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続 椰子の風に吹かれて  作者: 佐々木三郎
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カルロス分譲住宅


                        カルロス分譲住宅


 清美はいつまでも塩崎家で居候するのもと賃貸マンションを予約した。別の日本人がこれを横取りした。オーナーは敷金増額、3ヶ月前家賃に吊られて清美の予約を無視した。これがユキが坂本に語った事実である。オーナーの土地取り上げてやる。ユキ、気持はわかるがちと強引過ぎないか。フィリピン人は激すると自制がきかない、これは坂本と似ている。私許さないから。似たもの同士、気が合う肌が合うのだろう。この女といると落ち着く、坂本は思う。しかし今回は少し不安になる。


 ユキは塩崎家の隣に坂本、清美、マリアのためにそれぞれ木造の家屋を新築した。正妻は側室の配慮も怠らないと構えている。敷地3000㎡なのでゆったりしている。運転手、メイドの棟も用意した。真知子を中心とした新しい家族ができた。陳が文句を言ってきた。ごめんなさい、すぐ陳さんの家も建てますから、陳さんも一度いらしてくださいな。

 食事は真知子を囲んでとることが多い。私お母さんと食べるのが一番美味しい。ありがとう、でもユキさんも清美さんもここで住んで欲しかったわ。でもお母さんプライバシーも大切でしょう。スープの冷めない距離、一番いいじゃない。あら、ユキさんいいこと言うわね。えへー。

 陳家族も加わると食卓が小さいので大きなのを誂えた。陳、こうした平和な時間があるのだな。そうだな、腕擂りあうも多少の縁。陳殿、日本では袖摺りあうもいうが、お国では腕でござるか。山田殿、同じ意味で御座る。左様か。やがてアンジェリカ許細君イメルダ、マリア清美ユキ梅雲が話し出す。男出る幕無し。



 翌日分譲地の視察、値段を聞いてカルロスが驚く。あら安いものでしょう、水道電気ガス電話が埋設。風力発電、排水溝、貯水池あり。メイン通り、公園、ホールなどの公共地以外は好きに建築できるのよ。それにカルロス団地と名前をつけられる。そうか、全部でいくらだ。だめ、残りは中流と庶民向け。え?庶民も。そのほうが安全なの、日本なんか私有地でも不特定多数が利用する場所は公共扱いされるの。ガードマン20名配置する。フェンスなし?ええ。境界も標識だけよ。ふーん。面白いじゃないか。陳が口を開く。陳さんにも同じ土地お世話しますから。

 庶民が土地が購入できるだけの雇用を創出しなくてはならない。給料に見合う能力を付けさせなければならない。日本の給料の1割でも能力的、成果的には高い。日本と違って、ここで能力開発は最大のネック、素養、向上意欲、継続性いずれも問題あり。これで今後のこの国が決まるであろう。教育費は高いから回収に時間がかかる。産学共同の教育を確立しなくてはならない。ユキの課題山積。


 半信半疑のカルロスもマリアがコンサートを開く為に購入を決める。国際基準の50mプールも設置された。まず中流層の建築が始まった。土地だけの分譲だが購入者を集めて土地利用を協議させた。これが好評で購入者は日本人が多かった。

日本の建設会社が建設を一括請負、完成パースをCGで示す。竣工後の感想は想像以上と絶賛。日本の建築は凄いと評判になる。カルロスの高級分譲地からも注文が相次ぐ。施主との綿密な協議、品質の高さ、行き届いたアフターケアーとカルロスが吹いて回る。

 庶民むけは生協が販売と賃貸。木竹の家屋に荒壁を使う。建設会社はバギオの風土にあった伝統工法を取り入れる。バギオには暖房がいる。この南の島に雪が降ることもある。荒壁は断熱、除湿効果があるからだ。地元業者に下請けさせる。たちまち完売。隣接地の10haを二期分譲と発表する。これを聞いてカルロス、ユキひどいじゃないか、隠していたのか。欲しい、カルロス、残りの半分売ってあげる。カルロス団地は高級中流庶民混在団地となった。当初計画規模の2倍である。


 生協の出張販売も好評で地元の年寄は運転手の横にただ乗り。フィリピンらしい。農家から排水を農耕に使いたいと言ってきた。雨水溝を延ばしてやる。農作物を生協で買い取る。日本人が飲食店を始める。スペイン人がレストランを開店。食材探し、農家との協議、美味い食材はすぐ売れる。残りは生協で販売。全国に売られてゆく。農業と飲食業の連携、流通業も加わって大きな効果を上げる。

陳の方も同様であった。志淵団地に消防車が置かれた。カルロス団地も右に倣え。水の給水にも活用、要請があれば消火にも駆けつける。こうしたサーヴィスは団地に共同体意識を醸成してゆく。宅地開発とはこんなものか、日本式はなんと住みやすいことか。いつしか憧れの分譲地となっていった、


 優良な住宅供給は粗悪不動産価格を押し下げる。売り物件、空が増え出す。それを地元業者に買い占めさす。陳とカルロスがそれらを建て直して国家公務員に賃貸する。中には国家警察官もいたから治安はいっそう良くなる。州警察、市警察も幹部が購入する。

 道路が整備される。ユキの政治力を使わなくとも公務員は自分のために行政を行う。二人はホテルの買収、土産店のテナントを集める。アーケードの下はペイブメント観光客で賑わう。市内循環バスを走らせて大気汚染の削減を進める。溢れたタクシージプニー会社を集めて共同組合にをつくる。観光客用、市民用と便益も考慮する。

 学生向けマンションに人気がでる。親にとってはセキュリティーが一番。被害の大半がレイプ、女学生の人気NO1は原則男子禁制。バギオは一生に一度は訪れたい地だ。家族向けマンションも満室に近い。金が循環すると経済が発展する。地域経済が活性になる。税収も増える、警察官の給料も上がる。賄賂が減りサーヴィスがよくなる。犯罪が減る。すべてがうまく行き出した。


 リュウジこの分譲は儲けがいい、どうしてか。早く完売したからだ。カルロス分譲地は借入なしでやってるが資金を全部の銀行借入とすれば、月10%の支払利息が発生する。年で120%だ、利益がでるわけはない。今回は粗利3割だがこの国の税金は安い、2割は残ったはずだ。なるほど年2割なら悪く無いか、早く次をやろう。カルロスはマタドールか。

 それって早く売ればその金が使えるということかしら。そうですよ、ユキ理事長。銀行から借りなくてもいいってこと?自己資本比率は判断基準のひとつだ、ただし最低でも10ビリオンが必要だろうな。毎年20%の利益を出してゆくと複利計算では5年で資本は倍になる。10年で5倍になる。嘘、本当ですか。

 

 本当だ、利益かける回転率。解りやすく教えて。同じ100万で年20万儲けるのと100万では年10万儲けるのとどちらが稼ぎがいいか。2割と1割だから前のほうがいい。1年で20万と10年で100万とは。5年で100万、10年で200万だから前のほうがいい、でしょう。そうか、働きがいいから稼ぎがいいのか、よく分かる説明ある。陳よ日本式経営か、我々も考えを改めなくては。


 全国主要都市で分譲してゆけば数年で市場を支配できるだろう。ユキ生協が土地を開発してカルロス財閥陳財閥に買ってもらうのがいいだろう。まあ、100箇所でやれば更新需要、修理、改築もあるからのんびりいけるさ。龍次どうして詳しいあるか。日本が50年前に経験しているからだ。


 ディー、どうして景気が良くなるの?家を建てると家具電気製品等が欲しくなるだろう、こういうの有効需要てんだ。建築業は儲けた金を使う。そうだ、金を使うとは何かが売れるということ。つまりお金が旅する。金は天下の回り物と言ってな金は旅して帰ってくると多くの人の役に立ったと言える。金は家で寝ていては良くない?豚になる、牛や馬のように働いて世のために尽くすべきだ。つまり要するに金が世の中を回ってゆくと景気が良くなるの。そういうこと。金を使えばいいのね?あればな。

 貧乏人はあるだけ使う、金持ちは貯めこむ。とくにこの国はな、カルロス分譲地は多くの人の金を動かした、その金は旅していった。ということはビジネス成功?ディベロッパーが良かった。あら私のこと、ディー、嬉しい。愛してるは身体の奥から。奥とはポッキーか。ばーか。


 ついに清美の予約を無視した女オーナーが泣きを入れてきた。カルロス分譲が好調なだけ商売上がったりなのだ。あの女は許さない、こうなるとユキは怖い。清美の部屋を横取りした日本人は地元の学生、少女に売春させていた。オーナーとできていたのだ。ベルハウス売春宿は扱わないとユキは冷たく業者に言わす。やがてその日本人が逮捕される。外国人に処女を斡旋していたのだ。その日本人は女たちの水揚げの4000から10000ペソ半分をはねる。面接で気にいった少女を裸にして犯す。処女かどうかを検査しただけと嘯く。ねえ龍治日本人の彼、ヤクザ?かもな。

 警察も内偵を進めていたが15歳の少女の告訴で逮捕に踏み切った。終身刑の判決。モンテンルパ刑務所に収監される。女オーナーも共犯もしくは幇助で逮捕されたがマンションを売って被害者に示談金を支払う。ムショ行きは免れたが土地を捨てマニラに落ち延びる。もういいだろう。ええ、これくらいにしておきます。ユキがにんまり笑う。やり過ぎじゃね~の。


捕虜収容島


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