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乙女ゲームの世界に転生したみたいだ…と…!?

作者: 苺兎

初投稿作品です。生温かく見守って下さい。

(ぅわーっ先生に頼まれた資料を運んでたら授業に遅れそうなんだけど!)


特待生で入学した私は、授業料やら何やら免除されてる。そんな人間が授業に遅れるなど……コレはヤバイ。


本当はダメだけど、遅れるわけにはいかないから走る。


ダーッとイノシシの如く廊下を走ってると、曲がり角に差し掛かった辺りでドンッと強い衝撃がはしった。


ヤバイ誰かにぶつかった!と思ったときには私は後ろに転んでいた。



「いったぁ…」



思いっきりお尻を打った私は痛みに少し涙目になりながら耐え、ぶつかってしまった人に謝るため声をかけようと顔を上げたとき、目の前にいた人に手を差し出された。


「大丈夫か?」



う…先に言われてしまった。

曖昧に返事をし手に捕まろうとその人の顔を見た瞬間、バッと色んな記憶が頭の中を駆け巡った。


……私は思い出してしまった。前世の記憶を。



==========



前世での私は今世と同じ女子高生で、友人のススメでやったとある乙女ゲームにハマっていた。キャラや声優さんのボイスが好きで何度も攻略したあのゲームのタイトルは確か…


『私のジュバンセル(乙女)』


主人公が生徒会のメンバーに気に入られ、誰かと恋におちるという王道なやつだ。


私は特に何でも出来て生徒に一番人気の生徒会長が好きだった。ちょっぴり俺様で、正義感があって皆に優しいイケメンって…マジ最高っ


主人公の前ではデレてくれるのが堪らなかったなぁー

って変態発言してる場合じゃない!


なんでこんな話をしたかというと、この世界…そっくりなんだよね『私のジュバンセル』に


実は主人公は私の同室者だったり。


実は生徒会メンバーの一人、柏木亮矢生徒会長がぶつかった人だったり。


他にも色々あるけど、どれも見覚えのあることだらけだ。


私は主人公の友人的な所謂脇役って美味しいポジションなのは嬉しいけど、目の前に大好きな生徒会長様が手を差しのべている図は今の私には毒だった。

思い出した記憶量や会長のイケメンオーラに当てられ私が鼻血を出して倒れるまで、さして時間はかからなかった。





===========



「――たら……で……」


「――では……という……」



(んーうるさい)



「いや……だからな……」



(うぅー…)



パチッ



(……アレ?ここどこだ?)


目が覚めると、視界に白い天井が目に入った。


続いて消毒液の匂いが鼻をかすめ、ここが保健室だということが分かった。


(なんでこんなとこにいるんだ…け…って)


ああ!そうか、走ってたら柏木会長とぶつかってそしたら前世の記憶を思い出して、目の前に大好きな柏木会長がいて、鼻血がブホォッで意識がプッツンってなったわけだねーあっはっはっは。


うわぁ…いくらなんでも、好きな人の前で鼻血吹き出して倒れるとかないわ。


うぅ…私、もう柏木会長の前に出れないよ。


あーとか、うーとかって唸っていると何だか横から視線を感じた。


あれ?そう言えばさっきまで私の睡眠を邪魔してた声が聞こえないような……。


ギギギギっと音がしそうな感じで首を横に向けると、そこには見目麗しき会長様と男の方がこちらを見ていた。


バッチリ目が合っちゃいました。てへ。



てへ、でなかったことにはならなかったようだ。当たり前だけど。


恐らく今、私の顔はブルーハワイのような色になっているだろう。


柏木会長を見るとぷるぷると真顔で震えている。よく見ると頬がピクピクしてる。


完璧必死で笑いを堪えてますよね会長様。そんなところも素敵ですが、なんだか目に塩水がたまってきそうです。


隣の方は…どこかで見たことあるような…あっ!『私のジュバンセル』に出てきた攻略対象の一人、生徒会副会長――東雲 真尋様だ!


クールでツンデレな副会長は二番目に好きだったキャラだ。とくに声が凄く耳に心地よくって気に入ってたんだよね。


わぁー眉間に皺よってるし、方眉ピクピクしてるし、何か言われそうな予感。


「1-B朝倉由菜さんですね。お身体の具合はいかがですか」


平坦な声なはずなのに、心地よいと感じるのは何故だろう。乙女ボイスマジック?


ベッドで横になっている私は、東雲副会長に見下ろされている形になっている。


ゆっくりと身体を起こすと、目を反らしながら「ダイジョブデス」と答えた。


鼻血止まってるしね。


「そうですか。では幾つか質問させていただきますので答えてくださいね」



有無を言わさない黒いオーラが見える気がする。ひぇぇぇ。




=========


「――つまり、貴女が走っていた所に会長がいてぶつかってしまったと」


「申し訳御座いませんでしたっ」


ベッドの上でだけど、ははぁっと勢いよく頭をつけ謝る。


「まぁ真尋、俺も考え事をしてて前を見てなかったんだ。だから俺の不注意でもある」


――この子だけのせいじゃない。


そう言われ、私は心臓が飛び出すかと思った。


(柏木会長が私をかばってくれてる…だとっ)


思わず顔がにやける。だけど下を向いてるからバレないだろう。ふぅー。


目の前に人がいなかったら悶え死してるところだったわ!


いや…ちょっと待て、てゆうかぶつかった私が悪いんじゃないか。

「会長様ほんっとうに申し訳御座いませんでした!会長様は悪くないんです、悪いのは全部私なんですっ」


「いや、あの時俺が考え事なんかしなかったらあんなことにもならなかったんだ。俺も悪かったんだ」


「いやいや、ソレ全然悪くないですって!」


「いやいやいや、俺も悪かった…」


「いやいやいやいや…」


「いやいやいやいやいや……」


「えーい鬱陶しい!」



「「あ、すいません」」



副会長はかけていた眼鏡を一度クイッと押し上げると会長に指を向けた。


「まず会長、貴方はバカですかアホですかどう考えたって貴方は被害者でしょっ俺も悪いって考えはいったいどこから出てきたんだ」

ん?この口ですか、と会長の頬を引っ張る副会長に会長が「すまん!もっと会長としての自覚をもつからぁっ」と訴える。


「それから貴女は今日中に今回の反省文を10枚書いて生徒会室に提出するようにっ、分かりましたね?」


ヒィッ怖いっ、黒い笑顔がぁ…目が笑ってないよ…反省文10枚って…


プギャーッ


この瞬間、私は絶対に副会長に目をつけられるような行動はとらないと誓うのであった。





==========



あの後、勢いよく扉が開きヒロインが中に入ってきた。


私の同室者であり、一応親友というあの主人公=ヒロインです。

あの空気の中、勢いよく入ってきたヒロインは副会長に恐れをなしている私(涙目)を見て二人に物凄く怒った。


慌てて私と副会長が説明すると、落ち着きを取り戻しその後は二人仲良く寮に帰りましたとさ。


終始心配してくれたヒロインさんだが、私は怪我ひとつしてないから大丈夫だよって言うと可憐な微笑みを見せてくれた。


またブホォッて赤いナニかが出そうになったよ。



自分の部屋に行き一人になると今日のことを振り返った。


前世を思い出した私だが、実は今日柏木会長とぶつかったことや保健室でヒロインが柏木会長と出会う場面など、ゲームのイベントで見たことがあるような気がした。


正確には会長とぶつかったのはヒロインで、保健室で会長に介抱されたヒロインが恋に目覚める話だったんだけど……。


まぁ、この世界はあくまで私のジュバンセルの世界によく似た世界だからね。ゲーム通りに進まないこともあるのだろう。


あ、今思い出したんだけど、因みにヒロインが柏木会長とぶつかったことで、翌日会長の親衛隊というファンクラブ的な人たちから呼び出されます。そして……うぅ…胃が痛い…。


その日はベッドに倒れるように眠りましたさ。




「そこの貴女。ちょっとついてらっしゃい」


翌日、ヒロインと登校してると、教室へ続く廊下で会長の親衛隊に呼び出しをうけた。


心配そうにこちらを見てるヒロインに軽く手を振り、親衛隊に案内されるまま、私は学校の裏側(人目のつかなそうな場所)に連れられてきた。



「貴女、昨日柏木様にぶつかったらしいじゃない」


リーダー的な人が前に出て言ってくる。


「私は柏木様が骨折したって聞いたわ」


「私は東雲様に慰められているのを見たわ」


後にいた子分らしき人達がわらわらと言いはじめる。


(いやいや、ぶつかっただけで骨折って……東雲副会長は柏木会長をいじっていただけだと思うけど)


子分たちが妄想劇を繰り広げていると、リーダー的な人が目をつり上げ「まぁっ!」と大袈裟に驚く。


「柏木様に怪我を負わせたにも関わらず、よくのうのうと登校出来たものですね。恥を知りなさい!」


責め続ける人たちを見ながら、溜め息がでる。


(これ、いつまで続くんだろ?早くしないとまた授業に遅れるんだけどなぁ)


思わずくわぁっと欠伸が出てしまった。


それを見たリーダー的な人が顔を真っ赤にさせ怒りを露にする。


「なっ、何ですのその態度は!私が話してるときに…あり得ませんわ!」


そのままツカツカと私の方に近づいてくると手を振り上げる。

パシーンッ!


うわぁ…王道パターンキター。


叩かれたさい、地面に派手に倒れこんでやる。

それで「いったーい」の一言でもいってやれば演技としては完璧だったんだけど、ヒリヒリと痛む頬に若干目をしかめ、言葉が出ず前を見る。


くぅ、演技としては相手の方が上手だったかぁと思っていると横から大きな声が聞こえた。


「そこで何をやっている!」


一斉に声の方に振り向くと、そこには副会長とどこか髪や服を遊ばせた格好の…チャラ男がいた。


んん?なんでこんなとこに生徒会メンバーがいるんだろ?


恐らくここにいる人たちは皆そう思っているだろう。

だって、授業が始まりそうなこの時間帯に、こんな誰も通らないような場所に生徒会メンバーがいるなんて普通誰が考えるだろうか。


副会長とチャラ男はこちらへ来ると私たちを見据える。



副会長は私の顔を見た瞬間、眉をしかめた。


は、反省文ならちゃんと書いて提出しましたよ!


眠りにつく一歩手前で思い出した私は必死で書きなぐったものだ。


もしや、内容が“もう二度と廊下を走りません”って小学生並みの文だったのを怒ってるのかな…。


「これはどういうことですか三島さん」


あ、リーダー的な人って三島さんて言うんだ。


「し、東雲様…これはですね」

三島さんが慌てていると、チャラ男と目があった。


「かわいそうになぁ…女の子が顔に傷なんかつくっちゃって」

チャラ男は私の側に来ると、私の頬にハンカチをあてた。


「血が出でてるね。コレあてときな」


コソッとそう言うとパチッとウィンクして三島さんたち親衛隊の方へと行った。


そのさりげない行動に流石チャラ男、と思ったとき、ふとチャラ男がゲームに出ていたキャラだということを思い出した。


確か名前は“一ノ瀬春斗”生徒会メンバーで会計をやってる。チャラい外見や態度に対して実は好きな人には一途という一面をもっている。

最初は苦手なキャラだったが、両想いになった一ノ瀬会計の甘々なシーンを見たら、一気に心を射ぬかれたよねー。


会計は親衛隊の方へと行くと、副会長に向かって「この子たちのことはまかせといて」と言うと、生徒会室に向かっていった。



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