手の命を奪っていく。
「な、何してやがる‼とっととそいつを始末しろ‼」
謙二がそう叫ぶと、いきなりの出来事に茫然としていた兵士達が動き出した。
分厚い鎧を纏った重装備の兵士を前におき、魔法を使える兵士が援護する。
シンプルな陣形だが、とても効果的な戦術だ。
相手が、普通の相手だったら…。
黒野は相手の攻撃を読んでいるかのように、動き回る。
飛んでくる炎や氷の塊を最低限の動きで避け、重装備の兵士の鎧の脆い場所や継ぎ目を確実にとらえ斬り裂いていく。
あっという間に重装備の兵士は全滅し、残りの兵士も斬り裂かれる。
ついに、残っているのは謙二ただ一人となった。
(なんなんだよこいつ。こんな奴が要るなんて聞いてないぞ!)
その表情は恐怖でひきつっていた。
ガクガク震える体を何とか動かし、近くにいる魔物の子供を抱え、剣を突きつけた。
「く、来るんじゃねー。ガキを殺すぞ!」
それは、先程親を殺された子供の魔物だった。
その様子を見て、黒野は動きを止めた。
「よ、よーし良いぞ!そのまま動くな‼」
今のうちに逃げようと、謙二は帰還の羽を取り出す。
この、帰還の羽は一度行った事のある場所なら一瞬で移動出来る便利な道具である。
使い方は、行きたい場所の名前を言うだけといういたって簡単なものである。
街の名前を言おうとした瞬間、黒野は別の魔法を発動した。
黒い闇が足を覆い、鎧が変化していく。
元は付いていなかった長い鍵爪が現れ、地面をしっかりとらえた。
謙二がその変化に気付いた時には、もう遅かった。
地面を蹴った黒野は凄まじさ速さで謙二に近づいていく。
そして、子供を奪い返し、振り向き様に謙二の体を真っ二つに斬り裂いた。




